第16話 エレン皇女

第16話 エレン皇女


 森の深奥で、リディアとその忠実な従魔サクラは、レベルアップを目指し魔物たちとの激しい戦いに没頭していた。


 リディアは、敵を発見するたびに彼の洗練された剣技と、得意の魔法弾や魔法弾ガトリングを駆使して、次々と魔物を討伐していった。


 サクラも、その巨大なバジリスクの姿で敵に立ち向かい、リディアの攻撃を全力でサポートしていた。


 紫色の光線である毒ビームや、周囲を毒の嵐で包むシャドウヴェノムストームを使って敵を一掃する彼女の戦い方は、まさに圧巻だった。




「ふふふ。レベルアップ最高!! 」


「ジュラ~♪」


 戦いの最中、リディアが軽く足を滑らせると、サクラがすぐに「ジュラ~!」と声を上げて注意を促す。


 リディアはその声を聞き、笑いながらバランスを取り直し、「ありがとう、サクラ。おかげで気を取り直せたよ」と感謝の言葉を返した。


 やがて、二人は特に強大な魔物に遭遇する。


 リディアが短い呼吸を整えながら前に出ると、サクラは「ジュラ~、ジュラ~!」と独特の声で戦闘態勢に入ることを伝え、彼の後ろで支援の準備をする。リディアが魔法弾を発射すると同時に、サクラは毒ビームで敵の動きを封じ、その隙にリディアが決定打を放つ完璧なコンビネーションを見せつけた。


 戦闘が終わり、リディアはサクラに向かって「毎回驚かされるよ、サクラ。お前のサポートがあってこそだ」彼女の大きな頭を優しく撫でた。


 サクラは「ジュラ~♪」と満足げに鳴き、二人の間には言葉を越えた深い信頼と絆が存在していることが伝わる。


 遠くで響く戦闘の音がリディアとサクラの耳に届いた。


 二人は一瞬、顔を見合わせると、リディアが言った。


「サクラ、先に様子を見てきてくれ。足が速い君ならすぐに行くことができるだろう?」


 サクラは「ジュラ~!」と元気よく応え、風のように駆け出していった。




 その戦闘の音の源は、エレン、フェン、セバス、そして彼らが立ち向かっているブルーベアとの激しく戦っている場面だった。


 三人は勇敢に戦っているものの、徐々に劣勢に追い込まれていた。




「エレン様、後ろにご注意を!」セバスが必死に警告する。




「了解ですわ!フェン、サポートを!」エレンが指示を出す。




 フェンは「任せてにゃ!」と返事をしながら、敏速にエレンの周囲を守る。




 緊張感に包まれたその瞬間、未知の巨大な魔物が現れ、周囲の空気を一変させた。


 この浅い森で目にしたことのない、邪気を纏う巨大な魔物の出現に、エレン様たち三人は戦慄した。




 エレン様が声を震わせながら叫んだ。「こんな魔物、森のこの部分で見たことがありませんわ!」




 フェンは恐怖に顔を引きつらせ、「こんな強そうな敵、初めて見るにゃ…ブルーベアもいるのに、これはヤバいにゃ」と呟いた。




 セバスは厳しい表情で「私が盾になる。フェン、エレン様を頼んだぞ!」と力強く言葉を投げかけた。


「ちょ、ちょっとセバス!そんなこと言わないにゃ。」


「そうですわ。無駄な犠牲はさけて逃げる手段を考えましょう」




 森の中、戦いの緊張感が高まる中、「ジュラ~!」という力強くも勇ましい鳴き声が響きわたる。突如現れた巨大なバジリスク。この未知の存在が敵か味方か、判断がつかない状況だった。




 そのとき、リディアが静かに現れて言った。「皆さん、大丈夫ですか?サクラは私の従魔で、敵ではないですよ。」彼の言葉に、戦場の空気がわずかに和らいだ。




 エレンが疑問を呈する。「サクラ? その巨大な蛇が?」




 リディアが、温かい笑顔を浮かべて提案しました。「ブルーベアとの戦い、結構大変そうですね。少し手伝ってもいいですか?」




 エレンは、すぐにフェンとセバスの方を振り向きました。彼らもエレン様の視線を感じ取り、瞬時に目を合わせた後、頷き合いました。




「助けてくれるなんて、ありがたいにゃ!」と感謝の意を表しながらリディアに向けて笑顔を見せた。




 セバスも礼儀正しく「お力添えいただけると、大変心強いです。宜しくお願い致します」と加えた。




 エレンは、そのやり取りを見てからリディアに向かって、


「もし、お手伝いいただけるなら、本当に助かります。よろしくお願いします」


 その言葉には、戦いの中で感じる疲れよりも、これからの希望を感じさせる安堵が込められていた。




 リディアは、彼らからの返答を受け、「承知しました。さあ、サクラ、みんなを助ける時間だ」と言い、サクラも「ジュラ~♪」と元気よく応えて、ブルーベアに立ち向かう準備をしました。




