第13話
結界が全て破壊された。
それは装飾卿にとっては割とどうでもいいことだった。
問題は船が損傷していることだった。
光線による一撃で機関部の三割が機能不全に陥った。
刀剣による斬撃で、一部ではあるが、半ばまで断たれている。
しかし、致命的ではない。
屋敷を改造したこの船は、呪術の効果を高めるブースターではなく、あらかじめ入力したコマンドを実行するだけのものである。
衝角による空間掘削は困難になるが、船の制御をオートではなくマニュアルにすれば外敵を排除するのは簡単だろう。
だが、そうすれば空間に開けた穴を広げられないどころか、大きさを維持することさえできないかもしれない。
ここまでで、五分もたっていなかった。
たかだか数分で、追い詰められていた。
三分で事を成せるはずだった。
相手を舐めていたか? 準備を怠ったか?
そんなことは、今考えることではない。
呪力の貯蓄はまだ豊富だ。まだ破綻していない。
超短期で決すればいい。
それから、じっくりとことを進めればいい。
あと少しだ。もうすぐで、私の故郷へ。
装飾卿は、船の制御を完全に手動へと切り替えた。
殺し屋アインが砕けた刀剣を捨て、新しい武器を取り出そうとしている。
その隙に、今までの比ではない密度の砲撃を放つ。
まるで、輝く壁が襲いかかるような光景だった。
アインは弓を取り出した。矢はなく、弓だけだった。
まるで、これから楽器を引くように、その弓を持ち、弦を弾く。
ドンッという低く重い音が響き、全ての砲弾が弾け、砲そのものも砕け、船にすら細かな傷がつく。
しかし、それは船だけではない。
アインもまた、全身が切り傷にまみれ、両目が潰れ、血を吐き出していた。
それでも、倒れることはない。
だんだんと、傷が塞がり癒えていく。
「クソッ! なぜ死なない!? 呪っているんだぞ。なぜ何も起きない」
装飾卿は、アインを見ていた。
今日、攻撃してきたときから見ていた。
単純に呪術的プロテクトが強固だと、推測していた。
しかし、どうやら違うようだと、装飾卿は気づいた。
アインが呪力でまさっているのか。
であれば、隠していてもこれまでで気づけるだろう。
呪術を無効化するなにかがある。
ならば、今まで通り呪力を単純な熱量に変えて、物量で押し通すしかない。
装飾卿はそう考え、空間掘削を維持しながら小さな砲に呪力を圧縮する。
『岩場』にクレーターを作った攻撃を、アインに放つために。
「恨みはない…………だが、ここで消えてくれ」
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