第15話 二つの誘い
土曜日、特にこれといった予定もなく朝から勉強をしていた時、机の上に置いていた携帯がブルブルと震えた。
昨夜の件もあったので一瞬びくりとしてしまったが、画面を見るとそこには天鷲の名前が表示されており、安心半分残念半分といった感じで俺は電話に出た。
「もしもし……」
『あっ、柴代先輩! えへへ、おはようございますー』
「ああ、おはよう。どうした?」
『午後に陽海ちゃんと遊ぶ約束をしているんですが、柴代先輩も誘いたいな~と思ったんです』
「白鷹にはもう言ったのか?」
『はい! 陽海ちゃんも柴代先輩ならいいよっていってくれたので!』
「そうか……」
正直、夕希さんを好きな中で俺の事を好きかもしれない女の子達と出掛けるのは少し気が引けた。気持ちが揺らぐとは思っていないが、昨日の件で少しは女の子として意識はしているので、天鷲の無自覚のスキンシップや白鷹のちょっとした言葉でドキドキする可能性はあるのだ。ただ、せっかくの誘いではあるし、異性の目から見た様々な感想は欲しいところだ。
「わかった。せっかくのお誘いだしな」
『わあ、ありがとうございますー!』
「どういたしまして。どんな風に遊ぶのか予定は決めてるのか?」
『えっと、ファミレスでご飯を食べた後はのんびりとお散歩をしながらお買い物をしたいなと思ってます』
「そうか。それじゃあ昼前にファミレスの前にいればいい感じだな」
『はい! よろしくお願いします!』
元気の良い天鷲の言葉にクスクス笑った後、俺達は電話を終え、俺は携帯を置こうとした。すると、その前に夕希さんからも着信が入り、俺はすぐにその電話に出た。
「も、もしもし!」
『もしもし。しば君、今大丈夫だったかな?』
「あ、はい! 午後は予定がありますけど、今なら大丈夫です!」
『あ、そうなんだね。泰希からはなにも聞いてないけど、他の友達?』
「友達というか部活の後輩です。さっき誘われたので」
『……もしかして、女の子?』
夕希さんの声が少し低くなる。それに驚き、少しおどおどし始めると、電話の向こうで吹き出したような笑いが聞こえてきた。
『しば君ったら怖がらなくていいよ。しば君が女の子と出掛けようとしば君の自由だから』
「といっても、本当にただの後輩ですけどね」
『でも、向こうはどう思ってるだろうね。週末に異性の先輩を誘うなんて好意がなきゃ中々しないよ』
「夕希さんもそう思いますか……」
『そりゃあね。それでなんだけど、明日は暇かな?』
「はい、泰希とも約束はないです」
『だったら、明日は空けておいてくれると嬉しいな。私、しば君とデートしたいから』
「で、でー……!?」
突然の言葉に頭がバグる。すると、電話の向こうからとても愉快そうな笑い声が聞こえてくる。
『あははっ! デートとは言ったけど、この前みたいに少し気分転換に付き合って欲しいだけだよ』
「そ、そうですか……でも、嬉しいです。絶対に空けておきますね」
『うん、よろしくね。それじゃあお出掛け、楽しんでおいで』
「はい!」
電話が切れると、俺は今にも飛んでいきそうな程に幸せな気持ちを感じた。気分転換の外出とはいえ、夕希さんとのデートなのだから。
「……けど、今は天鷲達との外出に集中だな。せっかく誘ってくれたのに他の人との予定で浮わついていてはやっぱり失礼だからな」
うんうんと頷いた後、俺は勉強道具を片付け、午後の外出の準備を始めた。
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