第31話

「あいつが塞いでた穴に飛び込むぞ!」

「わかりました」

「お前はそっちから回れ、俺はこっちから行く」

「はい」

 ふたりがそこで二手に分かれると頭はシャーリーの方についていった。

 ごろごろごろ

「いやあああああああああ!」

 くまたにはシャーリーの様子を眺める。

「んー、やっぱそうなるか」

 くまたには先に穴へたどりついた。「急げ!」

 あともう少しでたどり着くというとき、シャーリーがつまずいた。「馬鹿野郎!」

 くまたには魔法を使って、巨大な土のゲンコツで岩の進行方向を変えた。「早く立て!」シャーリーは立ち上がり、走りだす。(あと少しだ)

 穴に飛び込んで、くまたにに突っ込むようにぶつかった。

「ぐわ」二人は転がる。

 ドン!

 穴が塞がった。仏像の顔面がめり込んでいる。ぱらぱらと壁がこぼれた。

 シャーリーは地面にへたり込んで、ぜーはーとする。

「もう、石とか投げんなよ」

「はい、もう投げません」

「許してくれるといいな」

 といって、くまたには立ちあがった。

「こんな目に遭わせてくれたんですから、許してくれないと納得いきません」

 二人は先を急ぐことにした。そこかしこに、小さな月がぷかぷかと浮いている。

「私、……」

 シャーリーは手で顔を覆った。

「私は間違っていたのでしょうか」

「おまえは、大切な人を生き返らせたかっただけだろ、その想いは別に間違ってねえよ。まあ、結果はこの通りだ過ぎちまったものはしょうがねぇし、今できることをやるしかないだろ」

 シャーリーは顔を上げた。

「あなたって結構いいこと言うんですね」

「だろ」

 二人は笑いあった。

 小鳥の骸骨が鳥かごに入っていた。

 シャーリーはそれを少し見て、

 前に目を戻した。

「どうした?」

「いえ、なにも」

 進んでいくと、何処からともなく沢山の赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

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