第9話

『無法の街』の北端には、たくさんの武器屋がある。

ショーウィンドウに武器を飾っているおしゃれな店や、壁に武器を立てかけているだけの無骨な店もある。

工房もあって、鉄を叩く音が日夜ずっと響いている。

そんな武器屋の町の最北端、そこにある店に俺は居た。


「面白いの置いてない?」


そんな俺の適当な質問に、真剣に考える店員。

うーん、と唸りながら奥へと引っ込んでいく。

数分して、戻ってきた店員は手伝いロボと共に幾つかの武器を抱えていた。


「面白い、と言えるかはわかりません。ですか、ピーキーだったり、限定的だったり、そんな感じの物をピックアップしました。これでも一部ですので、何かあれば申しつけていただければ」


店員は、十五個の武器をテーブルに置き、「失礼します」と一礼してロボットと一緒に下がっていった。

俺は武器を手に取る。武器の情報はそれを注視すれば、パネルに表示される。

オフにしていたこの機能をオンにすれば、この武器がどのようなものか表示される。


『訓練剣』

『正しい角度で斬るための訓練用に制作された剣。

無線式蛇腹剣の技術を使い、斬る角度が悪いと簡単にバラバラになるが、スイッチを押せば簡単に元に戻る』


使いづら。

この『街』でこんなの使うやついないだろ。

無線蛇腹剣の方が気になってきた。

あとで聞いておこう。

そんなことを思いながら別のを手に取る。


『鞘断』

『刀身が極限まで薄く作られた直刀。

その刃は、軽い物でもそれの自重のみで切断する。

極めて鋭く、しかし、極めて脆い。

刃以外に衝撃が加わると簡単に破損する。

自己修復の性能が悪く、刃こぼれ以上を修復できない。

刃に触れない構造の鞘以外では納めることができない』


使いづら。

性能は良いけど、達人以外に使えない。

『訓練剣』で練習しろってこと? そんな時間ないしな。面白いんだけどな。

まぁ買うだけ買っとくか。


他にも色々とあったけども、随分と使いづらい物ばかりだ。

『インファイトキャノン』とか『ブーメランサイス』とか、わざわざこれを使わなくてもいいと言うものばかりだ。

とはいえ、今テーブルにあるやつ全部買うけども。カモにされている気がするけども。

まあいいさ、こんな『街』にいるんだからトンチキな物を使わないと、遊びがなくなってしまう。


「これ全部買うぞ」

「ありがとうございます」


そう言って店員は一礼した。

武器は全部で一万ポイントだった。バカ安い。


そうして、俺は店を出た。

看板には『武器屋 売れ残り』と書いている。

売れ残り、売ってください

面白い武器、売ってます

というのがコンセプトらしい。

こう言う、わけわからない武器が存外効くのだ。

初見殺しになるけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る