月夜の見届け人

そらと

第1話

僕は、薬利彰吾くずりしょうご、明日18歳になる高校生だ。


代々、薬屋を営む商家の生まれで、修行と称して

週に数日、ドラッグストアでアルバイトをしている。


15歳の誕生日の前日。

人払いをし、障子をただならぬ様子で閉めた父親から、薬利家にまつわるある話を聞かされた。


俄には信じられなかったが、一子相伝で、父親から男子へ代々、継承されてきた薬利家の掟であり、特殊能力だという。


神の使いである猫神様が、家にやってくる事から始まると聞かされた。


事実、15歳の誕生日を迎えてから時折、裏庭に霧のようなモヤモヤした塊が見えるようになってきたのだ。


そしてそれは、年を追う毎に猫の形とはっきり判別できるまでになっていた。


「彰吾、誕生日はアルバイトはお休みしなさい。夕方から、儀式をするから。」

数日前、父親からそう念を押されていたので、

少し緊張していた。


今まで表面上は何でもないような生活をしてきた。

しかし実際は、どこか落ち着かない3年間を過ごしてきたのだが、いよいよ明日、何かが始まるのだ。


先祖代々なんて…僕にもその血がちゃんと流れているのだろうか。

猫神様の姿が見えるだけでも不思議だけれど、どんな特殊能力なのだろう。


不安と誇らしさ、その2つが入り混じったような気持ちで彰吾は眠りについた。

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