第14話 内部の裏切り

夜が更け、病院の会議室には緊張感が漂っていた。外は静まり返り、月明かりが窓から差し込み、薄暗い部屋を青白く照らしていた。夏川 蓮と佐藤 美月、そして藤田 凛は、集めた証拠を前にして、次の一手を練っていた。


「これがメディカスの改ざんされたログです。」美月がデータを指し示しながら言った。「ここに明らかな不自然なアクセスの跡があります。」


「これで彼らを追及できるはずだ。」夏川は頷きながら応えた。「明日、院長にこの証拠を突きつけよう。」


その時、ドアが静かに開き、一人の医師が入ってきた。山本院長の部下である伊藤だ。彼は常に冷静な表情を保っていたが、その目には緊張の色が浮かんでいた。


「伊藤さん、どうしたの?」夏川が尋ねた。


「蓮先生、申し訳ありませんが、今すぐにお話ししなければならないことがあります。」伊藤は低い声で言った。


三人は互いに顔を見合わせ、伊藤の言葉に耳を傾けた。


「実は、院長がメディカスの問題を隠蔽しようとしているのは知っています。」伊藤は真剣な表情で続けた。「しかし、その背後にはもっと大きな陰謀があります。院長だけではなく、三浦 蒼太も関与しています。」


「なんですって?」美月が驚いた表情を浮かべた。


「彼らはこのシステムを利用して、特定のデータを改ざんし、利益を得ようとしています。」伊藤は静かに言った。「私は最初、それが正しいことだと思って協力していましたが、患者の命が危険に晒されていることを知り、もう見過ごすことはできません。」


「伊藤さん、証拠はあるんですか?」藤田が問いかけた。


「はい、これがその証拠です。」伊藤は一枚のUSBメモリを取り出し、三人に手渡した。「ここには、彼らが行った改ざんの全てが記録されています。」


夏川はそのメモリを受け取り、深く頷いた。「ありがとう、伊藤さん。あなたの勇気に感謝します。」


「ただし、彼らは非常に危険です。」伊藤は警告するように言った。「私がこのことを話していると知れれば、命の危険もあるでしょう。」


その言葉に、部屋の中の空気が一層緊張した。


「分かりました、伊藤さん。」夏川は決意を込めて言った。「私たちはあなたを守ります。そして、真実を明らかにします。」


伊藤は微笑み、静かに部屋を後にした。


「これで全てが繋がった。」藤田は冷静に言った。「明日、全てを公表する準備をしなければなりません。」


「そうだな。」夏川は頷き、証拠を手に立ち上がった。「この病院を守るために、私たちは戦わなければならない。」


その夜、三人は証拠を確認し、次の日の対策を練り続けた。外は依然として風が吹き荒れ、病院の周囲に影を落としていた。彼らの戦いはまだ終わらない。新たな真実を追求するために、三人は共に立ち上がる覚悟を決めた。


月明かりが窓から差し込み、三人の姿を照らしていた。彼らの決意は固く、夜の静寂の中で次なる行動を計画していた。


「明日が勝負だ。」夏川は静かに呟いた。「全てを明らかにしよう。」


三人は互いに頷き合い、夜が明けるのを待ち続けた。次の日の朝、彼らは全てを公表し、真実を追求するための新たな戦いに臨むことを誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る