【短編】催眠アプリのあるエロゲ世界のモブになった俺氏がヒロイン達を救済したら何故かモテモテに!?

@Ossan3600

エロゲ世界のモブになった男の話

気がつくと見覚えのない教室の天井が目に入った。改めて視線を周囲に向ける。既視感のある学校、周囲にはどこか見覚えのあるクラスメート達(ただし、覚えがあるのは美少女のみ)。うん、これはアレだ。この身体の持ち主の記憶を辿り俺は一つの結論に達した。

俺は昔やり込んだエロゲ「催眠アプリでやりたい放題」の世界のモブになってしまったようだ。


ちなみに何故モブかというと、記憶にある俺の名前、大山慎吾はゲーム本編に一切出てきた覚えがない。もちろんスマホで自撮りした顔にも見覚えがない。まあ、そこそこ整ってはいるし、デブでもヒョロガリでもない。所謂標準体型だ。キャラとして作り込む必要のない主人公のクラスメート。その1人が俺なのだろう。


そして、このエロゲは文字通り主人公が催眠アプリを使って女の子達を操りやりたい放題にするゲームだ。しかし、プレイヤーでない第三者として考えるとこれほど胸糞悪いモノもない。何せ美少女ヒロイン達が本人の意思とは関係なく、あんな事やこんな事をさせられてしまうのだから。


さらにエロゲだけあってヒロイン達の見た目は控え目にいっても最高だ。俺の一推しだった主人公の幼馴染ヒロインはルックスよし性格よしの優等生巨乳美少女で、普段は長い髪をおさげにして大人しい雰囲気だが、実は有名なコスプレイヤーだったりする。ただし、コスプレイヤーであることは物語後半の特定のルートで催眠アプリで自白させるしか認知する方法はないので、俺以外は主人公でさえもまだ知らないはずだ。


また、同じクラスにいるもう1人のヒロインは黒髪ロングの典型的なお嬢様キャラで、スレンダーな割に出るところはちゃんと出てるというモデルのような体型の持ち主だ。普段は誰にでも毒舌で高圧的に接してくるが催眠アプリで本音を引き出すと実はMっ娘だったりする。そのギャップに多くのファン(つまり、俺とか俺とか俺とか)が萌えに萌えたキャラだった。


さらに攻略可能なヒロインには担任の美人女教師や主人公の義妹、義妹の友達のスポーツ万能美少女な後輩、主人公の隣に住む大学生の美女なども含まれる。


そしてゲーム本編の主人公はといえば、今俺の斜め後ろに座って陰気なオーラを垂れ流している不穏な小太りの男だ。何らブツブツ独り言を繰り返しては共同不審に物色するような視線をクラスの女子、特にヒロイン2人に向けている。既に通報したいレベルの怪しい男である。


その男の醸し出す雰囲気が急がないと不味いと告げていた。そこで俺は取り急ぎクラスメートのメイン級ヒロイン2人を保護する事に決める。せっかく推しヒロイン達とクラスメートになれたのだ。彼女達を護るべく、俺は早速行動を開始した。


まずは授業の間の休み時間の間に準備を進める。スマホを取り出して主人公が辿り着く怪しい催眠アプリの販売サイトを探し出すのだ。これはゲーム本編でも特殊なキーワードを使ってWeb検索する事で見つける仕組みだったが、そのキーワードが“サイのこのこのミンミンミン”なんて意味不明ながらも頭に残るフレーズだったからすぐに思い出すことができた。で、なけなしの電子マネー(小遣い)を全部使い、そのアプリを購入した。


午後に先生が急病で急遽自習になった授業があったので、タイミングを見計らっていたのだが、なかなかここぞというタイミングがない。クラスメイト達は複数のグループに別れて賑々しく雑談しているが、主人公の男は1人でスマホを弄って怪しくニヤついている。取り押さえるべきだろうか。しかし、あのスマホを向けられたらと思うと危険過ぎる。そんな風に悶々としている時間が続いたが、自習時間ももうすぐ終わろうとする所で、主人公の奴がトイレか何かで席を外した。ここだ!今しかない!!教室から奴が居なくなったタイミングで俺は教壇に立ち、クラス全員に向けてアプリの画面を向けながら大声で呼びかけた。

