第5章 寝取りクソ野郎が、破滅するまで
5-1 寝取りクソ野郎は現代知識でゲーム業界を無双するつもりです
ボクの名前はリマ。
現代日本で30歳の時に、突然この世界に転移してきた人間だ。
その時に手に入れた能力は「催眠アプリ」。
僕が念じると、スマホ型の板をいつでも僕は呼び出すことが出来る。
そしてこれを相手に見せて暗示をかけると、その相手を意のままに操れる。
最初にこの能力を使ったのは、あるエルフの女さんだった。
「さあ、今日からキミは僕の性奴隷だよ?」
「はい、ご主人様!」
そういって、ボクの言いなりにした奴隷を使って、童貞を捨てた日のことは忘れられない。
そしてその日の夜に、この女の彼氏『イグニス』にも催眠をかけて「労働奴隷」にしてやった時の優越感も忘れられない。
今にして思うと、ボクは小さいころから、周りから差別されていじめられてきた。
小学校の時、ボクはクラス一の美人に初恋をした。
だがその子はボクが告白してやったにもかかわらず「ゴメン、無理!」と叫んでその後合わなくなってしまった。
中学の時には、ボクに優しくしてくれた地味な女さんが居た。
彼女のレベルだったらボクでも付き合ってくれると思って、毎日連絡をしていたら、ある日親に呼び出され、もう近づかないように言われた。
高校の時にボクは、小中学校の時の行動が知れ渡ってしまい、クラスでパシリにされた。
その時に、クラスの女どもも、ボクのことを笑いものにしていた。
そして大学ではボクは、誰ともかかわらずにゲームだけ過ごすようになっていた。
仕事も長続きせず、その後は実家で母親に飯を作らせ、ひたすらゲームだけやる人生だった。
そんな僕が、突然異世界に転移して「催眠アプリ」なんてものを貰えた。
だから、きっとこれはボクに神様が与えてくれた「お詫び」なんだと思った。
前の人生では不運で可哀そうな人生を負わせてしまったから、その埋め合わせとして、この世界で男から金を、女から体を奪えと。
そう思ってボクは、ハーレムを作った。
……最初のうちは楽しかった。
男共の目の前で女を自分のものにしていると優越感に浸れたし、セックスの快楽も前の世界では味わえないものだったからだ。
そして催眠でボク好みの性格に変えた後に、学生時代にやりたかった『デート』をするのもなおさらだ。
公園にピクニックに行って、お弁当を食べる。
縁日に行って、一緒に射的をしながら綿あめを食べる。
ショッピングモールを回りながら、一緒に出店でホットドッグを食べる。
そういう「当たり前な幸せ」を催眠の力と奴隷共の金で味わえたのは、最高だった。
そして、労働奴隷どもを罵倒しながら金を巻き上げる自分の姿は、まるで自分がオスの頂点に立てたような気持にもなれた。
……だが。
そうやって何年も過ごしているうちに、労働奴隷に変化が出始めていった。
最初にそう感じたのは、イグニスからの言葉だった。
「すみません、今度俺のイラストが劇場のパンフレットに使われるんですよ」
彼には言っていなかったが、ボクも子どものころはイラストを描いていた。
だけど、やる気が続かないのとゲームの方が面白かったこともあり挫折してしまっていた。
もしもボクも才能とやる気があったら、きっと彼のようになっていたと思うと、ボクはその時初めて、今の自分に疑問を持った。
「ええ。今度、うちの会社が出すゲームですけど、面白いですよ?」
次にショックを受けたのは『ニルセン』だった。
あいつは最初、ただのパワハラ野郎だった。だけど、急に人が変わったように誠実で思いやりのある人物になり、そしてついには会社を起業した。
……きっと、あいつには元の世界のボクと違って、助けてくれる仲間や友達が沢山いたのだろう。そう思うと、何故か『奴隷』であるはずの奴への嫉妬が沸き上がってきた。
「そのシナリオ面白かったですか? ならよかったです」
さらにボクに追い打ちをかけたのは『ミケル』だ。
この頃には、すでに『元の世界で、デートしたかったところ』も尽き始めており、酒とセックスばかりの生活を送っていた。
そこでボクも何か始めようと思って、賞に応募するべく物語を書き始めた。
だが、途中でやる気が無くなってしまい、筆を折った。
