信長逆行記
CELICA
第1話 邂逅
気がつくと、
誰の屋敷だ?
いつも以上に重い体をやっとのことで起こし、儂はなぜか焦点の中々定まらない目で、男を見た。
「若様、お久しぶりにございます」
その声、佇まい、間違えようがない。……先程は藤孝と勘違いしていたが。とにかく、儂は今の光景が自らの目のせいだと思いたかった。だが、その目は主人をあざ笑うが如く、視界を開けさせた。儂は、やっとのことで声を絞り出す。いつもより締めつけられる喉から出た声は、やけに甲高かった。
「
勝手に、目から水が出た。政秀の返事を待たず、儂の口からは洪水のように言葉が溢れた。
「この大虚気が。
なぜ、あの時腹を切った?
儂は一体何をした?
儂は……」
「それは、若様がよくご存知のはず」
儂の素直ではない言葉を、政秀は一刀両断してくれた。そうだ、全ては未熟だった儂のせいなのだ。政秀は背筋を伸ばし、儂をしっかりと見つめて、とどめを刺した。
「若様の御威光は、某までも知ることにございます。
某は、真に、誠に、一時でも若様のお側に仕えることができ、果報者です」
「ま、さ、ひ、で……」
言葉が、言葉にならなくなった。儂の心は、その瞬間だけ、幼くなった。五歳の童の体でなぜ政秀に抱きついているのか、まるでその時は分からなかった。ただ、儂の心の思うがままだった。
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