#78 配信前、すれ違う知り合い(?)

 みまちゃんが住むことが決まって、学校に行くことも決まり、その日は普通にご飯を食べて、お風呂に入って眠って終わりました。

 お母さんたちも長旅で疲れてるそうで、すぐに寝ちゃったしね。

 僕も修学旅行明けというのもそうだけど、みまちゃんのあれこれでちょっと疲れちゃったからね……。

 ご飯を食べてお風呂に入ったら、みまちゃんはすぐに寝ちゃったから、寝ちゃったみまちゃんを連れて一緒に寝ました。


 そうこうしている内に月曜日の朝になり、今日は恋雪お姉ちゃんとのコラボ配信の日に。

 あらかじめお家の住所は貰っていて、今日はそこへお昼から行く形に。


 ちなみに、恋雪お姉ちゃんに出したクイズは、


『僕が三番目に好きな食べ物は何?』


 というもので、答えはお稲荷さんです。

 それで、恋雪お姉ちゃんの答えが、


『お、お稲荷さん……?』


 と来たので、正解となっています。


「それじゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい、気を付けていくのよ? あと、迷惑をかけないようにね?」

「わかってるよ~。みまちゃんのことお願いします」

「あぁ、任せてくれ」

「……おかーさん、どこかいくの……?」

「ちょっと用事……というより、えーっと、お仕事、かな」

「……みまは、いっちゃだめ、なの?」

「ご、ごめんね、さすがにみまちゃんが一緒だとその、すごいことになっちゃうから……」


 さすがに、僕のことをおかーさんって呼んでくる女の子が現れたら色々と大変なことになっちゃうからね……。

 今の僕は高校生だし、そんな人が子供なんていたら何が起こるかわからないもん。


「……きらいになった、わけじゃない、の?」


 今にも泣きそうな顔で見つめて来るみまちゃん。


「それはもちろん。みまちゃんのことを嫌うことはないから、大丈夫。帰って来たらいくらでも一緒にいてあげるし……そうだ、明日みまちゃんが学校に行くために必要な戸籍を取りに行くんだけど、その後一緒にお出かけしよっか?」


 明日まで振替休日でお休みだし、みまちゃんの戸籍を取りに行ったら後は色々と自由だからね。

 一緒にお出かけするのもいいかも。

 そう思ってみまちゃんに提案すると、


「おでかけ……!」


 ぱぁっ! と嬉しそうな笑みを咲かせました。


「うん、だから今日はお留守番してて? ね?」

「……うん、おかーさんとおでかけ……みま、がまん、するっ」

「ふふ、うん、いい娘だね。それじゃあ、僕は行ってくるからね」

「……いってらっしゃい」


 ぱたぱたと小さく手を振るみまちゃんに笑みを返してから、僕はお家を出ようとして……その横ですごくいい顔で倒れているお母さんとお父さんが……って!


