【完結】鍵のかかった密室、溶けた氷の謎。名探偵・青木麗華が挑む、究極のミステリー!
湊 マチ
第1話 事件の発生
鈴木陽一の豪邸は、その威厳ある外観とは裏腹に、内部は沈黙に包まれていた。邸宅の中心部に位置する書斎の扉は、堅く閉ざされている。その扉の前には、青ざめた顔の家政婦が立ち尽くし、震える手で警察に通報していた。
夏川遼警部は、現場に到着するやいなや、書斎の異様な静けさに気づいた。彼は一瞬立ち止まり、深呼吸をしてから、ゆっくりとドアノブに手をかけた。「開けます」と一言告げると、力強くドアを押し開けた。
書斎の中は、完璧な密室だった。重厚な木製のデスクには、鈴木陽一の遺体がうつ伏せに倒れている。彼の周囲には散らばった未完成の原稿が無造作に広がっていた。夏川は一歩ずつ慎重に足を進め、部屋の中を観察した。
デスクの上には、溶けかけた氷の水滴が点々と残っていた。夏川はその水滴に目を留め、眉をひそめた。「これは…」と小さく呟きながら、ポケットからハンカチを取り出し、デスクの上を慎重に拭き取った。
窓は全て閉ざされており、外部からの侵入は不可能に見えた。書斎のドアも内側から鍵がかかっており、まさに完全な密室状態だった。夏川は頭を振り、現場に散らばる他の証拠を慎重に調べ始めた。
「警部、何か見つかりましたか?」部下の若手刑事が不安げに尋ねた。夏川はゆっくりと立ち上がり、冷静な声で答えた。「まだだ。しかし、この部屋には何かがある。見落としのないように、徹底的に調べるんだ。」
その時、夏川の目に留まったのは、デスクの一角に置かれた古びた本だった。彼はその本を手に取り、慎重にページをめくった。ページの間には、かすかに湿った感触が残っていた。「興味深い…」
夏川は本を戻し、もう一度部屋全体を見渡した。この密室の謎を解くためには、もっと多くの手がかりが必要だと感じた。彼はポケットから携帯電話を取り出し、青木麗華に連絡を取ることを決意した。
「麗華さん、こちら夏川です。ちょっと厄介な事件が発生しました。ぜひあなたの助けが必要です。」電話越しの麗華の静かな返事が返ってきた。「わかりました。詳細を教えてください。」
こうして、夏川は青木麗華との協力を開始し、鈴木陽一の謎の死を解明するための第一歩を踏み出した。
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