……その時にボクが諦めた賞をミケルの奴は受賞した。ボクと同じ、何もできない無能だと思っていたのに、あいつは急成長したからだ。
「ご主人様。彼女は少し体調が悪そうなので、どうか今日はお控えください」
そしてとどめを刺したのは『ヨアン』だ。
あいつは元々、女癖の悪いろくでなしだった。なのに、日を追うごとに他者への思いやりや配慮をする能力が強くなっていき、ついにはボクのことすら心配してきたほどだった。
……あいつだけは、いつまでも変わらない『屑』だと思っていたのに。
そんなこともあって、ボクは変わった。
催眠アプリを使って、ニルセンの奴が作った会社の社長となったのだ。
ボクはゲームのパッケージを見て、フンと笑った。
「ふーん……。ずいぶん古臭いな、このゲームは」
そう、前から気が付いていたが、この世界のゲームの水準ははっきり言って古い。
時代で言うと、90年代後半くらいだろう。
……だが、僕は最新の面白いゲームのことなら現代社会でさんざんやってきた。
何せ、ゲーム以外には、嫌われて馬鹿にされてきた記憶しか無い人生だったからだ。
「この世界の主流は、ビジュアルノベルかあ……。まったく、懐かしいったらないよね。イラストも、もうちょっとマシなものがあるだろうに……」
そう、ボクはこの世界に『最新ゲーム』の知識を持ち込んで無双するつもりだ。
こんな時代遅れの感性しかない馬鹿な連中に、目に物を見せてやる。
ボクはそう思いながら、隣で寝ていた性奴隷たちに抱き着いた。
それから数日後。
「社長、おはようございます」
「ああ、うん」
ボクが社長になった話は、ニルセンから通してくれたようだ。
誰にも話していない秘密なのだが、ボクの催眠アプリは実は10人までしか操ることしか出来ない。
催眠アプリは一度かけると解除が出来ないので、実質使えるのは後2人だ。
もしもこの制限が無かったら、ボクは手当たり次第に町中の若い美女に催眠をかけて、どこかの屋敷でメイド奴隷にしていたつもりだった。
なので、彼らには催眠をかける余裕はない。
今日からボクはこの『セントラル・クリエイト』の社長として会議に出るつもりだ。
そう思ってオフィスの廊下を性奴隷ちゃんたちと歩いていると、物陰から声が聞こえてきた。
「なあ、あいつが社長ってマジか?」
「ああ。確か下着姿の女をパーティで侍らせていたって話だぜ?」
「うえ、気持ちわるいな。そういえば以前オフィスでも、同じようなことしてたらしいな」
「気持ち悪……」
「気持ち悪くて悪かったな!」
彼らの声が聞こえていたボクは、思わずそう叫んでいた。
「え? し、社長?」
「その、これは……」
驚愕する二人に対して、ボクの隣にいた性奴隷たちも嘲るように笑う。
「まあ、ご主人様の悪口を言うなんて、勇気がある方?」
「私たちのご主人様のことを悪く言う方はクビよ!」
彼女たちは「どんな時でもボクの味方になる」ように暗示をかけている。
勿論逆らうことも出来ないままに、だ。だからボクが何をしても、何を言っても、無条件でボクの傍にいてくれる。
「え? ……そんな! いくらなんでも……」
「ウヒヒ! お前たちはもうクビだ! さっさと出ていくんだ!」
二人はその発言に呆然とするも、すぐにボクを睨みつけながら会社を去っていった。
「……ちっ……ニルセン社長が居れば……なんで社長はこんな奴を?」
「よほど、弱みを握られてるんだろうな……くそ……覚えてろ……」
そう捨て台詞を残して。
……ったく。またニルセンか。
この会社ではよっぽどあいつの人望が高かったんだろう。
正直、イライラする。
しばらくして、ボクは会議室に到着した。
「それじゃあ、社長。こちらです」
「うん」
そう、ボクが今日話すのは、この世界のゲームにはない3つの要素を入れることだ。
オープンワールド要素。
アイテムクラフト要素。
そして、課金要素。
この3つを入れた上で、ボクの持つ現代知識のキャラクターを用いれば、大ヒット間違いなしだ。
そう思うと、ボクは胸が躍った。
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