第16話 なになに星人

(この町にはあるかな)


 ザビンツ帝国に入国した僕らは、順調に帝都を目指し旅を続ける。途中、大きな図書館があればその町に滞在し、ミムの呪いの紋について何か情報がないか調べるつもりだ。


「旦那、ちょっと聞いてくださいよ! あねさんったら酷いんでさ」

「ん? 姐さん? ひょっとしてテレトワのこと?」

「そうですよ、旦那。ホント酷い女なんですよ。あっしが後ろからおっぱいを揉んだら、魔法で電流を流されましたぜ。何もそこまでとする必要ないと思うんですがね」


(ああ。前の町を出発するときにピクピクしていたのは、それなのね。ロサル、それはお前が悪い。警邏けいらに突き出すぞ)


「ロサルさぁ。女の子のおっぱいは揉んじゃいけないんだよ」

「そうですかね? エッチなお店なら揉み放題ですがね」


(なら、そういう店に行け。ミムやテレトワを巻き込むな)


 エロエロなロサルに呆れていると、ミムが話しかけてきた。


「レイユ様。あたしやっぱり、このエロ猿を旅に連れていくのはどうかと思います」


(僕もそんな気がしてきた)


「姐御ぉぉ! そんなこと言わないでくださいな。あっしも前衛で役に立っていますよね?」

「どうかしら?」


「うちはロサロサがいなくてもミムミムがいればいいと思う」

「姐さんも見捨てないでくださいよぉぉ。ねえ、旦那?」


「今までお疲れ、ロサル」

「そんなぁぁ!」

「じゃ、そういうことで。ミム、テレトワ、僕図書館を探しにいくね」


「わかりました」「りょうかい!」


 僕は図書館を探しに町中を歩いていく。後ろを振り向けば、なぜかロサルもついて来ていた。きっと図書館でエロ本でも借りたいのであろう。


(まっ、そんな図書館は無いだろうけど)


 ◇


 この町には小さいながらも図書館があった。早速、中に入りお目当ての本を探す。


(こっちかな)


 探してみたが特に魔法や呪いといった本は置いてはいなく、僕は少し残念な気持ちになる。


「旦那、旦那」

「ロサルいたの?」


 小声でロサルが話しかけてくる。


「旦那、あっちの奥の方のテーブルに地味めがねの女の子がいるんですよ。あの乳の形は最高ですよ。旦那も――」


 僕は思わず、ロサルにチョップをする。ここが図書館でなければ魔法をブチかましていただろう。


「いてて。旦那、冗談ですって」

「ここには目的の本が無いみたいだから、僕は行くよ。ついて来ないで」

「いえ。あっしは旦那に恩返しできるまでは、ついて行きますぜ。たとえ火の中、女湯の中」


(もう無視しよう)


 ◇


 図書館を出る。ロサルがついて来ているのは無視して町中を歩いていると、またロサルが話しかけてきた。


「旦那、あれ姐御と姐さんですよね? それともう一人は――旦那にそっくりですよ」


 ロサルに言われ、彼がしめした方を見ると、ミムとテレーザが僕そっくりの人物と一緒に歩いていた。


(なっ、偽者じゃん。ミム達が危ない!)


 僕は急いで、ミム達に駆け寄る。


「ミム、テレトワ! そいつから離れて!」

「えっ」


 その場には僕と偽者。ミムとテレーザがいる。彼女達は状況が飲み込めず混乱している様子だった。


「何でレイユ君が二人――」

「そいつ偽者だよ。テレトワ」


「こいつ何言っているんだ? お前の方が偽者だろ」

「レイユ様……」


 どうしたら、僕が本物だと証明できる? その答えはすぐにわかり、空へ「ウインドカッター」を放つ。その後すぐさま「ウォーターボール」で地面を濡らし、手のひらの上に「ファイヤーボール」を出した。


「テレトワ。これでどっちが本物かわかるよね?」

「ちっ!」


 僕が魔法を見せてそう言うと、偽者は舌打ちをして、その場を立ち去る。


「ちょっと待てぇい! 偽旦那!」


 そう言って、ロサルが偽者を追いかける。僕も偽者を逃してはならないと思い、彼を追いかけた。


「ちょ、ちょっと! レイユ君、待って!」


 ◇


 偽者は意外に足が速い。巻かれないように頑張ってついて行くと、路地裏でようやく追いついた。だがしかし、そこにいたのは二人のロサルだ。


(見分けがつかない)


