第55話 村の依頼

リディアがルーク達と別れ、クレストの街へ戻ると、夕暮れの太陽が街並みを黄金色に染めていた。街の住人たちは彼を見て笑顔を浮かべ、挨拶を交わした。リディアはこの街の雰囲気が好ましく、心が温かくなるのを感じた。




 宿屋の前に立つと、リディアは深呼吸をしてからドアを開けた。中に入ると、暖かい光が彼を迎え入れた。リディアはまっすぐにセバスの部屋へ向かった。




「セバス、調子はどうだい?」リディアが部屋に入ると、セバスはベッドに横たわっていた。まだ完全には回復していないが、以前よりも元気そうだった。




「リディア様、ありがとうございます。少しずつですが、良くなってきています」とセバスは微笑んで答えた。




「それは良かった。早く元気になって、また一緒に冒険に出かけよう」とリディアは優しく言った。




 その時、エレンとフェンが部屋に入ってきた。エレンはリディアに微笑みかけ、フェンは興奮した様子で話しかけた。「リディア、ウルフ討伐の依頼が来てるにゃ!」




 リディアは少し驚いたが、すぐに表情を引き締めた。「どこからの依頼なんだ?」




 エレンが地図を広げながら説明した。「近くの村からの依頼よ。最近、ウルフの群れが出没して困っているそうなの。」




「わかった。エレン、フェン、今回は3人で討伐へ行こう。ウルフ程度であれば余裕でしょ。セバス、今回は無理しなくて良いから休んでいな。」




「そうにゃ。セバスはまず体を完全に治すことが大切にゃ。」




 セバスは申し訳なさそうに「エレン様。今回は申し訳ありませんが休養しておきます。リディア様、エレン様をおまかせいたします」




「わかったよ、セバス」




「えぇ、リディアさんにいつも以上に守ってもらうから大丈夫よ」




「よし、じゃあ準備を整えて出発しよう」とリディアは決意を込めて言った。




 次の朝、ギルドへ行き手続きを済ませてからリディアたちは村を出発し、ウルフが出没して困っている村へ向かった。街道を歩いていった。道中、エレンとリディアの会話が自然に弾んだ。




「リディア、村で女性に色目を使わないようにするにゃ」




「えっ、他の女性ですか?」




(あれ?なんか寒くなってきたような…。)




「いやいや、なに言っているだよフェン。ふざけるなよな!!」




「にゃはははっ!!冗談にゃ。そんなに怒らないで欲しいにゃ」




(あれ?やっぱり寒くないか…。気のせいか?)リディアは笑いながら「まったく仕方がないやつだな」




 やがて、村の入り口にたどり着いた。村の入口で、ギルドで受け取った証書を見せ村長の所へ案内してもらった。




 畑や家畜を狙うウルフの討伐で、数頭で襲ってくるそうだ。数はそんなにいないようなので、このまま夜まで家畜が飼われている場所で待機して殲滅していくことにする。




 夕方まで時間があるため、3人で宿屋に行き食事をとることにした。




 夕方になり、家畜がいる所へ3人行き作戦を考える。そこは夕方でも薄暗く、静かな空気が漂っていた。リディアたちは警戒しながら進んでいった。




「ウルフの痕跡があるわ。気をつけて」とエレンが警告すると、全員が武器を構えた。その時、草むらからウルフの咆哮が聞こえてきた。




「来たか…みんな、準備はいいか?」リディアが声をかけると、全員が頷いた。




 突然、数匹のウルフが飛び出してきた。リディアは剣を抜き、素早く一匹を倒した。エレンは魔法を使い、遠距離からウルフを攻撃した。フェンは素早い動きでウルフの背後に回り込み、的確な攻撃を繰り出した。




 戦闘は激しさを増し、ウルフたちは次々と襲いかかってきた。リディアは冷静に状況を見極めながら、的確な指示を出した。「エレン、右側のウルフを頼む!フェン、左側から回り込んで!」




 エレンは指示に従い、右側のウルフに強力な魔法を放った。「フレイム・バースト!」炎がウルフを包み込み、苦しそうな咆哮が響いた。フェンはリディアの指示通りに左側から回り込み、ウルフを倒した。




「リディア、後ろ!」セバスが叫んだ瞬間、リディアは振り向いてウルフの攻撃をかわした。そして、そのウルフを一閃で斬り倒した。




 戦闘は続き、ウルフの数は次第に減っていった。リディアたちの連携が見事に決まり、最後の一匹を倒した時、全員が深いため息をついた。




「みんな、お疲れ様。無事に討伐できて良かった」とリディアが感謝の言葉を述べると、エレンが微笑んだ。「リディアさん、あなたの指示が的確だったからよ。」




 フェンも「リディア、エレン様、お疲れ様にゃ」と言い、エレンも「皆さん、本当にお疲れ様でした」と感謝の意を示した。




 リディアたちは討伐の報告をするために、依頼を受けた村へと戻った。村の住人たちは彼らの討伐を喜び、感謝の言葉を述べた。




「また何かあったら、いつでも頼んでくれ」とリディアが言うと、住人たちは感謝の意を込めて頷いた。




 帰り道、エレンはリディアの隣で歩きながら、「リディアさん、今回の依頼も無事に終わりましたね」と優しく言った。リディアはその言葉に力強く頷き、「そうだな。これからもサポートよろしく頼む」と答えた。




 フェンは二人のやり取りを見て、「にゃー、二人とも本当にいいコンビにゃ」と微笑んだ。




 こうして、リディアたちは新たな絆を深めながら、次の冒険へと向かっていった。彼らの絆はますます強まり、新たな挑戦に立ち向かう準備が整ったのであった。

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