年上ヤニカス彼女とダウナーな日常
ガウテン(男)
ノーマルな日常
東京という土地。若干24歳でセキュリティがしっかりしていて相場より高いマンションに住めるというのは客観視勝ち組というやつなんだろう。
22歳で大学卒業後、すぐに大手銀行会社に就職して早2年。仕事にはすっかり慣れ顧客もついて、新人を任されるなどある程度信頼は置かれている。
そんな俺だが最近気になる人がいる。それは隣のお姉さんだ。部屋の前のプレートには『
普段は朝からベランダでたばこをふかしたり、昼にもふかしたり、夜にもふかしたりしている。休日に家にいると高確率で煙を目にする。
ほとんど家から出てるところを見たことがないが、たまに玄関先で会うことがある。だが、ごみ捨てや、たばこの補充がほとんどでその時も口には火のついたタバコが咥えられていた。
俺は平日、ほとんど仕事に行っていて昼間の彼女、『
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そんなことを気にしながら今日も日〇銀行横浜支店に出社した。ちなみに俺はいろいろあって入社2年で支店長代理を任されている。
「おはようございます」
支店内にはすでに何人かが出社していて中には今自分が担当している新人の子もいた。
「あ!おはようございます!」
「おはよう。今日はいつもより早いな」
「そうなんですよ。昨日支店長にお願いされた書類が終わらなくて早く来てやってたんです。」
「そうか。お疲れ様。頑張ってるようだしなんか買ってきてやろうか?」
「いいんですか!?じゃあお言葉に甘えて、ス〇パーカップのバニラで」
「こんな寒いのにアイスかよ。まあ、いいけど。少し待っててな」
そう言って銀行の隣にあるコンビニに足を進めた。
夏にはまだ早く冬というには遅すぎる12℃の今日この頃。入社したての頃は銀行という職場に馴染めてはいなかった。だが今は、イケおじの支店長や優しい同僚、かわいい後輩に恵まれて自分の立場を確立できてきている。いろいろあったが楽しく満足感は確かにある。
ただどうしても気がかりなことがある。それは隣の八雲さんのことだ。
後輩にアイスを渡していつもの自分の業務をこなし、いつもの時間に会社を出て、いつもの時間に都内のマンションについた。
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仕事から帰ってきてマンションに入ろうとしたら、めったに外出しないはずの八雲さんと珍しく鉢合わせた。
「こんばんわ、」
「・・・一本、いる?」
思考が追い付かなかった。
今この人は何と言った、「一本いる?」かと聞いてきたのか?手には赤い箱。タバコには詳しくないがそれでも見たことがある種類だ。確か"マルボロ"と呼ばれる種類だったか。
「そんなビビった感じ出さないでよw」
当たり前のように口に煙草をくわえながら器用にしゃべる八雲さん。
「急になんですか?」
「いや、そっちこそじゃん。」
「え?」
「だって毎回外で会うとずっと視線感じるし、それに朝ベランダで吸ってると隣のベランダも開いて人の気配するし、なんか私のこと気になってるのかなーって、思ってんだけど」
ヤバイ。毎朝八雲さんのタバコの煙見ながらコーヒーを飲んでるのがばれてる。
ってかヤバイのどう考えても俺じゃん。隣人のタバコの煙見ながらコーヒー飲むってどんな日課だよ。
一回だけたまたま見えた吸っている八雲さんと朝焼けに見とれたことがあった。それからあの情景が妙に頭に残った。映えるというか、エモいというか。どっちも同じ感じの意味だが本当にあの瞬間は美しかった。ただ美しかった。
「確かに気になってはいますが、異性としてではなく、人間としてです」
「え?どういうこと?」
「あのー、そのままの意味です。いつもタバコ吸ってるだけだし、ほんとにたまにしか外出しないですよね?玄関の開く音もしないですし。それに、あまり外で会うことないですし」
そういうと、目を数回瞬きすこし照れたようにはにかんでこう言った。
「なるほどね、、、そういうところが気になるんだ、」
「はいそうですね。」
その後、数秒はどちらも言葉を発しず気まずい時間が流れた。仕事帰りで疲れていたしそろそろ部屋に入ろうかと思ったが、八雲さんの一言で気が変わった。
「・・・えっと、それで、えっと、、、一本いる?」
「あー、じゃあせっかくなんでもらいます」
「・・・はい。 えっとどこで吸う?」
「じゃあ、ベランダとかどうですか」
いろいろあったけど、たばこの件は続けるらしい。「どこで吸う?」かと聞かれたので、ここはいつもの定位置である互いのベランダをチョイス。
「おっけ~。じゃ行こっか」
何とか持ち直したらしい八雲さん。
八雲さんとベランダでタバコを吸うことになった。振り向いて部屋に入ろうとするとなぜか八雲さんまでついてきた。
さすがに部屋に入るときはタバコの火は消していたが、いったいなぜ。
「いや~、君もなかなか大胆だね。こんな美少女を部屋に連れ込むなんて」
「?」
部屋に連れ込むも何も勝手に入ってきたのは八雲さんだ。
「あ、結構きれいにしてるんだね」
「あのー、すみません。なんで入ってきたんですか?」
「え?だって君がベランダで吸おうっていうから」
そういうことか。確かに「ベランダで」って言ったけど、普通はそれぞれの部屋のベランダじゃないかな。
それにさっき自分でも言ってたけどよくわからない男の部屋に入ってくるとは。
八雲さんについての謎が深まるばかりだ。
「いや、普通に考えてそれぞれの部屋じゃないんですか?こういうのって」
「え?」
八雲さんは見る見るうちに顔が赤くなった。そして、しゃべるスピードや普段の様子からは想像もできないくらいの速度で部屋をでてった。
数秒後少し息が乱れた八雲さんが隣のベランダから顔をのぞかせた。
「ハァ、ハァ、ッスー。ン、ハァ、お、つかれ、、、さま」
「お、お疲れ様です。大丈夫ですか!?」
「な、なにが!?全然大丈夫だけど!?」
そういった八雲さんの顔はまだ赤みがかっており、俺と目を合わせようとしない。八雲さんは急いでライターを出してタバコに火をつけようとするが、なかなかライターに火が付かず、アワアワしている。
そして、やっとのことでタバコに火が付き、雲に隠れている月を見ながら深く一吸い。
その光景は以前見たものと時間も季節も服装も何もかもが違ったのに重なって見えた。
美しく、儚い。だがどこかかっこよさすら垣間見せるその様相は俺の心をざわつかせた。このざわつきは何かわからない。だがそんなことは気にならないくらい目の前の光景に見とれていた。
「吸わないの?」
タバコを片手に八雲さんが話しかけてきた。
「すみません。ちょっとライター貸してもらえませんか?普段吸わなくて持ってないんですよ」
「あー、そうなんだ。じゃあはい、これ」
「・・・ありがとうございます」
先ほどまでの慌てぶりは何だったのか。今では言動一つとってもその様は冷静でクールな印象だ。それにこちらへライターを渡そうとする動きまで優美で見とれてしまった。
なぜこんなにもだらしなそうなのに一つ一つの所作が美しいのだろう。また一つ謎が増えた。
ここ2年はこんなゆっくりと月を見上げるなんてことはなかった。ふとした拍子に眺めることはあっても雲に隠れていた月は姿を見ぜず漂う。
雲間に覗いた月はどこか寂しそうな怪しい光で煙を照らしていた。
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どうも初めまして「ガウテン」です。
なんとなく書きました。
では、また。
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