第10話 嘘ついちゃってね……

「こんばんは、いおりん。


 今日ね、


 伊織君にね、


 嘘ついちゃったんだ。


 今日も学校から一緒に帰ってたんだけど、

 なんか、あっという間に、

 家に着いちゃうんだよね。


 朝、一人で登校する時は、

 すごく長い距離のように感じるんだけど、

 帰りは同じ道なのに、

 すぐ着いちゃう気がするんだよね。


 不思議だよね。


 でね、もう少しでお別れって時に、

 なんか寂しくなっちゃって、

 とっさに、

『買い物したいから、コンビニ寄ってもいい?』

 って、伊織君に言っちゃったの!


 別に買いたいものなんて、なかったんだけどね。


 でね、そのまま二人でコンビニまで行ったんだ。


 私がね、

 今日発売した雑誌が欲しい、

 って言って、町中のコンビニ、

 探し回ったんだ。


 ……


 …………


 ……今日、発売日じゃないんだけどねっ。


 秘密だよ、いおりん。


 嘘だから、どこにも売ってるわけないじゃん?


 でも、二人で探し回ってね。


 伊織君、優しいから、

 最後まで一緒についてきてくれて……


 伊織君には、嘘ついちゃって、

 ごめんね、なんだけど……


 楽しかったなぁ……


 だからね、

 いつもよりも長く一緒にいられたんだよ。


 羨ましいでしょ?

 いおりん?


 でも最後は、

 悪いことしたな~

 って思って、

 伊織君にジュース買ってあげて、

 一緒に飲みながら帰ったんだよ。


 ほんのちょっとの時間だったけど、

 楽しかったぁ……


 また一緒に、

 学校帰りに寄り道とかして、

 遊びに行きたいなぁ~~


 そうだ!

 今度は、本当の雑誌の発売日に、

 また一緒に探しに行こうかな?


 楽しみだねっ!


 じゃあね、いおりん!

 おやすみなさい!」



 ぎゅ~~~っ!!



(……


 …………どうりで、


 どこ行っても売ってないわけだよ。


 別に寄り道くらいなら、

 言ってくれれば、

 どこでもいくらでも、

 付き合うけど……?)

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