午後10時15分、僕は彼女のぬいぐるみになる

第16話 夏休みだね……

「こんばんは、いおりん。

　あのね、

　聞いてくれる？

　もうすぐ、夏休みなんだよね。

　学校が休みになるのは、

　嬉しいんだけど……

　……

　…………

　伊織君と会えなくなっちゃうのが、

　つらいんだよね。

　まぁ、

　家も近いから、

　すぐ会おうと思えば会えるんだけど……

　そのぉ……

　なんというか……

　きっかけが？

　会う理由がないじゃん？

　学校なら必ず会えるけど、

　休みだとそうはいかないでしょ？

　特に用事とかなないんだけど……

　顔を会わせないと、

　なんか、心配じゃん？

　どうしてるのかなーとか？

　なにしてるのかなーとか？

　元気にしてるかなーとか？

　別に、

　毎日会いたい、

　……ってわけじゃないけど、

　……

　その……

　朝だけとか……

　夜だけとか……

　時間は短くても、

　一日一回は会わないと、

　安心しないっていうのか……

　気になっちゃうよね。

　その……

　なんというのか……

　別に私が会いたいとかじゃなくて、

　生存確認！？

　みたいな！

　それに、

　私以外の友達とかと、

　会ってるのかな……とか？

　……他の女の子とか！？

　とにかく！

　顔を見ないと落ち着かないの！

　だって私たち……

　幼馴染みでしょ？

　家族みたいなもんだから、

　毎日顔を会わせないと、

　今までの日常が崩れちゃう、

　っていうか……

　なんでだろう……？

　今まで何度も、

　夏休みとか過ごしてきたのに、

　今回はなんだか……

　違うんだよね。

　今まで、どうしてたんだろう？

　……

　……小学校の時とかは？

　一緒にラジオ体操とか、

　行ってたっけ？

　学校のプール行ったり、

　公園に遊びに行ったり？

　してたかな？

　中学生の時は？

　図書館行ったり？

　受験勉強、一緒にしてた……

　……のかな？

　あぁ……

　どうしよう？

　もう私たち高校生だし。

　どうやって過ごせば、いいのかな？

　……

　…………

　いおりん？

　なにかいい方法とか？

　一緒に過ごす理由とか、

　なにかないかな？

　……

　…………

　え？

　伊織君の家に？

　直接、遊びに？

　そ、そんなこと！

　……え？

　エアコンが壊れたから、

　直るまで、

　部屋に入れてって？？

　そ、そんなことできないってば！

　だって！！

　小学生の時は、

　よく遊びには行ったけど！

　今は高校生だし！

　しかも、男の子の部屋に行くってことは！

　それは、そういうことをする理由で！！

　……って、

　……

　…………

　そんなつもりじゃないから！

　私と伊織君は！！

　……

　…………

　エアコンが……

　壊れたから……

　その手は……

　有りかも……」

　ぎゅ～～～っ！！

（……

　……え？？

　別に理由がなくても、

　会いたくなったら、

　来ればいいのに？

　まぁ……

　でも……

　僕から、誘ってみようか？）