見られたくない幽霊
天川裕司
見られたくない幽霊
タイトル:見られたくない幽霊
それは私がまだOLになってすぐの頃。
1人で公園横の道を歩いていた時、
猛烈な尿意に襲われ、
その公園の中にある公衆トイレに駆け込んだ時の事。
誰もいないと思って入ったトイレだったのに、
ボックスが全部閉まっていて開かない。
「な、なんでよ!なんで開かないの!?」
気配からして誰もいない。
誰もいないはずなのにボックスが全部閉まってる。
ガチャガチャ扉を開けようとしたのだが、
鍵は内側からかけられていたようで、
「…え?誰かいるの…?」
とその瞬間その意味で怖くなった。
でも人の気配はやはりしない。
仕方がないので隣の公園まで行き、
そこの公衆便所に入ってまた用を足そうとした。
「え??ここも!?」
ダメだ。そこも同じでボックスが全部閉まってる。
同じく人の気配はせず、
誰もいないのに勝手に扉が閉まっているのだ。
私はなんだか怖くなり、
したいのを何とか我慢して、
大急ぎで自宅アパートまで戻った。
「早く早く!!」
部屋に入ってすぐトイレに駆け込もうとした。
しかし!
「開いてよ!なんで開かないのよ!!」
自分の家のトイレなのに、
なぜか扉は硬く閉ざされてて開かない。
もう自然現象には勝てず、
とりあえず浴室に入ってそこで用を足した。
「ふう……」
心の底から力が抜ける快感を覚えつつ、
これまでの一連の流れを振り返り始める。
「一体何だったの…?」
誰もいないのにトイレのドアが
開かないなんて、そんなこと普通はありえない。
建て付けが悪かったにせよ、
公園をわざわざ変えてトイレに入ったのに
その両方とも扉が開かなかったのは絶対おかしい。
それに家のトイレのドアすら開かなかったのは…
そう考えているうち私は改めて怖くなってきた。
自宅のトイレはこの浴室のすぐ隣。
「あのトイレの中にもしかして何かいるの…?」
そんな不安と恐怖が強烈に漂い始める。
私には昔から霊感がある。
「だからかもしれない…」
なんて思いつつも、この謎の正体を暴きたい
衝動はどうにも抑えきれない。
そしてついに、自宅トイレのドアをバッと開けたところ…
トイレの流し用の水の霊「私は昨日、あなたに助けていただい…ちょっとお!!見ないでよおぉお!!!」
バタン!!!
ものすごい勢いで扉が閉まった。
ものすごい声だった。
「…………………」
霊感が強い人というのは得てして、
1人の霊に多少の期間をもって憑かれることがあるらしい。
私は少し前に、このトイレの精か霊か
よくわからない存在の彼女に、
やはり駆け込んだ公園の公衆トイレの中で会っていた。
「あの時からもしかして、私に取り憑いてたの?」
彼女はどうやら練習していたようだ。
自分の出方を。
幽霊でも見られたくない一瞬って、あるんだなぁと思った。
それから少しして、トイレのドアは普通に開くようになった。
それなりの練習の成果を得たのだろうか。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=bEXT5aOvVrY
見られたくない幽霊 天川裕司 @tenkawayuji
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