第36話 防衛線 その2

第36話: 防衛線 その2




 リディアたちは敵の軍勢に立ち向かうため、前線で戦闘を開始した。街の外れで彼らはそれぞれの戦術を駆使して、迫りくる悪魔の大軍を迎え撃った。




「皆、準備はいいか?」リディアはサクラとルークへ呼びかけた。




『マスター。いつでも大丈夫です』ノエルの声が優しく響いた。




「よし、サクラ、シャドウヴェノムストームを放て!」




 サクラは巨大な体を揺らしながら、口を大きく開けた。「ジュラ~っ!!」




 そこから暗黒の雲が渦を巻き始め、猛毒のハリケーンが生まれた。シャドウヴェノムストームは空を覆い、猛毒の嵐が悪魔の空中部隊や地上部隊に降り注いだ。悪魔たちは次々と倒れていった。




「ルーク、次は君だ!」




 ルークはスライムから人型へ形を変え、魔力で作成した弓を構え、光線のような光魔法を放った。それはまるで一筋の光が悪魔たちを貫くかのように、まっすぐに飛んでいった。次に彼は手を広げ、左手で風魔法の準備をし、右手でなんでも溶かす液体を霧状に変えた。その霧が左手の風魔法に乗って広がり、悪魔たちを溶かしていく。




 リディアもまた、自分の役割を果たす時が来た。リディアは魔法弾を44口径のマグナム弾へアップグレードし、次々と連射で遠距離の敵を倒していった。彼の正確な射撃によって、多くの悪魔が倒れていった。




 序盤は順調に進んでいた。リディアたちは連携を取りながら、押し寄せる悪魔の大軍を次々と打ち倒していった。しかし、戦いが進むにつれて、徐々に強い悪魔が現れ始めた。




『マスター。気を付けてください。より強力な敵が近づいています』ノエルがリディアへ警告をした。




 サクラはシャドウヴェノムストームで空と地上の敵を倒し続け、ルークは光魔法と風魔法を駆使して敵を削っていった。しかし、それでも強力な悪魔たちはリディアたちの防衛線を突破し始めた。




 リディアは、次々と現れる強力な悪魔たちに対して、仲間たちと共に奮闘した。彼の魔法弾は、一発一発が強力な破壊力を持ち、遠距離からの攻撃で多くの敵を撃退していった。しかし、敵の数は減るどころか、ますます増えていくばかりだった。




「これはまずいな……」リディアはつぶやいた。その時、彼の目の前に一際大きな影が現れた。ボスらしき悪魔が、その恐ろしい姿を見せたのだ。




 その悪魔は他の悪魔とは異なり、圧倒的な存在感を放っていた。リディアはその姿を見て、直感的にこの敵を倒さなければならないと感じた。




「サクラ、ルーク、俺はあいつの相手をする。雑魚はまかせた。できるだけ倒してくれ。頼む!」リディアは仲間たちに指示を出した。




 サクラは頷き、「ジュラ~っ!!」と応え、再び猛毒の嵐を巻き起こした。




 ルークも同様に、「主、わかった。」と言い、風魔法と光魔法を駆使して悪魔たちを撃退し続けた。




 リディアは深呼吸をして、目の前のボス悪魔に向かって歩みを進めた。「ここで止める。これ以上は一歩も通さない!」




 リディアは仲間たちに指示を出し、ついに一人でボスとの一騎打ちに挑んだ。周囲には倒した悪魔の死骸が転がり、血と土の匂いが立ち込める。ボス悪魔は坊主頭に青い皮膚、大きな角が一つ生え、翼を持つ人型の姿をしていた。




 リディアはミスリルの剣を中段に構え、剣を横にしながら走り出した。サクラが放ったシャドウヴェノムストームが戦闘開始の合図となり、リディアは一気に距離を詰めた。




 ボス悪魔は右手を天に伸ばし、強力な風魔法を発動させた。その突風がリディアに向かって放たれる。リディアは瞬時にスライディングし、風の刃をかわしながら相手に近づいた。そして、剣に炎をエンチャントし、全力で切りつけた。




