社畜のオッサンがモブ悪役(奴隷商人)に転生したら、ゲーム知識を利用して、ヒロインたちを最強に育成するわ、無自覚にヤンデレ化させるわで、いつのまにかストーリーをへし折りまくっていた件。
第22話 アリスサイド05——光属性のアリス姫が闇落ちした理由——
第22話 アリスサイド05——光属性のアリス姫が闇落ちした理由——
わたしはなんとかそう心を落ち着かせて、扉を開け、ライナスを迎え入れる。
ライナスは、わたしを一瞥すると不意に顔を近づけて、じっと見つめてくる。
「な……な、何を見ているのですか」
わたしはライナスのその予期せぬ熱い眼差しに警戒しながらも、同時に思わず胸が高まってしまう。
や、やはり……この男……わたしのことを……で、でも……わたしは奴隷だから……て、抵抗できないし——。
もしライナスに迫られたらわたしは——。
「いや……アリス。その……睡眠はしっかり取れているかなと思って」
ライナスは心配そうな顔を浮かべながらそう言う。
そして、ライナスはチラチラとわたしの目元を見ている。
わたしは、ライナスの予期せぬ言葉に動揺し、しばらく返答できなかった。
わたしは、ライナスから目をそらし、姿見に映った自分の顔をチラリと見る。
そこには目元に大きなクマを作ったひどい顔が映っていた。
わたしはこの3ヶ月……いやあの時以来ずっと悪夢にうなされている。
父様と母様がわたしの目の前で帝国兵の手にかけられて以来……。
わたしはあの日以来、安心して眠ることができない。
ライナスにそのことを見抜かれ、わたしの頭は混乱していた。
敵であるライナスに弱みを知られてしまったという焦りがわたしの心に生じた。
しかし……同時に自分でも意外なことに安堵感も覚えていた。
むしろそちらの方が強いかもしれない。
わたしは心のどこかでこの苦しみを誰かに理解してほしいと思っていたのだろうか。
そして、よりにもよって敵であり、わたしを奴隷にしたライナスがわたしの苦悩に気づいてくれた。
いいえ……ライナスはこの3ヶ月、ずっとわたしのことを見守ってくれて、気を配ってくれている。。
この3ヶ月間、いつもわたしはそんなライナスの顔を見ていた……。
陰険で卑屈で、最初はただ嫌悪しか感じなかったその顔……。
そのはずなのに、今はその顔がどうにも愛おしくすら思えて——。
は!? わ、わたしは何を考えて——
「だ、大丈夫です! あなたなどに心配される必要はありません!」
わたしは、自分の予想外の感情に慌てて、思わずはしたなく声を荒げてしまった。
「そ、そうか……ならいいんだ。余計なことをいってすまなかった……」
そう言うライナスは落ち込んでいるように見えた。
わたしはそんなライナスの反応に思わず心がズキリと傷んだ。
ライナスの思惑が何であれ、わたしのことを心配してくれたのは彼の本当の気持ちだったのではないか。
それならばわたしの態度は極めて失礼なものだ。
王族の……一国の姫のするべき振る舞いではない。
「あ、あの……し、心配してくれたことは嬉しく思います。で、ですが……わたしはもう大人の女です。自分のことは自分で対処できます」
「あ、ああ……わかったよ」
と、ライナスは少しばかりわずかにその顔をほころばせているように見えた。
その彼の顔を見て、わたしの心は弾んでしまう。
な、なんで……わたしこんな気持ちに——
「ごほん! と、ところで何のようなのですか」
「ああ……そうだったな。今後のためにレベリングに……い、いや一緒に魔獣を狩りにいかないか?」
「は!? か、狩り!?」
わたしは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
この後のライナスの行動は、わたしの彼に対する評価をますます混乱させるものであった。
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アリスサイドはひとまずここまでです。
アリスが闇落ちするまでについての過去編エピソードについては、また書ければと考えています。
次回からはまたライナスサイドに戻ります。
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