「皆、大スクープだ。ちょっとこれを見てくれ!」

クラス全員の視線が俺のスマホに集中する。その瞬間、ざわついていた教室が一瞬で静まりかえった。


ヒロイン達は元より他のモブキャラクターである女生徒、主人公以外の男子生徒も含めて全員が虚な目で俺のスマホ画面を見ながら呆けている。俺は間髪入れずに指示を出した。

「全員、よく聞いてくれ。皆はこれから俺以外の奴にこの催眠アプリを見せられても自我を保つ。それから今から皆のスマホにもこのアプリをコピーするから、自分の周りの人間にも、この画面を見せて同じように指示をするんだ」

そこまでいうと全員が小さく頷くのが見えた。そこで主人公を除くクラス全員ともグループチャットを作って催眠アプリを共有した。

「よし。3つ数えると、全員何事もなかったかのように目を覚ます。3、2、1、はいっ!」

俺のカウントの後、全員がキョトンとして俺の方を見ている、そのうちクラスメートの1人が壇上の俺に尋ねた。

「で、慎吾。大スクープって何だよ?」

しまった!そんな事のフォローなんて全く考えていなかった!仕方なく俺はしどろもどろになりながら、自分の恥ずかしい秘密を暴露する羽目になったのである。そしてクラス中で湧き起こる大爆笑。あれ、これそんなにウケるネタじゃないよね?

「きゃは♡ おおやまっちウケる!」

攻略キャラではないが美人ギャルなクラスメートからも一目置かれてしまった。さらにモブクラスメートだけでなくヒロイン達からも

「大山君、もうっ♡冗談はほどほどにしてよねっ♡」

「大山さんって、面白い方ですのね♡」

と何故か笑顔を向けられる事になった。解せぬ。


放課後、日直の主人公と幼馴染ヒロインが教室に残って片付けをしている。ゲームの展開であれば、主人公が催眠アプリを最初に使うのはこのタイミングだ。俺は心配になって自分達の教室が見える向かいの校舎の別の教室に潜んで2人の様子を観察していた。


俺は息を飲み様子を見守っていた。もちろん、いざとなれば走って教室に駆けつけるつもりだったのだが。そして遂に事件は起きた。主人公がスマホの画面を幼馴染に見せつけたのだ。


しかし、幼馴染ヒロインの彼女は「何それ?」という表情をしたのち、そそくさと教室を後にした。1人残されて途方に暮れる主人公。まあ、人生そんなヌルゲーじゃないんだよ。合掌。


ヒロインが無事だったことに安堵して、俺が帰ろうと校門を出たところ、何故かヒロインの彼女が待ち構えていた。

「大山君!見守っててくれてありがと♡今帰り?ねぇ、一緒に帰ろ♡」

どうやら俺の行動は全部お見通しだったようだ。さすがはヒロインと言うべきか。それにしてもいきなり腕を組んでくるのは距離が近すぎませんか?何故かトレードマークのおさげ髪を解いており、流れるようなウェーブがかったロングヘアが風に揺れるとかつてスチルでみたような3割いや5割増し(当社比)の可愛さで、かつその胸部の凶器が俺の腕に押し付けられ挟み込んでいる訳で…。


「だって、大山君が先に暗示をかけてくれたから私は平気でいられたんでしょ?」

「まあ、そうなんだけどさ…」

「じゃあ、これはお礼ってことで放課後デートにレッツゴー♡」


デ、デートだと!?あの泣く子も黙る正統派巨乳美少女ヒロインと!?まじか!

「あーっ?何か不服なのぉ?(ぷくっ)」

「いや、全くそんなことはない。むしろ夢みたいで…」

「ふんふん。よろしい!じゃあ、早く行きましょ♡」


そんな感じで俺は推しヒロインとの初めての放課後デートを、その夢のような時間を満喫したのだった。


========


翌朝、家の前に見慣れぬ黒い高級車が停まっていた。

「大山さん、おはようございます。今朝は一緒に登校しませんか?」

車から降りてきたお嬢様ヒロインが俺にそんな事を告げてきた。断る理由もないので、俺は彼女の車に乗せて貰う。運転手さんが滑るように車を走らせる中、俺は後部座席の隣に座る美少女に視線を向けると恥ずかしそうにうつむく彼女。なにこれ、可愛い。


