少年少女兵

かわくや

第一話

「いよぅ」

「あーっす」


 辺りは石造りの城壁の上。

 その縁に腰を掛け、足をブラブラと揺らしている少女に声を掛けてから僕はその隣に腰を下ろした。


「今日も平和ですねぇ」

「ですねぇ……」


 そうのほほんと呟き合う僕らの眼下には、次々と展開される魔方陣。それが破裂する度、人間がゴミの様に弾けていた。

 傍から見ればこの光景を平和とは呼ばないのだろうが……僕たちに被害は及んでいない。

 これを言うと城の兵士にはバケモノを見る様な目で見られるのだが、明日は我が身かもわからぬこの状況。これを平和と言わずに何と呼ぼうか。


「あー、今日で何か月だっけ?」

「さァ、二か月は越えたような……無い様な?」


 そんなことを考えながら、僕たちはぼーっと城の下を眺めていた。


 そう、僕たちはいわゆる召喚者なのだ。

 ネットが普及し、同じような小説が出回るようになった昨今。

 そろそろその熱も下火になってきたであろうと言う時期にこれだ。

 せめて絶頂期にお呼ばれするのならまだしも、こんなことじゃもし帰れても家族への言い訳に困ってしまう。家に帰って話を聞いた第一声が「もう飽きた」なら僕はきっと立ち直れないだろう。

 

 ……なーんて、意味も無い戯言もそこそこに。

 真面目に話をするのなら、あれは大体二か月は前のことだ。

 僕ら私立 常野際高校の2年3組はまとめてこのアイツバルグ公国に召喚されたのだった。

 

 この世界ではよくある様なスキルもステータスも無いらしいのだが、足跡魔術というその人物の人生を体現した魔術が開発されたらしく、その魔術を使える様に指導され、こうして少年兵として使われていると言う訳だ。

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