ベトナム

たんぜべ なた。

1967年

 僕は、経済学を学ぶため、まだ珍しかった「留学生制度」を利用して渡米した。

 大阪万博を間近に控え、日本も賑やかになってきたけど、学問の世界はまだまだ遅れをとっている…。

「大学紛争」なる言葉も取り沙汰される昨今、いよいよ研究に集中することもおぼつかなくなってきた。


 小暑の候。

 安田講堂の壁面には「アイビーグリーン」の語源ともなったツタ植物の仲間である「アイビー」が茂っていた。

 まだ、肌を舐め回す嫌な湿気感のある梅雨の最中でも、この清涼感漂う色はいくぶんか心を和ませてくれる。

 そんな望郷の思いと、新天地への期待に挟まれて、僕は米国にやって来た。

 留学先の大学研究室での評判もすこぶる良かった為に、あっさりと米国市民権をしまい、教授陣の期待も熱いなか、僕は益々研究に没頭するのだった。

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