第12話 声がね……

「ねぇ、


 聞いて聞いて!


 いおりん!


 伊織君、カッコよかったんだよ!


 今日ね、

 学校の現国の授業でね、

 伊織君が教科書を音読させられたんだけど、


 あのね、


 す~ごく!


 カッコよかったんだよ!


 文章読むの上手かったし、

 感情もこもってたし、

 なにより、声がきれいだし!


 先生も褒めてたんだよ!


 普段はあんまり喋らないんだけど、

 実はイケボなんだよね!


 まぁ~

 そんなことは~


 私は、

 昔っから、

 知ってましたけど~


 小学校の時からの付き合いだし~

 何度も伊織君が教科書、読むところ、

 聞いてたし~


 授業の後、女子たちが騒いでたけど、

『伊織君って、実はいい声してるんだね』

 って!


 今さら気づいたって、

 もう遅いよね!

 私の方が、ずっと前から知ってたんですからね!


 し・か・も……


 私はいつも帰り道で、

 伊織君の耽美なヴォイスを、

 独り占めして、

 堪能してるんですからねっ!!


 伊織君の声を聞いてると。

 落ち着くんだよね、

 優しくて、

 ゆっくりで……


 でも、今回のことで、

 他の人にもバレちゃったかな?


 本当は私だけの秘密に、

 しておきたかったんだけどね。


 あぁ……

 私ともっと、

 お話ししてくれればいいのに……


 今度、私だけに、

 本とか、読んでくれたら嬉しいな。


 いおりんも、喋れたらいいんだけどね。

 伊織君みたいな声で……


 そしたら、

 こうやって一緒に寝そべりながら……

 私に話しかけてくれれば……


 ……


 ……って、ちがうからね!


 べ、別に、

 伊織君と添い寝したい、

 とかじゃないからね!


 伊織君の声はカッコいいって話だから!


 今、話したことは無し!

 黙っててよ、いおりん!


 じゃあね!

 おやすみ!!」



 ぎゅ~~~っ!!



(……


 ……僕の声って、そんなに魅力的なの?


 ……っていうか、


 結衣ちゃんも、普段は無口なのに、


 こうなると、よく喋るよね。


 声も可愛いのに、


 もったいない……)



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