第25話 護衛依頼3
第25話 護衛依頼3
リディアたちの足取りは、ワイバーンを倒した後も、クレストへ向けてひたすらに歩き続けていた。
ジェラルドがリディアの隣で話し始めた。「リディアよ、昨夜は本当に助かった。おかげで、私の持ち物はあの恐ろしいワイバーンに食べられずに済んだ。心からの感謝を伝えたい。」
リディアは、彼の言葉に柔らかな笑顔を浮かべて答えた。「ジェラルドさん、それが我々の務めですから。ですが、まだまだ気を緩めるわけにはいきません。安全な地へ訪れるまで、油断は禁物ですよ。」
朝霧がまだ森を覆っていた翌日、リディアたちの旅は突然の転機を迎えた。深い森の中で、彼らの道を遮るように、十名ほどの荒々しい盗賊たちが現れた。彼らの目は、飢えた獣のようにジェラルドの馬車を貪欲に睨んでいた。
「聞け、旅人ども。その荷物、全部ここに置いていけ。女もな。へへへ。」盗賊のリーダーが、粗野な笑い声を上げながら、命令するかのように言い放った。その声には、教養の欠片も感じられず、彼らの荒んだ生活が垣間見える。
盗賊たちが悪意に満ちた笑い声を上げて迫る中、リディアは落ち着いた声で戦闘指示を出した。「フェン、後方を守れ!セバス、エレン、ジェラルドと馬車を守ってくれ。」
「わかったにゃ!」と後方に走り出し3名の足止めを図る。
セバスが、盾を構えながら返事をした。「承知しました。エレン様、強化魔法をお願いします。」エレンは、彼の言葉に頷きながら、強化魔法の詠唱を始めた。彼らの準備は迅速で、防御の陣形は完璧だった。
リディアは、前方に立ち、剣を抜いたまま冷静に盗賊たちを見据えた。「よし、来い!」と叫ぶと同時に、彼の手からは「ダダダダッ」という効果音と共に魔法弾が放たれた。その速度は音速に達し、一瞬で前方の5名の盗賊を薙ぎ払った。
フェンは後方から迫る3名の盗賊に対応する。彼女は、敵の一撃をかわしながら反撃を試み、「くっ、しつこいにゃ!」と叫びながら、激しい戦いを繰り広げた。
一方、セバスとエレンは、ジェラルドと馬車の周りに堅固な防御網を作り上げていた。セバスが敵の注意を引きつける中、エレンはファイヤーの魔法を完成させ、「ファイヤー!」と言い放ちながら、魔法を放った。ファイヤーは正確に敵を捉え、彼らを一時的に退けるのに成功した。
前方の敵が倒れ、リーダーを含む数名が逃走を始めた時、リディアは彼らを追撃した。「逃がさない!」と叫びながら、再び魔法弾を放つ。その「ダダダダッ」と響く音は森全体に響き渡り、追撃する盗賊たちを次々と倒していった。
戦闘が終わり、ジェラルドはリディアたちに対して感謝を示した。「リディアさん。あなたがたには本当に感謝しています。」
リディアは軽く頷きながら答えた。「ジェラルドさん。あなたや馬車に何も起きなくて良かったです。これ以上ない結果です。」そして、少し考えた後でジェラルドに尋ねた。「エスガルドからクレストへのこの道、いつもこんなに魔物や盗賊に襲われるものなのですか?」
ジェラルドは首を振り、「ええ、ワイバーンに遭遇したのは今回が初めてです。普段はそう危険なことは少ないのですが…」と答えた。彼の返答からは、この旅の異常な危険さが伺えた。
翌日の朝、リディアたちは一夜の安息の後、最終的にクレストの地に無事到着した。旅の疲れを背負いつつも、彼らの顔には達成感が溢れていた。
クレストの門をくぐった瞬間、リディアたちの耳には街の賑わいの音が溢れ込んできた。「わあ、良いにおいにゃ!」フェンが目を輝かせながら叫ぶと、セバスも感心した様子で頷いた。「確かに、エスガルドとは比べ物にならないほど活気がありますね」
街を歩きながら、彼らは至る所で交わされる冒険者同士の会話や、露店で売られる装備品や食材に目を奪われた。「これだけの冒険者がいれば、ダンジョンもかなりのものなんだろうね」とリディアが考えを巡らせると、エレンが嬉しそうに付け加えた。「そして、こんなに多くの露店があるなんて、ここでの生活も楽しそうだわ。」
クレストの中心にそびえ立つ、目を引く建物が目的地である冒険者ギルドだった。リディアたちは、その堂々とした入口前で足を止めた。受付には、期待通り美しい女性がいた。リディアは内心で感じた。「男性冒険者を惹きつけるためのギルドの戦略か。女性冒険者にはどういうアプローチをしているんだろうか?不思議だ。」
彼らは受付で護衛任務の報告を行った。この瞬間が、ジェラルドとの別れの時だ。ジェラルドはワイバーンと盗賊からの守護について詳しく報告し、彼らに対する豊かな報酬を手渡した。「リディアさん、そして皆さん。本当にありがとうございました。今後も護衛の依頼があれば、是非ともお願いしますね。」
