第28話 幸せの時間

「はあ……気持ちいい。いいお湯だね、大和君」

「そ、そうですね……」



 一緒に湯船に浸かりながら俺は答える。現在の状況を振り返ると、まず俺はくしゃみを連発するほどに身体が冷えていた夕希さんに温まってもらうために風呂を沸かした。


 そして一時的な着替えとして母さんの服なども用意していたんだが、その時に夕希さんが一緒に入ろうと誘ってきたのだ。当然俺は驚いたし、断ろうとした。けれど、その時に俺もくしゃみをしてしまい、クスクス笑った後の夕希さんの風邪を引いてほしくないし、ただ一緒に入るだけだからという言葉に俺は葛藤し、遂に諦めて混浴をする事にした。


 もちろん、ただ入るだし、少しでも視覚的な刺激を抑えるためにテレビの撮影みたいにお互いにタオルを巻いての混浴だが、それでもやっぱり夕希さんの綺麗な肌やしっかりと見えてしまっているボディラインは思春期の欲求を刺激するには十分すぎる程であり、興奮しているのがばれないように俺は細心の注意を払っていた。



「なんかこうしてると、泰希をお風呂に入れてた時の事を思い出すよ」

「小さい頃の話ですね」

「うん。今では泰希も色々と生意気になっちゃって……この前だって下着の画像を大和君に送ったでしょ?」

「あ、はい。でも、あれは残してませんよ。それは……一度保存はしましたけど、やっぱり他所にバレると色々とよくないので電話終わった後に消しました」

「そっか……ふふ、やっぱり大和君は偉いなあ。よしよし」



 夕希さんは俺の頭を撫でてくる。ツルツルの腕と腋が見えて俺は更にドキドキしていたが、それでも夕希さんからのナデナデは心地よく、心の奥からもポカポカしていた。



「はあ……こんな大和君だから私も好きになったんだよなあ」

「夕希さん……」

「本当の事を言えば、やっぱり色々とやりたいし、このまま付き合いたい。でも、たしか大和君には仲良くしてる女の子がいるんだよね?」

「向こうから懐いてもらってるだけですけどね。でも、あの二人との件を解決せずに夕希さんと付き合うというのはやっぱり不誠実だと思います。なんなら二人にはアクセサリーも贈ってしまってますから。意味がある事を知らなかったとはいえ」

「まあ女の子からしたら気になってたり好きだったりする男の子からアクセサリーなんて贈られたらより意識しちゃうよ。だから、そういう行動は今後は控えなね?」



 俺は頷く。



「はい。なので、しっかりと解決をして、その後に俺から夕希さんに交際を申し込みます」

「うん、待ってるね。でも、あと二年待たないといけないこともあるなあ」

「二年?」

「さっき出来なかったエッチなこと」

「あ……」

「だから、大和君が二十歳になったら、成人したらその時には初めてを貰うね。二年も待たせるんだから覚悟しておいてほしいし、今後は好きも隠さないからスキンシップとかも多めにいくからね?」

「は、はい……」



 夕希さんがクスクス笑う姿を見ながらやっぱり攻められると自分は弱いんだなと感じた。けれど、幸せな気持ちなのは変わらない。好きな人から好きだと言ってもらえて、こうして二人きりの時間を共有出来ているのだから。そうして俺達はしばらくの間色々と話をしながら幸せの時間を楽しんだ。

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