「旦那、こいつが偽者ですぜ。騙されないでください」

「旦那、あっしが本物です。信じてください」


 剣を抜いた二人が対峙している。どうすれば見分けられるのか――。


「ケッ。双剣使いのあっしをめるなよ」

「フッ。おっぱい星人のあっしを見くびるなよ」


 僕は双剣使いの方にファイヤーボールを放った。


「うぐっ! なぜ――なぜバレた……、そうか合言葉があったのか……」


(そんな合言葉なんてないよ。ロサルといれば分かるもんだよ)


 僕らがいる路地裏にミム達も来る。偽者は倒れていて、ロサルががっちりと捕まえていた。


「旦那、どうします?」


 なぜ偽者はミム達に近づいたのか、その目的がわからない。なのでその目的を訊くため逃げないように、僕は亜空間魔法でロープを取り出し、ロサルに頼んで偽者を縛り上げてもらった。そしてロサルが偽者に訊く。


「おい」

「……」

「お前、何が目的で姐さん達に近づいたんだ?」

「……」

「姐さん。魔法でビビッとやっちゃってくださいな」


「えっ、ロサロサ。本当にやるの?」

「だって姐さんを攫って、あんなことやこんなこと、したかもしれないんですぜ」

「むぅ。それはイヤだ」


 そうテレーザはいい、偽者に電流を流す。


うぉぉぉぉぉビリビリビリビリ!」


「なあ、姐さん達に何をしようとしたんだ?」

「……」

「そっか、またビリビリを喰らいたいんだ。姐さんお願――」

「わ、わかった。わかったから言う」

「それで?」

「ねえちゃん達に近づ――――うぐぅっ!」


 偽者が近いた目的を話そうとすると、急に倒れ苦しみだした。


「う、ぐっ、う……」


 偽者は白目をむき、そして生き途絶えた。


(なっ、何が起きたんだ)


 僕は偽者に近づく。偽者をよく見ると、首の所に呪いの紋があった。


(この紋は――口封じのための呪いの紋か)


 ミムももしかしたら、突然死するかもしれない。彼女の為にもいち早く呪いを解く必要があると感じた。


「レイユ君、これって――」

「どうやら重要なことを話そうとすると、口封じで殺される呪いがかけられてみたいだ」

「えっ」


 何とも言えない空気が漂う。


「ミム、テレトワ、行こうか」

「うん」


 路地裏に死亡した偽者を残し、僕らは通りに出る。


「なぁ、ロサル」

「何でしょう旦那?」

「ついて来るの?」

「当たり前じゃないですか」

「そっか」


 この町の図書館では呪いに関する有益な情報を得られなかったので、皆と相談した結果。宿屋に泊まった翌日の朝にはここを出発し、僕らは帝都へ向かうことを決めた。

 そして、宿屋にて、


「レイユ様はあたしと同じ部屋がいいですよね?」

「レイユ君、うちと同じ部屋がいいよね?」


(一人部屋取れなかったものな。好意を持たれているのは嬉しいけれど――)


「じゃあ、あっしは姐御か姐さんと同じ部屋になりますかね。へへへへへ」

「ロサルは僕と同じ部屋だよ」

「そうなんですか? これはまた残念なこった」


 女性陣二人は何か言いたそうな雰囲気だったが、これが普通だと思う。


 ◇◆◇◆


「ミムミムぅ」

「何ですか?」

「うち達、レイユ君に愛されているのかな? 全然手を出してこないじゃん」

「そうだね」

「今日、もしかしたら知らない男の人に手籠めにされちゃったのかと思うと、物凄くイヤだよ」

「うーん。レイユ様にもっと積極的に行きますか」

「うん。でもグイグイ行ってレイユ君が引いたらイヤだな」

「そこは大丈夫だと思う。何だかんだで胸を押し付けると嬉しそうな顔をするから」

「むぅ。大きいミムミムが羨ましい」

「大きさは関係ないと思う」

「そっか。レイユ君がおっぱい星人だといいな」

「あたしもおっぱい星人だと嬉しいな」

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