「あの、今日はお礼を申し上げたくて、不躾ながらもお家の前で待たせて頂きました」

「お礼?」

「はい。例の催眠アプリです。実は昨日の放課後に……」


どうやら幼馴染ヒロインの攻略に失敗した主人公は懲りもせずに、茶道部の部活で学校に残っていた彼女に催眠アプリを使おうとしたとのこと。当然ながら俺の暗示が先にあったので事なきを得たらしい。


「本当にありがとうございます。つきましてはお礼に我が家での晩餐にご招待したいと思うのですが、今週ご都合の良い日はございますか?」

「いやいや、そんな大した事はしてないって!」

「いえ、それでは私の気が収まりません!どうかお願いします!」

「じゃあ、ご相伴に預かろうかな」

「ありがとうございます♡」

俺の手を両手で握り感謝を伝えてくるお嬢様ヒロイン。まるで好感度カンスト状態みたいだ。


こうして俺は後日、彼女の家(豪邸)でご飯をご馳走になった。俺は制服だったが、彼女と彼女の母親は背中がばっくりと空いた艶かしい色違いのドレス姿で、何故か俺の両隣に座っている。首を起点に張られたテントはその双峰の先端しか隠せていないため、有り体に言えばはみ乳が凄い。制服姿とドレスではこんなに違うのかと感動すら覚えた。しかも脚を目の前で何度も組み替えては、その度にスリットからおみ足どころかお尻まで見えている。それに料理とは別に何か凄いいい匂いがする。それを何故か微笑ましいと言わんばかりの笑顔で眺めている彼女の父親。


「さあ、たくさん食べて下さいね♡ (何なら私も)」

「えっ?」

「な、何でもありませんわ!どうぞ召し上がれ」


なんか聞き逃しちゃいけないワードが聞こえた気がするのだが考えないことにして、俺は豪華な料理に舌鼓を打った。食事中の話題はやっぱり催眠アプリのことで、彼女は早速両親やメイド達使用人にも俺が彼女にしたのと同じ暗示を埋め込んだとのこと。これで大事になることなく催眠アプリ対策が出来たのだと喜んでいた。そりゃ社会が大混乱しそうなアプリだからね。で、しっかりデザートまで平らげて俺がそろそろと帰ろうとしたのだが…


「ご馳走さまでした」

「もう帰ってしまわれるのですか?」

「もっとゆっくりなさっても」

何故か美人親娘の双丘を“あててんのよ”されて強引に引き留められるが、血の涙を流しながら帰ることにする。だって、俺たちの様子を笑顔で見ているお父さんが怖いんだよ。何故かお父さんの周りにいる美人メイド達までもが俺に熱い視線を向けたり舌舐めずりしている気がするし。


「でも明日も学校がありますし…」

「では、次は週末に遊びに来て下さいましね♡ そしてゆっくり私たちの今後の事について話しあいましょう♡ふふふっ♡」

不敵な笑みを浮かべて俺を熱い眼差しで見つめてくるお嬢様ヒロイン。そんなお嬢様に負けずとも劣らない美人のお母様が妙に艶っぽい声色で俺に耳打ちした。

「今度はもっとゆっくりしていって下さいねぇ♡」


色々とやばいハードルをなんとか乗り越えて俺は家に辿りついたのだった。


========


後日談。


実は例の催眠アプリには、指示を通りやすくするための仕組み、すなわち催眠を受けたものの好感度を爆上げする暗示と羞恥心を減らして性に奔放になる暗示が裏で動いていたらしい。そのせいで俺はクラスどころか世界中の人気者になってしまった。クラス全員から始まってねずみ算的に世界中に拡散した催眠アプリは俺がユーザー登録したアプリである。つまり、好感度カンストの対象は俺になる訳で……


「はああぁぁんっ♡ もっと♡もっとぉ♡」

「次はわたくしにもお情けを下さいませ♡」

「おおやまっち、その次は私の番だよ♡」

「大山君、今は授業中なんですからもう少し静かにやりなさい。あと放課後、生徒指導室に来るように♡」


俺は今日もヒロイン達をはじめとする美少女・美女達とよろしくやっている。ん?主人公?なんかいなくなってたよ。


(完)


まあ、所詮はエロゲ世界ですし…

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