「二人ともどうしたの!?」

「……私の娘と孫が可愛すぎて……ごめん、幸せが鼻から……」

「……俺は、口からだ……母さん……」

「おじーちゃん、おばーちゃん、どーしたの……?」

「あ、あー……えーっと、その、ちょっとだけ調子が悪いのかも」

「……そー、なんだ。おかーさん、いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」


 改めてみまちゃんとそう言い合いながら、僕はお家を出ました。

 なんだろう、みまちゃんにこうして見送られるの、すごくいいなぁ……。



 今日は出張みたま家事サービスの二回目で、更には事前情報で汚部屋疑惑がある恋雪お姉ちゃんのお家。

 事前にお掃除道具とか、調理道具があるかどうかは訊くと、一通りはあるみたいなので、予め買っておくのは食材と一部の道具とかくらいです。

 それらを商店街で買い揃えて、恋雪お姉ちゃんのお家へ。

 恋雪お姉ちゃんのお家は隣町にあるみたいで、浜波市にあるマンションの一室みたいです。


 というか……お姉ちゃんが住んでいたマンションと同じらしくて、そのマンション自体らいばーほーむが経営しているマンションみたいです。

 なんでも、配信者向けのマンションのようで、防音設備が整ってるとか。

 らいばーほーむのライバーなら格安で入居できるそうです。

 一応、そうじゃない人たちも住めるそうだけど。

 たしか、他にもらいばーほーむの人が住んでるらしいです。

 半分くらいはそのマンションに住んでるらしいけど。


 と、そうこうしている内に、恋雪お姉ちゃんが住むマンションに到着。

 外観は普通のマンションだけど、一部屋は結構広めに作られてるそう。

 僕は早速入ると、予め教えられていた番号を呼び出しました。


『は、はいっ、し、椎菜、さん、ですかっ……?』

「そうだよっ!」

『い、今、開けますっ、ね……!』


 オートロック式の扉を恋雪お姉ちゃんが開けてくれたので、僕はそそくさと中へ。

 七階に住んでるそうなので、エレベーターに乗って上へ行こうとすると、


「あ、すみません、乗ります」


 そう言いながら一人の女の人……女の子(?)が入ってきました。

 無造作に伸ばされた黒髪に、ちょっとだけよれた感じのあるTシャツ……結構だぼだぼ? ズボンとか穿いてる、のかな?

 すごく眠そうな顔……ちゃんと眠れてるのかな?

 身長は……うーんと、そんなに高くない、かな?

 150センチもない、よね、どう見ても。

 多分、140センチ半ばくらい。

 あまり人目を気にしなさそうだけど、可愛い人だなぁ……。

 ここに住んでる人、だよね?


「……」

「……」


 ただ、なんだろう、すごく見られてる……?


「あ、あの……?」

「あ、ごめんなさい。ちょっと、見たことある手だなーって思ったので」

「手、ですか……?」

「そうそう、まあ気にしねぇでください。多分、思い違いだと思うので」


 そう言う女の子は、どこか気だるそうに笑いました。

 なんだろう、疲労でも溜まってるのかな……?

 うーん……。


「あの、よかったらこれどうぞ」


 僕はお買い物袋とは別に、お家から持って来たカバンの中からおにぎり一つほど取り出すと、それを女の子に手渡しました。


「……これは?」

「あ、えと、その、すごく疲れてそうだったので、その、もしよかったらおにぎりを食べないかなぁって……あ、い、いらないようでしたら大丈夫ですから!」

「え、天使……?」

「ふぇ?」

「あ、い、いやっ、何でもねぇです。じゃ、じゃあ、ありがたくい、いただきます」

「はい、どうぞっ!」


 にこっと笑って差し出すと、女の子はなぜか胸を抑えながらおにぎりを受け取りました。

 どうしたのかな……?


「こ、この声、やっぱり……い、いやでもっ、こ、このうちが聞き間違えるはずがっ……」

「あ、あの……?」

「あっ! な、なんでもねぇです!? あっ、つ、着きましたので、うちはこれでっ!」


 なぜか慌てる女の子は、七階に着いた瞬間、足早に去っていきました。

 あの人もこの階なんだ?


「あっ、恋雪お姉ちゃんの所に急がないと!」


 なんだかあの人の声聞き覚えが合ったような気がするんだけど、どこだっけ……? それに、あの話し方も……うーん?

 まあでも、いっか。

 それよりも、恋雪お姉ちゃんの所に行かないとだしね。

 僕は恋雪お姉ちゃんに教えられたお部屋の前に到着してすぐインターホンを鳴らしました。

 すると、中からドタバタと足音が聞こえて、ガチャッ! と玄関のドアが勢いよく開きました。


「い、いらっしゃいっ、し、椎菜さんっ!」

「こんにちは、恋雪お姉ちゃん! 今日はよろしくお願いしますっ!」

「は、はいぃっ! な、中へどうぞっ……!」

「お邪魔します!」


 早速恋雪お姉ちゃんのお家の中へ。

 最初に通されたのはリビングで、中はすごくシンプルと言いますか、家具は全部黒と白で構成されていました。

 モノトーンって言えばいいのかな?

