紫陽花のような僕
天
第1話 青く
僕はまるで紫陽花のようだ
卑屈な僕を取り巻く空気は
梅雨に咲く紫陽花のように
じめじめしているから
土の特徴で色を変える紫陽花のように
僕も人によって、環境によって顔色を変えるから
バケツをひっくり返したような強い雨が
傘に打ち付ける。
何もセットしていない前髪が湿気によって
言うことを聞かなくなっている。
セットしないなりに、ある程度は整えたいのだが。
学校についた
平凡な公立高校だ
あるとすれば少し部活動が盛んなことか
僕はなんの部活にも入っていないが。
午前の授業が終わる
昼は一人で済ませる
というか済ませるしかない
友達らしいやつもいない
クラスではもう輪が出来上がっている。
今更、無理だろう
全ての授業が終わった
今週は
僕がいる班の掃除当番だ
今日も黙々とやろう
誰かと喋る必要もない
「雑巾かー、ほうき、どっちしたい?」
突然話しかけられてびっくりした
「あ、えと。どっちでも…」
「えー?決めてよ
"青っち"
」
!?
驚いた
なんだその呼び方は!?
「どしたのん。とりあえずはーやーく。決めてよ、私、部活あって早めに掃除終わらせないとなんだ」
「俺もー」
「俺も、部活めんどいわー」
「ほいほい、早く!」
「ご、ごめん、雑巾するよ」
「はいよー」
コミュニケーションをとってしまった
確かあの人は
女バスの『日向』さんだったかな
迷惑をかけてしまった
また、嫌われたかな
雨が強く打ち付ける朝
まだまだ梅雨は続きそうだ
雨は濡れたりとか湿気が凄いとか
いろいろ文句言われるけど
僕は結構すきなんだよな
…なんて考えていると不意打ちをくらった
「わっっっっ!!!」
「うわぁぁ!?」
「うわあ!驚きすぎだよ!青っち!」
「ああ、いやぼーっとしてて…てかなんで僕に話しかけて…」
「そこにいたからじゃあん、一緒に行こ?ダメ?」
「いやいやダメじゃ…ない…です」
「はははっ!なんで敬語ー?はははっ!」
笑いのツボどうなってんだ…
ほんの一瞬の沈黙
そうしたら突然
「あ、青っち、私の名前呼んで?」
「え?どういう…」
「なんでもいいでしょ」
なんのつもりだ??
わ、わからん
「……日向さん」
「…堅すぎー!はははっ!!『さん』ってあははっ!」
「変か??」
「私の名前呼ぶときにさん付けるやつうちのクラスにいないよ?青っち意外ね」
「か、顔が広いんだね…」
「たりめぇよ!」
そうか
知人を一人でも増やすために僕に話しかけたのか?
…まぁそりゃそうか
七月頃の
平日
あの日以来毎日
日向と登校している
なぜ…わざわざ…
でも楽しんでいる僕がいる
会話の中に散りばめられる褒め言葉が
心地よい
日向は明るい
まるで太陽のような
名前からして雨が似合いそうな僕には合わない人だ
意識している
ひまわりが、太陽を向くように
日向の顔を気づけば見てしまっている
日向のおかげで、人との会話も上手くできるようになった
いつも一緒に居てくれる
昼飯もただ食べるという
単純作業じゃなくなった
イメチェンも手伝ってくれた
上手くは…行ったのかはわからないけど
自己満はした
夏休みに
何か
感謝を込めて何かしよう
僕は思った
「日向、欲しいものとか…ある?」
「欲しいもの?うーんなんだろ。てかなんで誕生日まだだよ?」
「いや、今は誕生日を祝いたいんじゃない。単純にお礼をしたくて」
「なんで?何かしたっけ?」
「したよ充分、僕はあの時から随分変わったろう」
「最初の頃と比べて?たしかにカッコ良くはなったかな」
「今の俺があるのは日向のおかげなんだ」
「いやいや大袈裟だよー」
「少なくとも俺は大袈裟とは思っていないよ」
「ええー?」
「何かない?」
「ええー?じゃあ…
海いこ!
」
青い
空と海と
ああ
そうだった
俺の名前って…
何が雨に似合うだ…
いい名前じゃないか
夜の海は怖いものだな
大学生ぐらいの人が花火をしている
今日は日向に感謝を伝えるためにあるのだ
「日向」
「ん?」
「ありがとう」
「…堅いよ、あははっ…」
「僕は日向と関わって全てが変わった、良い方向にね」
「そうだね、まさに」
「友達も出来た」
「うん」
「上手く言葉がでないけど
日向が僕のじめじめとした曇った心に光をくれたんだ。文字通り明るくなった」
今の俺なら
受け入れてくれるかな
「あなたは僕にとって特別な人だ。
僕と付き合ってくれませんか
」
「ばかっ」
トンッ
「うおお!」
バシャ!
海に向かって押された
怒っているのか
また僕は間違えたのか
嫌われたのか?
「嬉しいよ青っち…お願いします…!」
なんだか初対面みたく『堅く』なってしまった
紫陽花のような僕 天 @tensuke0628
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