第15話
アインの振るった銃剣は、突然現れた糸のような細い線に阻まれる。
床や壁や天井が変形し、鋼のように頑丈な糸が装飾卿の周囲を囲っていた。
そして同じように、砲や開花した触手に変化する。
この砲と花は、純粋な熱を射出するためのものである。砲は直線的に、花は広範囲に加熱する。
アインに呪術が効かないことを、装飾卿は十分に理解していた。
しかし、タネはわからないが、呪術を無効化する距離は把握していた。アインから約一センチメートルである。
極めて小さなものだが、その無効化の力は強力だった。
砲と花でアインを攻撃するが、剣撃や銃撃により、掠りはするが致命傷には至らない。
剣や銃、そして、回避力により装飾卿の苛烈な攻撃を避けている。
するりと、一つの砲が現れた。形は他と変わらない。
だが、それが持つ呪力の強さは他の比ではなかった。
この砲は触手を伸ばし、装飾卿に絡みつく。
それに気づいたアインは即座に、その砲の触手を切り飛ばす。
しかし、遅かった。
この砲に溜めていた、圧縮した呪力は装飾卿へとすでに移っている。
右の眼孔が光を発する。
破壊不能と思われていた岩場を破壊した、装飾卿の攻撃。
岩場では、最大限を下に向けて放ち範囲攻撃とした。
今回は、たった一人に向ける。
これは、エネルギーを圧縮し直線に放つという単純なものであるが、この国、この世界に亀裂と穴を作れる、現在唯一の絶対的な破壊力である。
それを放たれる寸前に、アインは銃剣を捨て左手で掴めるぐらいの鉄球を取り出し、船に開けた大穴へと鉄球を投げる。
大穴は少し小さくなっていたが、問題はない。
鉄球は大穴へと向かい、アインや装飾卿や瓦礫などが鉄球に引っ張られるように追随してしまう。
重力が横に、鉄球を投げた方向に変わっていた。
しかし、装飾卿は床から伸ばした触手で身体を個体し、横に落ちていくアインを冷静に狙う。
そして、放たれた光は空間に亀裂を作りながら空中にいるアインへと一直線に進む。
それを見ずにアインは、一緒に空中を落ちていた先ほど捨てた銃剣を掴み、鉄球を撃つ。
弾丸により弾かれた鉄球はアインと共に地面に落ちる。
クレーターは未だに岩場に存在し、船はその中心に存在する。
周囲は空間掘削の余波で溶けている。
アインが溶けていない場所に着地した直後、再度、光が放たれる。
それを避けた後にアインが思ったことは、射程が想定以下ということ。
放たれた光は、アインを貫通するギリギリの射程調整しているようであり、地面に到達していない。
威力は想定通り。触れれば消し飛ぶのは確定である。
そして、アインにとって想定外のことがあった。
この光を装飾卿は、射程と口径を小さくすることで、連射が可能となっていた。
再度、光が放たれる。
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