第35話 防衛戦 その1

第35話: 防衛戦 その1




 街づくりが順調に進む中、リディアたちは日常の中で忙しく動き回っていた。新しい無線システムが街中に広まり、住民たちは情報を共有し合いながら安心して生活していた。リディアは日々、街の様々な場所を巡り、住民たちの笑顔と平和な生活に満足していた。しかし、その静かな日常が突然、崩れ去った。




 突然、リディアに緊急の知らせが入った。巡回していたハーピーが急報を持ち帰ってきた。「モンターニャの森の奥から悪魔族が攻めてきます!」その言葉に、リディアの顔は一瞬で緊張に包まれた。知らせを聞いた瞬間、リディアの胸は激しく鼓動し、冷たい緊張が全身を走った。これは訓練ではなく、現実の脅威だった。




 リディアはすぐに仲間たちを集め、緊急会議を開いた。会議室にはリディア、リリィ、ロゼッタ、ルミナ、バルド、セリーナ、シャドーが集まり、皆、緊張と不安を抱えた表情を浮かべていた。




「この攻撃の理由はわかっているの?」リリィが不安げに尋ねた。その声には震えが混じっていた。




 リディアは深呼吸して冷静さを保ちながら答えた。「推測だが、考えられる原因は二つある。一つは、森の減少や魔物の減少で、彼らのテリトリーを侵してしまった可能性。もう一つは、私たちが大きな脅威となる前に潰してしまおうというもの。どちらかだろうな。」




 ロゼッタが冷静にメモを取りながら言った。「なるほど。後者の原因の方が有力そうですね。」




 ノエルがリディアの心の中でアドバイスを送る。『マスター、まずは守りを固めることが重要です。誰がどの役割を担うのかを決めましょう。』




 リディアは全員の表情を一瞥し、続けた。「皆、まずは街への侵入を防ぐために守りを固めることが重要だ。ただし、籠城は援軍が来る前提の守り方だから、基本的には打って出るつもりだ。幸い、まだ到着までに1日はかかるようだから、守る部隊の配置をお願いする。リリィとロゼッタ、防御の指示を出して、住民たちができるだけ門の近くで迎え撃てるように配置を頼む。」




 リリィは力強く答えた。「わかりましたの、リディア様!すぐに手配しますの!!」彼女の声には震えがあったが、その目には強い決意が宿っていた。




 ロゼッタも冷静に、「承知しました。住民たちへ迅速に指示を伝えます。」と答えた。その筆先も力強く動いていた。




 リディアはさらに続けた。「ルミナ、君は深手を負った者たちの回復を担当してほしい。特に重傷者には優先的に回復魔法をかけてくれ。」




 ルミナは優しい微笑みを浮かべて、「任せておくんなんし。みんなをしっかりサポートしんす」その笑顔は、周囲に安らぎを与えるようだった。




「バルド、セリーナ、シャドー、君たちは前線での戦闘を担当してもらう。シャドーは敵を弱体化させる魔法を使ってくれ。バルドとセリーナは攻撃と防御を兼ね備えて戦ってくれ。」




 バルドが力強く、「承知した、リディア様。全力で守る。」と答えた。その眼差しは鋼のように固かった。




 セリーナも頷き、「承知しました。私の力を存分に使います。」と答えた。彼女の瞳には、決意の炎が宿っていた。




 シャドーは微笑んで、「任せておいて、ありんす。」その微笑みは、不気味なほどに自信に満ちていた。




 リディアは続けて、「街の近くにはソフィアとエンシャントスパイダーを使って、落とし穴などの罠を仕掛けておこう。これで敵の進行を遅らせる。ソフィアには後で誰かが伝えてくれ。」




 ノエルがリディアの心の中でアドバイスを送る。『マスター、皆に役割を明確に伝え、戦略をしっかりと共有することが重要です。』




 リディアは全員を見渡して言った。「皆、それぞれの役割を果たして、この街を守ろう。無理をせず、深手を負った場合はすぐに回復陣まで引いてくれ。」




 全員が頷き、リディアの指示に従う決意を固めた。リディアは深呼吸をし、最後の指示を出した。「私、サクラ、ルークは突っ込む。反対されるかもしれないが、家族が傷つけられたくないからこれだけは譲れない。」




 リリィが心配そうに、「でも、リディア様、あなたが最前線に立つのは危険すぎるの。」




 リディアは微笑んで、「心配しないで、リリィ。私が最前線に立つ。これが私の役目だ。」




 ノエルも心の中で、『マスター、あなたならできる。皆を信じて戦ってください。』と励ました。




 リディアは皆を見回し、決意を新たにした。「さあ、準備を始めよう。私たちの街を守るために全力を尽くそう!」












 リディアたちはそれぞれの役割に従って動き始めた。リリィとロゼッタは街の住民たちに防衛の指示を出し、門の近くで迎え撃つ準備を進めた。ゴブリンやコボルトたちも5人一組で編成され、守備を固める。




「皆、注意して聞いてほしいの。私たちはこの街を守るために戦うの!無理をせず、深手を負った場合はすぐに回復陣まで引いて欲しいの!」リリィの声が街中に響き渡った。




 ロゼッタが続けて指示を出す。「ゴブリン、コボルトの皆さんは5人一組で行動してください。攻撃側も守備側も、それぞれの持ち場を守りながら戦いましょう。連携をしっかりと取ることが重要です。」




 一方、ルミナは回復陣の作成に取り掛かっていた。彼女は街の各所に回復陣を配置し、その場所を全体に知らせるための指示を出していた。「回復陣はこのマップに示された場所に設置しました。深手を負ったら迷わずここに引き上げてください。安心して治療を受けられるように整えましたわ。」




 バルドとセリーナは武器と防具の最終チェックをし、戦闘に備えていた。シャドーは自らの魔力を高め、敵を弱体化させる呪文の準備を進めていた。




「リディア様、私は前線で皆をサポートします。何があっても守り抜きます。」バルドが決意を込めて言った。




「うちも全力で戦う。リディア様、どうかお気をつけて。」セリーナが微笑んで言った。




 リディアは彼らに感謝の気持ちを込めて頷いた。「ありがとう、皆。私たちの力を合わせれば、必ずこの街を守り抜ける。」




 さらに、リディアは遠距離の魔法攻撃部隊にも指示を出すことにした。街の守りを固めるためには、遠距離からの支援が不可欠だった。「遠距離魔法攻撃部隊、配置についてはロゼッタが指揮をとります。高台に位置し、敵の動きを見ながら適宜攻撃を行ってください。」




 ロゼッタが頷いて指示を出した。「遠距離魔法攻撃部隊は城壁の上と高台に配置します。視界が良好な場所を選び、敵の侵攻に合わせて攻撃を行いましょう。連携をしっかり取って、無駄なく攻撃をしてください。」




 ソフィアとエンシャントスパイダーは街の近くに罠を仕掛けるために動き回っていた。彼らの作業は迅速かつ正確で、敵の進行を遅らせるための準備が着々と進んでいた。




「これで、少しでも時間を稼げるわ。」ソフィアは満足そうに言った。




 エンシャントスパイダーもその巨体を活かして、深い落とし穴を作り続けていた。「これで敵は簡単には進めないだろう。」フィオナはスパイダー軍団を見て頷いた。「そうね、これでかなり遅らせるはずよ。」




 リディアは皆の動きを見守りながら、最後の確認を行った。光魔法でリディアを照らし、風魔法を使って音声を拡散させ全体に伝達。




「私は信じている。皆の勇気と絆を!」


「私は信じている。我らの街と未来を守れることを!」


「私は信じている。我々の勝利をぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」




 街全体から一斉に響く応答の声。


「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」




 全員が一斉に声を上げ、それぞれの持ち場へと向かっていった。リディアは胸の中に燃える決意を感じながら、仲間たちと共に戦いの準備を進めていた。彼の目には揺るぎない闘志が宿っていた。




 緊張が高まる中、彼らは一つのチームとして団結し、これからの戦いに挑む覚悟を決めた。リディアは仲間たちを見渡し、力強く声をかけた。




 仲間たちはそれぞれの位置に散り、リディアの言葉に力強く頷いた。武器を手にし、魔法の準備を整えながら、彼らは一丸となって敵を迎え撃つ準備を整えた。






 リディアは最後にノエルと心の中で話をした。「ノエル、これで大丈夫か?」




 ノエルは優しく答えた。『はい、マスター。皆がそれぞれの役割を果たせば、この防衛戦はきっとうまくいきます。マスターも気をつけてください。』




 リディアは深く頷き、「ありがとう、ノエル。私も全力を尽くす。」




 リディアは街の皆を鼓舞し、その声が一斉に響いた後、彼は一人で敵に向かって歩き出した。重たい決意を胸に、彼の足取りは力強くも冷静だった。




 街の外れに差し掛かると、サクラとルークが彼の前に姿を現した。リディアは彼らを見つめ、静かに言葉をかけた。「サクラ、ルーク、元の姿に戻って。これからの戦いに備えよう。」




 サクラは巨大なバジリスクの姿に変わり、ルークは通常のスライム姿に戻った。リディアはその二人の仲間に目をやり、力強く頷いた。「急いで進もう、時間がない。」




 三人は一瞬の逡巡もなく、敵の方向へと駆け出した。リディアの心には、街を守るための強い決意と、仲間たちへの信頼が確かに宿っていた。彼らの影は次第に薄れ、夜の闇に溶け込んでいった。

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