魔法中年 老人とビスクドール
宮上 想史
第1話
萌は地下の倉庫を探険していた。
ずーとどんな物があるのか気になっていたのである。
所狭しと様々な物が置いてあった。
「うわあ、何があるんだろうなあ」
萌はキョロキョロと目を動かしながら、歩を進めていった。
可愛いデザインの陶器の器がある。
「かわいいこれ」
萌がなんとなく、それをツンツンと指でつつくとそれは棚から落ちた。
「あ」
ガシャン!
萌は壊れた物をジーと見ていた。
「あとでおじさんに謝っとこ」
再びキョロキョロと散策をする。
目の前に黒い棺のような物があった。なんだかやけに目を引く。目を一度離してみたが、吸い寄せられるようにまた見てしまう。
「なんだろ、これ」
萌は棚からそれを引き出して床に置いた。
「よいしょ」
その棺は木でできていて、萌にはそれなりに重かった。
「棺桶? なんかの死体入ってたらどうしよ」
少し不安になりつつも、そうっと棺の蓋を開けてみた。
中で人形が寝ていた。
「この子、綺麗……」
萌はぱっと閃いた。この人形が動いたら素敵だろうと。
熊谷がおじさんの魔法で動いてるんだから、この人形も自分の魔法で動かせるんじゃないかと思ったのである。
だって生きているみたいなんだもの、この子。
「おじさん!」萌はカウンターにダンッと手をついた。
「だめかな」
信也は地下室上の喫茶店で料理の仕込みをしていた。
「なんで!」
萌はどうしても動かしたいと思っていた。
「だって、凄く綺麗だよあの子!」
「熊谷がなんていうか……」
「熊谷の人形なの?」
「んー、友達かな」
「へー、じゃあ動いたら一緒に遊べるじゃん」
萌は目をキラキラとさせながらいった。
「色々あんだよ熊谷にも」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
カラン、カラン
「ただいまあ」
買い出しの荷物を抱えて熊谷が帰ってきた。
「お帰り!」
萌は熊谷に抱きついた。
「ねえ、ねえ」
「なんだよ離れろよ」
うっとうしそうにしながら、熊谷は荷物をテーブルに置いた。
「ねえ、地下の倉庫にいる熊谷の友達、あたし動かしていい?」
「友達?」
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