老王エイベルの願い

 ルシアスが公爵になってから六年後、十八歳になったルシアスの元にラーナドゥール王国の王都からの使者が書状を届けに来ていた。

 

 書状をみるとラーナドゥール国王エイベルがルシアスに話したい事があるため至急王都に来てほしいという内容だった。

 

 ルシアスはラッセルとマリオンに留守を任してバルアの背に乗って王都を目指した。

 

 バルアの背に乗って飛んでから半日ほどで王都の近くまで辿り着くとバルアから降りて王都の中に入って行った。

 

 久しぶりの王都は相変わらず活気に満ちていた。

 

 通りに会う市場や様々お店の前を通り王城へと辿り着いた。

 

 門に着くと衛兵がいて一人で来た事に驚いていた、衛兵に案内されて謁見の間につくがエイベルの姿は無かった。

 

 エイベルの代わりに居たのは大臣のカートだった。

 

 ルシアスを見たカート近づいてきてエイベルが病に冒されてもう長くは無いことをルシアスに伝えてエイベルの私室へと案内した。

 

 カートがドアをノックしてルシアスが来た事を伝えると中からエイベルが入って来るようにいった。

 中に入りルシアスが一礼して挨拶するとエイベルが答えた。


 「良く来てくれたなルシアスよ」


 「お久ぶりでございます、エイベル陛下」


 「私の命はもうながくない、知っての通り私には子供はいない、そこでラスター公の長男エデイを跡継ぎにするつもりだ。」


「はい、陛下」


 百二十年前ラーナドゥール王国はレイノルズ王国が国を興す前にコーレリア島へ度々侵略した。

 

 当時の権力や野心に取り憑かれた王族やシェイダル教団の指導者達、そして狂信的な兵士や騎士達の戦いは失敗に終わった。

 

 百年の争いで疲弊して何の戦果も得られなかったコーレリア島への侵攻に、王族やシェイダル教団の指導者達に不信感を覚えている諸侯達は今も少なくない。

 

 特にラーナドゥール王国の西のもう一つの公爵家であるカレス公アルバートは不満を抱き、不信感を持つ諸侯を味方につけて王位継承を主張するのではないかとさえいわれている。

 

 一方ラスター公爵の長男エデイは野心とは無縁でシェイダル教本来の教義に熱心に賛同するそんな人物だった。

 

 そしてエデイはエイベルのように他の国との協調を重んじる事でも知られていた。

 

 アカトス公でありドラゴン達の守護を受け魔法戦士として優れた騎士達を抱えるレイノルズ王国の王族の血を引くルシアスがエデイに忠誠を誓い賛同してくれるならアルバートも容易には動けなくなる事をエイベルは考えていた。

 

 エイベルは重ねてルシアスにエデイを支える事を頼んだ。

 

 ルシアスはそれに応え若輩ながらエイベルの選んだ正当な後継者エデイを支える事を誓った。

 

 話しが終わり王都の外に出てバルアに乗ってルシアスはハウルナートへと戻っていった。

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