浅原さんの小説(仮)

キタハラ

富士山と訃報

 訃報を知ったのは、富士登山の帰りだった。

 そのとき、一生に一度はやっておきたいリストの一つを叶えたことでハイになっていた。山小屋に泊まってご来光をおがみ、調子に乗ってお鉢めぐりという山頂をぐるりと一周してからの下山。いつまで経っても下まで辿りつかないし、とにかく熱い。顔も腕もじりじり焼けていく。結局帰りが一番くたびれた。同行した親友のあおちゃんと、登るときは「帰り温泉寄ろう」なんて言っていたのに、二人ともくたびれ果てて、口数も少なく東京へと帰った。スマホをひらくと、イワトオさんからDMがきていた。


 Twitter(現X)では仲の良かった作家仲間のみなさんやたくさんのファンが追悼されていた。

 タイムラインを眺めながら、そのなかのひとつとして、「ご冥福をお祈りします」と書くことがどうしてもできなかった。浅原ナオトという小説家には特別な敬意と恩が僕にはある。もちろんみんなそうなんだろう。

 著書はドラマ化され映画化にもなったし、ベストセラーになって本屋で夏休みに開催される「夏の100冊」にも入った。今年のカクヨム甲子園では名前を冠した賞もあるほど、読んでいなかろうとみんな、浅原さんの名前を知っている。



 これは個人的な浅原さんへの追悼文であり、もしこれから浅原ナオトの小説を読もうとしている人へのキッカケみたいになってくれたらいいと思って書いています。

 僕にしては珍しく、いまスマホで書いている。


 以降文の流れが飛び飛びになってしまっていたら申し訳ない。

 どの場所で、記しておこうかなと考えて、やはりカクヨムが一番いいな、と決めることができたのがまさに今で、一年かかった。その場の勢いでアップしてしまえ、と思った。

 そうしないと、ずるずる引き伸ばしてしまいそうだからだ。


 ネットにあげるくせに言い訳じみたことを述べるのもなんですが、これは個人的な「感想」です。浅原さん自身の考えとは違ったことを書いている箇所もあると思います。あくまで、ぼく自身が見た、読んだ、関わったことを書きます。


 できるだけ、短期間に、でも一つずつ書いていきます。こういうとき、俺がもう少し売れてたら雑誌なんかに書いたりして、より浅原作品をPRできたところなんですが、不徳のいたすところ。


 でも、多くの人に読まれることを目的としない。悲しいね、とか、気になってたんだよね、という人に向けてひっそりと書いていこうと思う。


 僕は浅原さんのおかげで小説家になれたし、でも会ったのは一回だけ、主にネットでの交流しかしていなかったけれど、僕が一番浅原ナオトの読者であり、作家友達だと勝手に思っています。マウントではないです。みんなそう思っているだろうし、そういうふうに思わせる作家は、一流だと思います。



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