第20話
「お前はどうやってここに来た」とアインはシノに聞いた。
「次元移動を繰り返して、ここに」
「……俺は、死んでここに来た。ここは死後の世界だと思ってたが……」
「死後の……しかし、わたしは死んでいません」
「それは知らない。俺は死んで、そして、何かに導かれてここに来た。それ以外のことはわからない」
「死んで何かに……導かれて……つまり、アインは魂だけ? 精霊のような状態? 身体が解析不能なのは物質的情報量が多いからと思っていたけど、少ないのか。完成度が高すぎて、わたしの頭じゃ理解できないんだ。ここが完成された生命の住まう場所とすれば……ここはマナ濃度が高いと思っていたけど……そうか……ここは生命の源の近くなんだ」
そんなふうに考え込みながらシノは独り言をこぼし続ける。
アインにはシノの考察は理解できないが、ここは考えているほど高尚な場所ではない。
ここは廃棄場だとアインは考えていた。
天国や地獄に持っていけない魂を置いておく場所。
なぜそう思うのかと言えば、生前の所業にある。
アインは生前に、神を名乗る不死身の怪物を二体、殺している。
殺した事も殺し方も、今の状況を招いているのではと考えている。
「おそらく」シノは言う「アイン、あなたの持つ霊的情報量がシステムの、輪廻転生とかそういうものの、許容量を超えているのでしょう。だから、あなたはここにいる」
「霊的情報?」
「はい。簡単に言うなら経験値です。様々な経験をして、その情報を蓄積して、魂の形を変えていく。あなたは、特異な経験をしたのでしょう。だから、ここにいる」
アインの考えと似たような結論を、シノは出していた。
「心当たりはある。だが、そんな経験をしたのが俺ひとりと言うのは考えにくい」
「確かに。別の要因もある、ということでしょうね」
そう言って、シノは思案に耽る。
アインは、寝転がりまたぼーっとする。
長い時間をそうやって過ごす。
この場所は、変わり映えが一切ない。
曇りで昼が永遠に続いている。
アインが知っている限りでは変化と言えるものは、シノが現れたことだけ、それが唯一である。
ここが何か変わるのだろうという確信し、しかしアインは何もしない。
できることが何もないのである。
アインがここへ来た当初は当然抗っていた。
元の世界に戻れないかと。
しかし、わかったことは、常に昼、常に曇り、常に岩場、そして岩場を破壊できない。
そこからはただ、ぼーっとしていた。
何もできない、何もない。
精神の変化がなく、ただ、記憶が無自覚に欠落していくだけ。
ここがなんなのか、全くもってわからない。
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