 あと、テレビが大きい。

 でも……。


「あれ? 恋雪お姉ちゃんってたしかゲーム好きだよね? ゲームはないの?」

「あっ、え、えとっ、わ、わたしは全部、その、し、寝室、にっ……!」

「そうなんだね。何か理由があるの?」

「ね、寝落ち、しちゃう、ので……」

「なるほど」


 ということは、寝室はゲーム用のお部屋も兼ねてるんだ。

 ということは、配信用の機材もありそうだね。

 お掃除するのなら、その辺りは気を付けないと。


「それじゃあ、早速準備しちゃいますね! なんだか今日は、すごく時間がかかりそうな予感がしてるので!」

「す、すみませぇん……」

「いえいえ! 好きでしている事なので! あ、あと、入っちゃいけないお部屋とかってありますか? その、事前にそう言うことを訊いておかないとですので」

「と、特には……あ、い、一応、寝室の隣にある部屋は入ってもいい、です、けど……で、できれば、そのお部屋にあるぱ、パソコンには触れないでもらえれるとっ……!」

「何かあるの?」

「わ、わたしの収入源が……と、トレーダーなの、でっ! ちょっとしたミスで、途方もない金額が、と、飛んじゃいます……」

「じゃ、じゃあ、そのお部屋は入らない方がいいですね。僕も恋雪お姉ちゃんに迷惑はかけたくないので」


 そう言う大事な場所なら入らないことが一番だよね。


「そ、そうしていただけるとぉ~……い、一応、最悪の事態はあっても、す、すぐに取り戻せる、ので……」

「そうなんだ?」

「は、はいぃ……こ、これでも、結構稼いでます、ので……」

「へぇ~~~。すごいね、恋雪お姉ちゃん!」

「はぅぇ!? あっ、ぜ、全然っ、わ、わたしなんてっ……で、でも、えへぇ……椎菜さんに、ほ、褒められると、嬉しい、ですぅっ……!」


 恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに笑う恋雪お姉ちゃん。

 恋雪お姉ちゃんってたしか24歳だったはずだけど、あんまり見えない気がします。

 なんでだろう?

 らいばーほーむでは一番胸が大きいそうだけど……なんだろう、僕より大きい人がいるってわかってると、すごく安心します……。


「そ、そういえばっ、あのっ、こ、コースは、えと、配信中、に……?」

「あ、はい。今言っちゃってもいいんですけど、それだと面白くないかなぁって。恋雪お姉ちゃんが今がいいなら、今言うよ?」

「あっ、い、いえぇっ! そ、そういうのは、その、ど、ドキドキしたいのでっ……!」

「そっか。じゃあ、そうするね! それから、冷蔵庫は……」

「む、向こうに」

「ありがとう! 先に食材を入れて来ちゃうね!」


 とたとたと足早に冷蔵庫に行って、道中で買って来た食材を入れていきます。

 最後までいるかはわからないけど、その辺りは配信中にわかるしね。


「さて、と……恋雪お姉ちゃん、配信の準備は大丈夫?」

「だ、大丈夫、ですっ……! こ、コメント用の、ぷ、プロジェクターもばっちり、です」

「じゃあ、そろそろ始めよっか!」

「は、はいぃ!」


 準備万端、僕たちは早速配信の準備に。

 待機画面に移行すると、すぐに人が集まってきました。

 コメント欄もいっぱい書き込みがあるし……一応今日って平日の朝なんだけどなぁ……。

 いつもよりは少ないと言えば少ないけど。

 それでも、十分すぎるくらいの人数。


「じゃあ、やろっか!」

「が、がんばり、ますっ!」


 そうして、出張みたま家事サービスの第二回目が始まりました。


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 しれっとすれ違うわたもちママです。

 椎菜は気付いていませんが、あちらは椎菜を見た瞬間に「あれ? この娘、みたまちゃんっぽくない?」って疑念を抱いたので椎菜を視ていましたが、声を聴いてすぐにみたまだと看破しました。

 というか、ビジュアルで若干気付いてましたけどね。みたまの中身の情報って「ちっちゃい」「巨乳」「可愛い声」だからね。

 それからこれもさらに余談。らいばーほーむのライバーで一番の金持ちは実はうさぎです。

 あいつの総資産ちょっとおかしいから……。一応、総資産の順番でも書いておきます。


 うさぎ>>>>ふゆり>>いくま>ひかり>たつな>デレーナ>刀>いるか>リリス>みたま>暁>はつき


 みたいな感じです。うさぎがぶっちぎってます。ふゆりに関しては、本職が本職なので……。

 学生組は何気にリリスが一番稼いでます。現状、みたまの方が稼いでそうに見えますが、リリスは配信以外にもあることで活動をしております。というか、関東にいる理由がそれだしね。

 ちなみに、わたもちママが入ったら場合、わたもちママの位置はデレーナとたつなの間くらいになります。

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