第10話 証拠探し
深夜、星陽総合病院のデータセンターは静寂に包まれていた。廊下の蛍光灯の冷たい光が、無機質な空間に硬質な影を落としている。夏川 蓮と佐藤 美月は、静かに忍び足で進みながら、周囲に目を光らせていた。
「ここがデータセンターです。」美月が小声で言いながら、セキュリティカードをスキャンし、ドアを開けた。中に入ると、巨大なサーバーラックが整然と並び、機械音が微かに聞こえていた。
「急ごう。時間がない。」夏川が警戒しながら言った。
二人は端末に駆け寄り、美月が素早くキーボードを叩き始めた。スクリーンには、メディカスのシステムログが次々と表示される。
「見て。」美月が画面を指差しながら言った。「ここに不自然なログがあります。このタイムスタンプのところで、誰かがシステムにアクセスし、アルゴリズムを改ざんしている。」
夏川は真剣な表情で画面を見つめた。「これが証拠だ。これを抑えれば、山本院長や三浦を追及できる。」
しかし、その瞬間、廊下から足音が聞こえてきた。二人は一瞬顔を見合わせ、緊張が走った。
「セキュリティが来たかもしれない。」美月が囁いた。「急いでデータをダウンロードしないと。」
美月が急いでUSBメモリを差し込み、データをコピーし始めた。スクリーンに進捗バーが表示され、時間がかかることを示している。
「まずい、間に合わないかも。」夏川が周囲を見渡しながら言った。
その時、美月のスマートフォンが振動した。彼女はすぐに画面を確認し、安心した表情を見せた。「旧友の技術者に連絡していたんだ。セキュリティシステムを一時的に無効化してもらう手筈になってる。」
数秒後、警報音が一瞬鳴り、データセンターの照明が一度消えた。その間に、足音が遠ざかっていくのを確認した。
「今だ!」美月が叫び、データのダウンロードが完了するまで待った。「よし、これで全部揃った。」
夏川と美月は、証拠を手にしてデータセンターを急いで後にした。廊下を駆け抜け、階段を下りると、非常口から外へと出た。外の冷たい夜風が二人の顔に当たり、緊張から解放された息を吐き出した。
「これで何とかなる。」夏川は息を整えながら言った。「これで彼らの隠蔽を暴ける。」
「でも、まだ安心できないわ。」美月が真剣な表情で続けた。「次に何をするか、計画を立てないと。」
「そうだな。」夏川は頷き、二人で病院の外れにある小さなカフェに向かった。カフェは24時間営業で、夜中でも暖かい光が漏れている。
「ここで少し休もう。」夏川が提案した。「それから次の行動を決める。」
カフェに入り、二人はコーヒーを注文し、席に着いた。カフェの柔らかな照明と静かな音楽が、二人の緊張を少し和らげた。
「データはここにある。」美月はUSBメモリを手に取りながら言った。「これをどう使うかが鍵ね。」
「まずは藤田 凛に連絡しよう。」夏川が決意を固めたように言った。「彼女なら、これを公にするための手段を知っているはずだ。」
「そうね。藤田さんに協力してもらえば、真実を世間に知らしめることができる。」美月は同意した。
二人はコーヒーを飲み干し、新たな決意を胸にした。夜はまだ深く、その先には多くの困難が待ち受けている。しかし、彼らの心には希望の光が差し込み始めていた。
「行こう。」夏川が立ち上がり、美月もそれに続いた。
二人はカフェを後にし、次の目的地へと向かって歩き出した。これから始まる更なる戦いに向けて、彼らは共に立ち向かう覚悟を決めていた。
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