第42話

第42話 迷宮の謎と試練その2




 リディア、エレン、フェンの三人は真ん中の扉を選び、三回ノックして進んだ。扉がゆっくりと開くと、彼らは一歩一歩慎重にその先へ進んでいった。しかし、突然、足元の床が崩れ、三人は暗闇の中へと強制的に落とされた。




 地下に着地すると、周囲はひどくぬかるんでおり、ところどころに紫色をした猛毒の池が広がっていた。薄暗い環境に加え、空気は重く、毒々しい臭いが漂っている。リディアたちは、しばらくの間、自分たちがどこに落ちたのか理解できずに戸惑っていた。




「ふぅ、少なくとも入り口に戻らなかっただけでもよかった。」リディアは深い息をつきながら安堵した表情を見せた。




「ここは…地下か?」リディアは辺りを見渡しながら呟いた。




「まるで罠だらけの場所ですね。」エレンが周囲を警戒しながら言った。




「気をつけるにゃ、ここは危険がいっぱいにゃ。」フェンも慎重に歩を進めた。




 リディアは猛毒耐性を持っているため、前方を歩きながら道を確認して進んだ。ぬかるんだ地面に足を取られないように注意し、毒の池を避けながら進んでいく。しばらく進むと、前方に小さな影が見えた。




「さっきの妖精…?」リディアは近づいて確認した。そこには、先ほど出会った妖精が蜘蛛の糸に絡まってもがいていた。




「どうしたんだ、妖精?」リディアが声をかけると、妖精は顔を上げて答えた。




「私はシグルって名前があるんだ。シグルって呼びな。」




「分かった、シグル。君を助けるよ。」リディアは慎重に糸を切り、シグルを助け出した。




「ありがとう、リディア。」シグルは感謝の意を示しながら続けた。「実は、情けないことに迷宮の魔物たちに捕まってしまったんだ。」




「そんな中でも助けてくれてありがとう。君の誠実さに心を動かされたよ。案内役を買って出るから、一緒に進もう。」シグルは決意を示した。




「助かるよ、シグル。どうやってこの猛毒の沼を超えればいい?」リディアが尋ねた。




「この道を進んで、左に曲がると安全な道がある。私が案内するよ。」シグルは翼を広げて先導を始めた。




 リディアたちはシグルの案内に従い、幻覚の通路に足を踏み入れた。進む道は、まるで生きているかのように変化し続けていた。時折、道だと思って踏み出すと、突然足元が崩れ、奈落の底に落ちそうになる。しかし、シグルの警告がなければ、彼らはその罠に何度も引っかかっていたに違いない。




「この道は…?」エレンが足を止め、目の前の地面を見つめた。そこには広い空間が広がっており、見た目は安定した道のようだった。しかし、シグルが立ち止まらせた。「その道は偽りだ。進むと奈落の底に落ちる。」シグルが指をさして警告した。




 リディアは慎重に一歩踏み出し、確かめた。「本当だ、これはただの幻だ…。」




 次に彼らは狭い通路に差し掛かった。そこには深い裂け目があり、一見すると渡るのは不可能に見えた。しかし、シグルは再び警告した。「この裂け目は幻覚だ。実際には道が続いている。」




 リディアは息を飲み、「本当にそうなのか…?」と不安げに足を踏み出した。彼女の足は何もない空中を歩くように見えたが、実際にはしっかりとした地面があった。




「これが幻覚の道…私たちを惑わせようとしてるにゃ。」フェンが呟いた。




 さらに進むと、彼らはまたもや広い空間に出くわした。今度は道が続いているように見えたが、シグルは再び警告した。「この道も偽りだ。注意しろ。」




 リディアたちは慎重に進み、足元を確かめながら進んだ。「この迷宮は本当に手強いな…。」リディアが呟いた。




 通路の先には、再び広がる暗闇が待ち受けていた。シグルは「暗闇の道を選んで。光の道は罠だ。」と自信を持って言った。リディアたちはシグルを信じ、暗闇の道へと進んだ。数歩進むと、暗闇は薄れ、正しい道が現れた。




 道中、彼らは突然現れる幻影や、足元から現れるトラップに何度も遭遇した。フェンが注意深く周囲を観察し、危険を察知するたびに彼らは立ち止まり、新たな道を探し出した。




「この通路には、我々の心を挫こうとする罠がたくさん仕掛けられている。心を強く持つんだ。」シグルの言葉が彼らの心に響いた。




 ようやく、彼らは幻覚の通路の出口にたどり着いた。出口から見える景色は、次の試練の舞台となる場所だった。「ここからが本当の試練だ。覚悟を決めて進もう。」リディアの言葉に、エレンとフェンも頷き、三人は次の試練に向かって進んでいった。




 迷宮の中で繰り広げられる試練は厳しく、彼らの精神と肉体を試すものだった。しかし、彼らの心にはセバスを救うという強い決意があり、その決意が彼らを支え続けた。どんな困難が待ち受けていようとも、彼らは前に進み続ける覚悟だった。




