学園裁判

@OrangeChicken

プロローグ 校則第17条 本学生は、公平な学園裁判を受ける権利を奪われない。

裁判が学校で行われたらどうなるだろうか。


「新入生諸君、国立自由高等学校へ入学おめでとう」

国立自由高等学校。生徒の東京大学への現役合格率は九割。日本一優秀な学校と言っても過言ではない。

「今から入学オリエンテーションとして、本学の仕組みを説明する。まず机の上に置いてあるガイドブックを見たまえ。」

机の上に積み上げられた本の上にガイドブックが載っている。ガイドブックを開くと、学校の施設の詳細が書かれていた。現在、日本の学力は他国に大きく負けている。他国に対抗すべく、作られたのがこの学園だ。国をあげたプロジェクトというだけあって、施設は目を見張るものがある。大都会東京の都心部にある広大な敷地。そこには、校舎や生徒寮だけでなく、ショッピングモールやコンビニ、カラオケボックスなどの娯楽施設まである。全寮制だが、娯楽に飢えることはないだろう。

「施設を利用するには、実社会と同じように金銭が必要となる。毎月親から払ってもらっている学費の一部が君たちの学園銀行口座へと元へ振り込まれる。他にも生徒会や委員会の役職に就くことで給金をもらうこともできる。表を参照することだ。」

周りが少しざわつく。ガイドブックの表には、学費より一ヶ月十万円、そして、風紀委員会手当一ヶ月三万円、など書かれている。確かに高校生にとってみれば、大きな額だ。

「さて、ガイドブックの話はそこまでとして、」

ガイドブックを一通り見終えた後、教員が言う。

「ガイドブックの下に置かれている、冊子を開きたまえ。」

「校則」とだけ書かれた太めの冊子だ。ただの校則がこの太さとは。妙な感じがする。

「さて、これからは本学校特有の制度


学園裁判


について説明する」

「これまで、教師による理不尽な叱責や処罰が問題となっていた。それを改善するためにこの学園裁判が導入された。もし、諸君らが校則や学校規則に違反する行為をした場合、検察委員会によって立件され、本学の学園裁判所によって処罰が決められる。従って、我々先生が諸君らの行為に対して叱責するということは一切ない。君たちが今まで経験してきたであろう学校における理不尽さが全て排除されたシステムだ。」

確かに学校には理不尽な部分がたくさんある。それを排除するために、裁判というシステムを導入したのか。

「裁判には学校規定に基づく罰則がある。反省文の記述や居残り指導」

入学したての諸君らに言うのもなんだが、と続け、教師が一度沈黙し、そして、重い口を開く。

「最悪の場合は退学だ」

オレはこのとき一瞬たりとも想像していなかった。学年で1番最初に起訴されるのが自分であるということを。

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