 剣は悪魔の皮膚を浅く裂いただけだったが、炎との相性が悪かったのか、予想以上のダメージを与えた。ボスの体が一瞬揺らぎ、苦痛の表情を浮かべた。しかし、リディアも体勢を崩してしまい、すぐにボス悪魔が右足で蹴り飛ばしてきた。




「うわっ!」リディアは吹き飛ばされながらも、瞬時に冷静さを取り戻し、防壁を展開した。ボス悪魔は飛ばされたリディアの方向にアイスランスを数発放った。鋭い氷の槍が空を切り裂き、リディアに向かって飛んできた。リディアはすぐに防壁を作り出し、アイスランスを防いだ。




「くっ、しぶといな!」リディアは歯を食いしばりながら呟いた。




 ボス悪魔はその隙を逃さず、突進してリディアを蹴り上げた。リディアは宙に舞い上がり、次の瞬間、ボス悪魔がジャンプして両手でリディアを地面に叩きつけた。衝撃波が広がり、大地が揺れ動いた。




「ぐっ…!」リディアは口から血を吹き出したが、常にリジェネを発動させているため、傷はすぐに回復していった。口にたまった血をペッと地面に吐き出し、再び立ち上がった。




「まだまだ終わらせない!」リディアは再び剣を構え、ボス悪魔に向かって突進した。




 ボス悪魔は闇魔法を発動させ、闇の触手を生み出してリディアを捕らえようとした。しかし、リディアはその動きを読み、触手をかわしながら接近した。そして、剣に光魔法をエンチャントし、ボスの胸に突き刺した。




「ぐわぁぁぁ!」ボス悪魔は苦しみの叫びを上げ、後退した。しかし、リディアは追撃の手を緩めず、さらに一歩前進した。




 ボス悪魔は再び風魔法を発動させ、リディアに向かって強力な突風を送り出した。突風が巻き上がり、砂埃が舞う中、リディアは瞬時に判断を下した。右手を高く掲げ、その周囲に小さな旋風を作り出した。その旋風は次第に大きくなり、リディアの右手を覆うように強力なサイクロンへと成長した。




 サイクロンが発生し、風の勢いが互いにぶつかり合うと、ボス悪魔は一瞬怯んだ。その隙を見逃さず、リディアは高く飛び上がり、目を眩ませるための強力な光魔法「LED」を発動した。強烈な閃光が爆発的に広がり、辺り一面を白い光で包み込んだ。




「ぐあっ!」ボス悪魔は光に目をくらまされ、視界を失った。




「これで終わりだ!」リディアは右腕に纏った風の旋風をさらに強化し、そのままアッパーを放った。風の力を纏った拳がボスの顎に直撃し、ボスの顎が砕ける音が響いた。ボス悪魔は悲鳴を上げ、後退しようとしたが、リディアはその隙を逃さず、再び魔法弾を連射した。




「しぶとい…でも、ここで終わらせる!」リディアは全身の力を込めて44口径タイプの魔法弾を放ち続けた。




 魔法弾がボスの胸を次々と貫通し、その命を完全に断ち切った。ボス悪魔は力なく倒れ、二度と立ち上がることはなかった。




 リディアは深く息をつき、仲間たちの無事を確認するために振り返った。「やったぞぉ、ボスを倒し…。」




 言い終える前にリディアも気を失った。




『▼経験値が一定量に達しました。レベルアップします。一定のレベルにも達したので進化可能です』




 気を失ったリディアの頭の中に天の声が響いた。




 リディアの体は薄緑色の光に包まれ、リジェネの効果で傷が徐々に回復していく様子が見えた。サクラとルークも駆け寄り、リディアを支えながらその様子を見守った。




「主、お疲れ様。主のおかげで勝てたよ。」ルークがリディアの顔を見つめながら呟いた。




「ジュラ~♪」サクラもリディアのそばで静かに鳴いた。




 二人はリディアの安全を確保するために周囲を見張り、警戒を怠らなかった。リディアが回復するまで、彼らはその場を離れず、主の安全を守り続けた。




 こうして、リディアたちは激しい戦闘を乗り越え、ボス戦に勝利を収めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る