 リディアたちは迷宮を進む途中、様々な罠や困難に直面していた。突然、彼らは遠くからかすかな助けを求める声を耳にした。




「助けて…誰か…」その声はか細く、しかし力強さも感じさせるものだった。




「誰かが助けを求めている。行ってみよう。」リディアは声のする方向へと足を向けた。エレンとフェンもすぐに後に続いた。




 迷宮の奥へと進むと、彼らは大きな檻に囚われたライオン型の獣を見つけた。力強くも優しい目をしたその獣は、トラップにかかって身動きが取れない状態だった。獣はリディアたちに気づき、再び助けを求める声を上げた。




「おい、君たち!助けてくれ!この檻から出してくれ!」獣は必死に訴えた。




 リディアは檻に近づき、その獣の顔をじっと見つめた。「大丈夫、私たちが助けるわ。名前は?」




 獣は少し驚いたように目を瞬かせた後、答えた。「私の名はルド。ありがとう、あなたの名前は?」




 リディアは微笑んで答えた。「私はリディア。この二人はエレンとフェン。私たちは仲間を救うためにここに来たんだ。助けが必要なら、私達手伝うよ。」




 ルドは安堵の表情を浮かべ、「リディア、エレン、フェン。ありがとう。本当に感謝する。ここから出してくれたら、僕も君たちの助けになりたい。」と言った。




 リディアは頷き、「任せて、ルド。今すぐに檻を開けるから、一緒に行こう。」と答え、エレンとフェンと共に檻を開ける準備を始めた。




 リディアはエレンとフェンに向き直り、「どうやってこの檻を開けようか。フェン、何か良い案は?」




 フェンは周囲を見回し、檻の鍵を探した。「にゃ、鍵はないみたいだけど、魔法で壊せるかもしれないにゃ。」




 エレンは魔法の杖を取り出し、慎重に呪文を唱え始めた。「開錠の魔法で試してみるわ。」杖から放たれた光が檻に触れると、ガシャンという音とともに檻が開いた。




「やった!成功だわ。」エレンが喜びの声を上げると、ルドは感謝の表情を浮かべて檻から出てきた。




「ありがとう、ありがとう。本当に助かったよ。恩に報いるために、君たちに協力させてほしい。」ルドは深く頭を下げた。




 リディアは微笑んで、「もちろん、ルド。私たちは仲間のセバスを救うためにこの迷宮を進んでいる。君の力を借りられるなら心強いよ。」




 ルドは頷き、「友人を救うためというなら、私も全力を尽くすよ。この迷宮には様々な危険が待ち受けているが、私も君たちと一緒に戦おう。」




「ありがとう、ルド。共に力を合わせて進もう。」リディアはルドの強力な助けに感謝し、仲間として迎え入れた。




 旅を再開すると、ルドの存在はすぐに心強いと実感できた。彼の鋭い嗅覚と聴覚は罠や敵の存在を察知するのに役立ち、またその力強い体は物理的な障害を突破するのに大いに貢献した。




「ルド、君の力が加わって本当に助かるわ。こんなに力強い仲間がいれば、セバスを救う道も開けてくるに違いない。」リディアは進む道を見据えながら言った。




「私も君たちと一緒にいられて嬉しいよ。これからも一緒に頑張ろう。」ルドは誓うように言った。




 エレンはふと疑問を抱き、「ところで、ルド。どうしてここに捕まっていたの?」




 ルドは少しの間考えた後、答えた。「実は、私の子供が何者かに連れ去られてしまってね。それを追いかけるうちにここまでたどり着いたんだ。でも、不意を突かれて罠にかかってしまった。」




 フェンはその話に驚きながらも頷き、「それなら、力を合わせて進もうにゃ。何が待ち受けていても、私たちなら乗り越えられるはずだにゃ。」




 リディアも力強く同意し、「ルド、君の力が加わるなら心強い。共に進んで、真相を突き止めよう。」




 その時、シグルが反対の声を上げた。「待ってくれ、リディア。この獣を連れて行くのは危険だ。彼が狙われるかもしれないし、我々の足手まといになるかもしれない。」




 ルドは悲しそうな顔で言った。「私は子供を救いたいだけだ。君たちに迷惑をかけるつもりはない…」




 リディアはシグルに向かって深く息を吸い込みながら話し始めた。「シグル、ルドの助けが必要だ。彼は自分の子どもを救うためにここにいる。その愛情と決意は我々の力になる。私たちもセバスを助けにこの地に来たのだから、彼の気持ちがわかる。」




 リディアは続けた。「我々も同じ目的を持っている。彼の力があれば、任務はさらに成功の可能性が高まる。彼を信じて一緒に進もう。」




 シグルは一瞬ためらったが、リディアの決意を見て納得した。「わかったよ、リディア。君の判断を信じよう。共に進むことにする。」




 三人と二匹は再び前進を始めた。ルドの加入によって、チームの結束はさらに強まり、彼らの冒険は新たなステージへと進んでいった。

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