第4話 修行

第4話 修行




「さて、修行の時間だ。」




 リディアは自身に言い聞かせる。


 この異世界で生き延び、さらには力をつけるためには、魔物を狩り、その力を自分のものにすることが欠かせない。しかし、彼の頭の中は疑問でいっぱいだ。


 その過程で得られるレベルアップを心待ちにしていた。




 その疑問が彼の心をかき乱す中、リディアは突然、ノエルに向かって口を開いた。「ノエル、魔物を倒した後、その体はどうなるのか? ダンジョンの魔物と通常の魔物で違いはあるのか?」




「マスター、ダンジョン内の魔物は倒されると消滅し、魔石のみを残します。しかし、ダンジョン外の魔物はそのまま体が残り、解体して資源として利用することができます。食用に適しているかは、魔物によって異なりますが、適切な処理を施せば食材としても利用できます。」ノエルの説明はリディアの疑問を明確に解消する。




 リディアはノエルの説明を受けて、思考を巡らせる。「そうか、ダンジョンの魔物は解体の必要がないが、外の魔物は利用価値があるのか。生き延びるためには、この森の魔物は価値があるな。」


 ロールプレイングのようにレベル上げをするには、反復あるのみ。


「では、風魔法と土魔法で攻撃の練習をしよう。あ、身体強化のために魔力を体の周りに纏うことも忘れずに。」




 リディアは深呼吸をし、体内に眠る魔力を呼び覚ます。


 その瞬間、彼の肌は微かに輝きを放ち始め、全身がビリビリとした電流に打たれるような刺激に包まれる。




 息を大きく吐き出すと、彼は森の奥深く、目の前にそびえ立つ巨木に視線を向けた。風を操るイメージを心の中で整えると、周囲の風が彼の拳と体を中心に集まり始めた。




 彼の周りの空気が微妙に震えるのを感じながら、リディアは自分の体を中心に魔力が渦巻き、肌の輝きが強まっていくのを見つめる。


 この瞬間、彼は自分がこの世界の魔法の力を、本当に操れるようになったことを実感する。




 リディアは、全身を覆う魔力の震動を感じながら、次の段階へと進む準備を整えた。


 彼の目の前には、森の静寂を支配する巨木がそびえ立っている。


 それは、彼の魔法の力を試すにはふさわしい、まさに挑戦すべき対象だった。




 彼は再び深呼吸をし、集中を深める。風魔法を操り、その力を右手に集中させる。


 彼の周りの空気がざわめき始め、風が彼の意志に従って旋回し始める。


 まるでリディア自身が風を司る支配者になったかのようだ。


 その風は、次第に彼の拳を中心に激しい旋風を形成し、魔力が拳を取り巻くように融合していく。




 そして、リディアは猛然と動いた。


 彼の全身から溢れる魔力が、彼の右拳に集結する。


 彼はその蓄えられたエネルギーを、目の前にそびえ立つ巨木へと全力で振り下ろす。


「ズドォォン!」


 その一撃で、空気が「シュッ!」と切り裂かれ、強烈な衝撃波が「バオォッ!」と爆発する音が周囲に響き渡った。




 衝撃波が巨木に「ドゥン!」と衝突すると、瞬間的に巨木の根本が「ドゥン!」と音を立てて粉々に砕け散る。


 木片が「パラパラ・・・」と舞い上がり、周囲は一瞬にして破壊の風景に包まれた。


 轟音が森全体に「ゴォォン・・・」と長く響き渡り、その後の静寂が、リディアの放った一撃の壮絶さを余すことなく物語っていた。




 この一撃は、リディアがこれまでにないほどの力を発揮した瞬間であり、彼の魔法と身体強化の訓練が実を結び始めている証だった。




 ▼森の入り口 皇女達


 深夜、帝国の辺縁を包む沈黙は、三人の逃亡者たちによって破られた。


 アルボレアの壮大な城塞都市の影から、エレン、フェン、そしてセバスは、命の危険を感じながらも、自由を求めてモンターニャの森へと足を踏み入れる。


 その森は、人を呑み込むような闇と、名もなき恐怖で満ちていた。




 彼らが森の暗がりに身を投じると、不穏な静けさが辺りを覆う。


 ただ、遠くの警鐘の音と、追手の声が遠ざかるのが聞こえるだけだ。


 しかし、安堵する間もなく、新たな恐怖が彼らを待ち受けていた。


 森は、巨大な魔物がうごめく危険な迷宮だったのだ。




 フェンが耳を澄ませ、一行を立ち止まらせる。


 彼女の獣人特有の感覚が、何かを察知した。


「待って、何かがおかしいにゃ。」


 フェンが低く囁く。彼女の目は、森の暗がりを警戒深く見つめている。




 エレンが不安げに尋ねる。「どうしましたの?何か聞こえますの?」




 セバスも周囲を警戒し、剣の柄に手をかける。「何か近づいているのか?」




 フェンはじっと耳を澄ませ、少ししてから答える。


「うん、何か大きなものが、こちらに向かっている。魔物の気配にゃ。」




 エレンの顔色が変わる。「どういたしましょう・・・追手も後ろにいますし、ここで戦うわけにはいきませんわ。」




「逃げるしかないにゃ。でも、音を立てずに、もっと深く森の中へ行くにゃ。」


 フェンが提案する。




 セバスが冷静に言う。


「エレン様、フェン、私についてきてください。」




 彼らは、森のさらに深い暗闇へと身を隠しながら進む。


 背後からは、何か巨大なものが地を踏み鳴らす音が聞こえてくる。


 それは、彼らの心臓の鼓動をも上回るほどに、迫力があった。




 エレンが小声で言う。「こんなに危険な場所を選んだ私たち、間違っていたのかしら・・・」




 フェンが励ますように答える。


「いいえ、エレン様。私たちは、ただ前に進むだけにゃ。」




 セバスが加える。


「エレン様、私たちはあなたを守ります。どんな困難も、一緒に乗り越えましょう。」






 主人公のステータス


 レベル: 1


 名前:リディア


 種族: エルフ(48歳)


 性別: 男


 魔法:

 火魔法 レベル1

 水魔法 レベル5 

 風魔法 レベル9 

 土魔法 レベル6 

 光魔法 レベル9

 スキル:

 ユニークスキル「AI」 

 ユニークスキル「アイテムボックス」 

 錬金 初級

 身体強化(NEW)

 麻痺無効

 称号:

 世界を超えたもの(言語理解、隠蔽、鑑定)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る