第37話 三人との未来

「ふう、今日は色々な事があったなあ」



 帰り道、泰希と並びながら俺が独り言ちると、泰希はクスクス笑った。



「朝に好きを伝えられて、昼には一緒に食事して、部活でも一緒に作業してたわけだからな。傍目から見れば、既にラブラブなグループだぞ、お前達」

「男子達の嫉妬の視線が中々痛かったな。にしても、天鷲も白鷹も人に会うからって急いで帰っていったけど、誰と会うんだろうな」

「おやあ? なんだ気になるのか? 安心しろって、他の男のとこじゃないだろうからさ」

「そんなんじゃないって。というか、他の男って言うな」

「はいはい。けど、大丈夫だと思うぞ? 二人とともしっかりはしてるし、会ってる人だってちゃんとしてる人だよ」

「まあそうだろうけどな」



 答えながら俺は天鷲と白鷹の事を思い浮かべた。いつも元気でポワポワとした感じな天鷲と落ち着いていて努力家な白鷹。もちろん、俺が好きなのは夕希さんだけど、二人も魅力的な女の子なのは間違いない。そして昼の時にポツリと言ってしまっていた二人の料理を毎日食べられたら幸せだろうという言葉も本音だ。だけど、夕希さんという好きな相手がいながら天鷲と白鷹にも目を向けて、三人と今後もこんな関係を続けていきたいというのは明らかな甘えだ。



「難しいよな、色々」

「まあ、そんなもんさ。好きっていうのは」

「そうだな……」

「お前は結局どうしたいんだ? 姉ちゃんの事は好きだけど、天鷲と白鷹の気持ちはしっかりと受け止めたい。そして少しずつ魅力的にも思えてきてる。そんな感じなんだろ?」

「ああ。今朝、天鷲が白鷹と一緒に恋人になれたらって言ってただろ? そこに夕希さんも混ざれたらなとは思う。でも、お前が言ってたように世間はそういうのに対して冷たい目を向けてくるはずだ。俺はそういう目で見られてもいいけど、夕希さんや天鷲、白鷹の三人がそれで何か被害を被るのだけは本当に嫌だ。俺だけじゃ全てをどうにか出来るわけじゃないとわかってるからこそその決断にも踏み切れないし、夕希さんや天鷲達の気持ちもあるからさ」

「まあそうなるよな。まったく、ウチの姉ちゃんにぞっこんだと思ってたら、可愛い後輩に懐かれて少しいい気になりやがってさ」

「返す言葉もないよ」



 泰希は空を見上げていたが、やがてポツリと呟いた。



「まあでも、そういうのも嫌いじゃないぜ」

「え?」

「お前がそうしたいなら俺もしっかりサポートする。一人では無理でも二人なら何とかなる場合はあるだろ?」

「泰希……でも、どうしてそこまで」

「姉ちゃんの元気の源はお前だし、俺だってこれまでお前には色々支えてもらってきてる。そんなお前を放っておくなんて出来るかよ」

「……うん、本当にありがとう」

「どういたしまして」



 泰希がニッと笑いながら答えていた時、俺はふとある事を思い出した。



「そういえば、昼休みが終わる直前に白鷹から何か話しかけられてたけど、あれって何だったんだ?」

「ん? ああ、あれか。大したことじゃないし、私は秋田先輩の方が素敵だと思いますみたいなことを言われたわけでもないから安心しろよ」

「まあ大したことじゃないならいいけどさ」

「そうそう。さあ、後は楽しい話でもしながら帰ろうぜ」

「ああ」



 そして俺達は学校の事などについて話をしながら帰路に着いた。

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