 リディアがサクラに向けて確認する。「サクラ、戦う準備はできているか?」




「ジュラ~♪」とサクラが快活に応じ、巨体を躍動させながら戦闘態勢に入った。




 リディアは一呼吸置き、「さあ、行くぞ!魔法弾ガトリング、発射!」と力強く叫んだ。


 その瞬間、「ガガガガガッ!」と鋭い連射音が森全体に響き渡り、魔法弾がブルーベア目掛けて一斉に飛び出した。


 ブルーベアは一瞬でその威力に圧倒され、「ドスンッ!」と大きな衝撃音を立てて力なく地面に崩れ落ちた。




 その圧倒的な展開に、エレン様とその仲間たちはただただ驚愕。「・・・」とセバスが呟き、フェンは「にゃ、にゃんということにゃ…!」と声を失い、エレンも「これほどとは…」と感嘆の声を漏らした。三人は、リディアとサクラの力の前に、言葉を失うほど圧倒されていた。




 戦闘が終わった後、リディアはエレン様たちに話しかけようとしたが、彼らがサクラの巨大な姿に怖がって固まっているのに気づいた。「あ、ごめん、サクラ。少し小さくなってくれるか?」とリディアがサクラに頼むと、サクラは「ジュラ~」と一声鳴いて、見る見るうちに小さくなり、リディアの左腕にまきついた。




「これで大丈夫かな?」リディアが再びエレン様たちに声をかけると、彼らは少し安心した様子で頷いた。しかし、リディアの強さには依然として警戒の色を隠せないでいた。




 リディアは、鑑定能力を使って彼らの身分を知ってしまっていた。「第三皇女…か。うまくやらないと、面倒なことに巻き込まれそうだ」と思いながらも、表面上は穏やかに振る舞った。




 フェンは深く息を吸い込んでから、複雑な感情を抱えたままリディアに向かって、「リディアさん、その…すごい戦い方だったにゃ。助けてくれて本当にありがとにゃ。サクラさんも今は小さくてかわいいにゃ」と言葉を濁した。




 リディアは、エレン様の目を直接見ながら、自己紹介をした。「私はリディアと申します。今の戦いで怪我をされていたら、回復魔法をかけましょうか?」彼の声には緊張が隠せないものの、誠実さが滲み出ていた。




 エレンは、リディアの提案に対して警戒心を隠しつつ、彼の意図を探るように応答した。


「リディア様、ご親切にありがとうございます。しかし、私たちは大丈夫です。あなたのような強力な魔法使いと出会うなんて、この森も侮れませんね。あなたは、この森で何をされているのですか?」


 リディアはエレンの質問に微笑みを浮かべながら慎重に答えた。


「ただのレベル上げですよ。しかし、このような危険な場所で困っている人を見過ごすわけにはいきません。」


 エレンは一瞬ためらいを見せた。そして、深い息を吐きながら、彼らの真の状況を明かしました。「実は、私たちはグラン王国へと逃れている最中なのです。私たちには…皇帝から命を狙われているのです。」




 エレナが自らの運命と現在の状況を明かし始めたとき、セバスとフェンは一瞬、言葉を失った。




 フェンが目を丸くして驚きの声をあげ「えっ、ど・どうしたにゃ…!?」


 彼女の声は信じられないほどの衝撃と混乱を表していた。


 セバスもまた、同様に驚愕した表情で、「エレナ様・・・」




 エレナは二人の反応に苦笑いを浮かべつつ、


「驚かせてしまいました。しかし、今、私たちが直面している状況を正直に伝えることが、最も良い選択だと判断しましたの。」と、セバスとフェンに語り掛けた。




 そういった事情なのか。


 であれば、一緒に冒険するのもいいな。


 転生して初めて人と関わった。一緒に世界を回る冒険をしてみたい。


「私も微力ながらお手伝いさせてください。もう森での修行もひと段落ついたので一緒に世界を回ってみたいです」




「一緒に旅して強くなりましょう!!」

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