リディアはジェラルドに向けて頷き、「もちろんです、ジェラルドさん。いつでもお待ちしています。」と答えた。
その後、リディアたちは街をさらに散策し、夕食のために露店で売られている串焼きを試しに購入した。「さて、どんな味かな?」とリディアが一口かじると、シンプルな塩味が口の中に広がった。「塩だけだけど、なかなかいいじゃないか」と彼は笑った。
夜は「炎の宿」という名前の宿屋に泊まることにした。エレンが看板を指差し、「ここの名前、なんだか暖かそうね」と言うと、フェンが賛同した。「そうにゃ、ここにしようにゃ!」
宿屋「炎の宿」の夕食時、リディアたちの会話はクレストにある三つのダンジョンに焦点を当てた。
リディアが情報を共有した。「クレストには、特に注目すべき三つのダンジョンがある。まず『深名のダンジョン』だ。50階まではすでに探索されているが、奥深くは100階、あるいは200階にも及ぶとのこと。」
フェンが興味津々で返した。「それは凄いにゃ!」
エレンが言葉を続けた。「次に、『天空の塔』ね。雲の上にまで届くという、まるで空に触れるような塔。頂上が見えないみたい。クレストに来るときに見えたあれね。」
セバスが加える。「そして、最後に挑戦すべきは『影の迷宮』です。永遠の暗闇に覆われたこの迷宮は、光と影の戦いの舞台となります。」
リディアはみんなを見渡して言った。「2日間休んだ後、どのダンジョンに挑戦するか、しっかり考えよう。それぞれ異なる挑戦と謎が待っている。」
食事を終え、一行はそれぞれの部屋に引き上げた。夜が更け、静寂が街を包む中、リディアたちは次の冒険に思いを馳せながら眠りについた。新たな挑戦に向けた期待と準備で、彼らの心は既に動き始めていた。
▼リリィ達の街づくり
夜も更け、セリーナとフィオナがモンターニャの森から必要な木材を運び出している間、バルドとリリィは新しい農地の開発計画に取り組んでいた。この地域には近くに流れる川があり、それを最大限に活用する計画だった。そこへ、彼らの新たな試みとして、疲れを知らないスケルトンが畑を耕し続ける自動化システムが導入されることになった。このスケルトンは、夜通し労働を行い、効率的に土を耕すことができる。
バルドはリリィに向かって図面を示しながら説明を始めた。「ここに示されているのは、川の水脈に直接アクセスする灌漑システムだ。これに水の精霊の力を用いて安定した水供給を確保し、土魔法と土の精霊の力を組み合わせることで、農作物の成長を高速化し質を向上させる実験も行う予定だ。さらに、こちらは私たちの新しい助手、疲れ知らずのスケルトンだ。これが夜間に畑を耕続けることで、我々の労力を大幅に削減し、より多くの作物を育てる時間を確保できるんだ。」
リリィは興奮を隠せずに言葉を返しました。「それは画期的なの!」
その時、ルミナが静かに現れ、二人の会話に加わりました。「聞いてやしたわ、バルド。ロゼッタに水の精霊を召喚してもらってやすので、その井戸はもうほぼ完成してやす。これから現地で最終確認を行いんすので、一緒に来ていただけんすか?」
三人は計画地に向かい、ルミナは地面に手を置き、複雑な呪文を唱え始めました。井戸から光が滲み出し、やがて水が湧き出しました。これが、彼らの灌漑システムの中核となる水源。
「この水をどのように農作物の成長に利用するの?」リリィが尋ねた。
バルドは説明を続ける。「水魔法と土魔法を組み合わせることで、土の質を一時的に変え、農作物の水分と土の栄養の吸収率を高める。さらに、精霊の力を借りて、作物が持つ生命力を強化し、成長速度を促進するんだ。」
「この井戸の水は特別でありんす。水の精霊によって川からの水が常に清浄に保たれんす。さらに、農作物に必要なミネラルも豊富に含んでいるんでありんす。これにより、作物の品質も大幅に向上するでありんしょう。もちろん、この水を我々が飲んでも全く問題はありんせん。」
彼らはこの革新的な技術によって、農地をリディアの望む豊かな土地に変えるための第一歩を踏み出しました。その夜、星空の下での話し合いは、これからの豊かな収穫を夢見る希望に満ちていました。このプロジェクトが成功すれば、それは彼らの努力の結晶として、多くの人々に恩恵をもたらすことになるでしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます