箱ニワ戦争

@_cat

プロローグ

 別に自分が特別とは思ったことはない。常に自分は凡人で、でも周りにいる皆も凡人で、極一握りの高みにいる自分とは関係ない人が特別なんだと。別に自分が特別になりたいとは思ったことはないし、周りに特別であってほしいとも思ったことはない。凡人なりにキラキラと輝く仲間たちとともに生き、凡人として華やかに死ぬ人生を想像しては、その妄想にわりと満足している。

 それでも今この場で命を賭けて、特別に牙を向けているのは、この普通じゃない世界の熱に浮かされているからで、別に自分を曲げているわけではない。なんて、嘘だ。全部言い訳だ。特別になりたい。変わりたい。たった一瞬だけでも、自分のことを特別だと思いたい。仲間に、特別だと思ってもらいたい。だから凡人は、諦め悪くもう一度立ち上がって、目の前の特別を穿つ。

「うぉぉぉぉぉお!」

この雄叫びが、醜い必死さが、世界を貫き理想を築く凡人の覚悟だと、目の前の特別はまだ知らない。

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