コントラスト

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コントラスト


青い空に白い雲。

他に言い様がない、それ位には夏の空。


朝から気温は高かった。

夜も眠れなかったし、ずっと汗をかいている気がする。

怠くて食欲なんかない。それなのに元気が出なくなるから食べろ、食べろと言われて腹が立ち、朝から親と喧嘩した。


玄関を開ければ眩しいし暑い。

荷物は重い。自転車の荷台に荷物を括りつけていると、引っ掛ける所で紐がバチンと弾けてまた苛々した。

学校指定の鞄の色が気に入らない。制服の形も周りの学校より格好悪いと思う。制服を新しくするとか私服にするとかという話も出ているらしいけれど、今更新しくなった所で買い替えられるとは思えない。毎日服を決めるのも面倒臭い。



つまらないテレビ、つまらないSNS、つまらないニュースにつまらない流行。キラキラとか充実とか新しいとか、未来だとか。

全部私には関係ない。勝手に騒いで盛り上がって、気付いたら終わっている。

興味がないから知らなかった、好きじゃないから見なかった。それだけなのに顔も知らない誰かのせいで置き去りになるなんて真っ平御免だ。

ああ、また気分が悪い。



自転車を漕ぐ。足に力を入れれば勢いは増す。

住宅を抜けて車の多い大通りを越えると、畑だらけになって人気が少なくなる。

この通学路は嫌いじゃない。季節によって緑の匂いがする。風が吹いて気持ちが良い。

どこかの家の犬が今日も顔を出していた。種類は分からないけれど、耳が大きくて可愛い。帰り道によく吠えている散歩中の小型犬とは大違いだ。


学校が見えてきて、同じ制服を着た人の数が増えてくる。

それでもこの時間はまだ少ない方で、予鈴が近くなれば邪魔な位になる。実際ふざけ過ぎて学校にクレームが来たとホームルームで注意された。自分には関係ないのに、鬱陶しい。


自転車から降りて駐輪場へと転がしていく。いつも見る自転車が並んでいて、今日は割と出会う顔もあった。

どこのクラスか知らないし、部活も同じではない。服装がまともなので多分下級生なんだろう。その方が楽でいい。上級生は面倒臭いし苦手でしかない。

モタモタと荷ほどきするのに声をかける事もなく、さっさと追い抜いて校舎へ向かう。


下駄箱はいつも少し埃っぽい。たまに臭い時もある。掃除はしている筈だけれど、誰かの靴がある限りは解決しない問題なんだろう。

今日は中にいるのが自分達位なのでそれ程酷くはない。


校舎内では楽器の音が響いている。反響しやすい場所は人気があって、早く到着した部員に取られがちだ。

今日も誰かがいるらしい。この音は、多分あの子だろう。

階段を上る。


太陽を反射して光るベル。

開いた窓から風が吹き、夏の薄いスカートがヒラヒラ揺れる。

階段の踊り場で、トランペットを吹いていた。

差し込む光に白いシャツが眩しい。

「おはよう」

振り返った顔が、妙に綺麗に見える。

何故か、ドキッとした。



ただの友達の癖に。

私の方が、本当は少しだけ可愛い。勉強も出来るし楽器も上手い。

そう思っていた筈なのに。


何でこいつがこんなにも綺麗に見えるんだ。

「チクショウ」



どうしてだろう。

何もかもが鬱陶しい。腹が立つ。

許せない。大っ嫌い。



いっそ、全部絞め殺してしまいたい。

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