#45 寝起きと、ちょっとした異常事態

「んっ、ふあぁあぁぁぁ~~~~っ……ふぅ、みなさん、おはようございまぁ~す~」


【おはよう!】

【おっ、起きた!】

【もう八時だけどな!】

【結構熟睡してたな……】


「ふふふ~、みたまちゃんとのお泊まりが想像以上に、私のスタミナを持って行っていたようでしてぇ~。さてさてぇ~、電凸は来ますかねぇ~……あ、来ましたねぇ~。まずは、リリスさんからのようですぅ~」


【陛下からかいww】

【さぁ、どう来る!?】


『おはようじゃ! 幼き少女を愛する狂戦士よ!』


【草ァ!】

【第一声が既に面白いのはずるいww】

【間違ってないのが尚更酷いww】


「はい、おはようございますぅ~」

『うむ! して、みたまはどうじゃ?』

「まだ寝てますねぇ~……っとぉ~?」

「ん、んんぅ…………ふあぁぁ……あふ……んゅ……」


 夢の世界から引き戻されるように、僕の意識がゆっくりと覚醒。

 薄く目を開くと、むくり、と体を起こして軽く伸びをしました。


【寝起き声が可愛いなぁオイw】

【絶対寝ぼけてる】

【寝起き顔可愛いんだろうなぁw】


「みたまちゃん、おはようございますぅ~」

「んんぅ……おあよ~……」


 ふゆりおねぇたまが挨拶をしてきて、寝ぼけながらも挨拶を返します。


「はぅあ!」


【ぐふっ!】

【舌ったらずになっとる!】

【わたもち:朝から幸福がッ……!】

【起きてたんか、ママ!】


「んんぅ~……ふゆりおねぇちゃん……しゅき~……」


 近くですでに起きていたふゆりおねぇちゃんに、僕は笑顔と共に抱き着きました。

 あったかい……。


「!!!???」


【ファッ!?】

【え、何今の!?】

【は、破壊力! また破壊力ゥゥゥゥゥう!】


『むむむぅ!? ふゆりよ! みたまの声を聴かせるのじゃ!』

「かしこまりですぅ~!」


 ほいさ! とふゆりおねぇちゃんが手にしていたスマホを僕の耳にあてがってきました。

 寝ぼけている僕はどういうことかわからず、とろーんとした顔で首を傾げる。


「リリスさんですよぉ~」

「リリスおねぇちゃん……?」

『うむ! おはようじゃ! 元気かの?』

「わぁ~、リリスおねぇちゃんらぁ……きょーもかわいー声でしゅ……」

『ぐはぁ!? お、起き抜けそれは、は、反則じゃ……ガクッ』


【うわぁ……一撃必殺すぎる……】

【まあ、今のは仕方ない……】

【私でもちょっと危なかった】


「んんぅ……おきがえ、しなきゃ……」

「へ?」

「んんん~~~……」


 もぞもぞ、と僕は起きたら最初にする、お着替えをするために、服を脱ぎました。

 全部。


「――――!!!」


【ロリコンが声にならない声を出しているぅぅ!?】

【ど、どうしたロリコン!? 何があった!?】

【ってか、なんか衣擦れの音が聞こえるよ!?】

【ま、まさか、着替え中なのか!?】


「――ラッキースケベ! ラッキースケベですよぉ~~~!?」


【何言いだしてんの!?】

【それ言うの男側じゃねぇ!?】

【いや、ロリコンはロリ相手には心が男になるから……】

【草】

【間違ってねぇけど間違ってる!ww】


 ふゆりおねぇちゃんが何か言ってる気がするけど……気のせいかなぁ……?

 ごそごそ、と服を全て脱いだ僕は、着替えを探して荷物を置いたカバンに。


「んん~……ぱんつ……ぶらじゃー……」


【ぶふっ!】

【みたまちゃんの口からパンツとかブラジャーって言葉出て来るのが違和感ってか、興奮するッ……!】

【わかるっ、普段下ネタとか言わない娘が突然下ネタを言い出したら、興奮する!】

【お前ら……】

【天空ひかり:(#^ω^)ピキピキ】

【ハッ!? し、シスコンが起きてるだとッ!?】

【し、しまった! これは罠だ!】

【猫夜はつき:勝手に自滅しただけだと思うぞ】

【デレーナ・ツァンストラ:その通りね】


「んっ、ふあぁあぁぁぁ~~~~…………んんぅ、目が覚めたぁ~…………って、ふぇ?」


 一度大きな欠伸をしたら、なんだか目が覚めて……って。


「みたまちゃん、ちゃんと意識は覚醒しましたぁ~?」

「……あ、え、あ、う、うん、覚めた――きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

「あぁぁ~~! みたまちゃんが悲鳴を上げたので、ここで配信は切りますねぇ~~~!?」


【草】

【草ァ!】

【いやまぁ、裸見られるは一大事だろww】

【この落ちは読めなかったなァッ!】

【天空ひかり:何ィ! みたまちゃんが肌かぁ!? というか、え、この配信は一体……】

【春風たつな:後で教えるから、君も着替えるように】


「で、では、おつふりぃ~~~!」


 と、ふゆりおねぇたまがそう言うと、しゅばっ! と機敏な動きで配信をストップさせていました。


「と、とりあえずみたまちゃん、早く服を着てくださいねぇ~!」

「う、うんっ!」


 ふゆりおねぇたまに促されて、いそいそ、と僕は服を着ました。


「はふぅ……お、お騒がせしましたぁ~~っ……」


 着替えを終えた僕は、ふゆりおねぇたまに顔を真っ赤にしながらベッドの上で正座していました。


「い、いえいえぇ~、気にしないでいいですよぉ~。……むしろ役得でしたしぃ~……」

「ふぇ?」

「あ、何でもないですよぉ~」

「あぅぅぅ~……お見苦しい物を見せしてしまい、本当にすみませんでした……」

「見苦しくなんてありませんよぉ~! むしろ、素晴らしか――んんっ! 綺麗でしたからぁ~!」

「ふあ!? そ、そそそそ、そんなこと言われて、も、は、恥ずかしいですぅ~~~~っ」


 うぅ、恥かしいよぉ……。



 あの後、ふゆりおねぇたまと一緒に朝ご飯(僕が作りました)を食べて、解散となりました。

 ちなみに、ふゆりおねぇたまは車を持っているみたいで、そのままお家まで送ってくれました。

 車に関しては……その、いい車、だったとだけ……。


 そうしてお家に帰り、軽く荷物を置いてから、ふと、僕は散歩がしたくなって書置きを残してお家を出ました。

 お姉ちゃん、まだ帰って来てなくて……。

 たつなさんから連絡があって、そこには、


『まだひかりの体が戻ってないから、お昼ごろに帰すよ』


 と書かれていました。

 何があったの、お姉ちゃん……!

 というわけで、僕は軽く散歩をすることに決めました。


「……あ、そうだ。久しぶりに、あそこに行こうかなぁ」


 ふと、少し前までは足を運んでいた場所へ行こうと思い立ち、早速とばかりにそこへ向けて歩き出しました。



 実はと言うか、美月市には山があります。

 とはいっても、そこまで大きな山じゃないけど、それでも立派な山があって、その中には神社があるんです。

 女の子の体になる前は定期的に足を運んでいたくらい、僕はその神社が好きでした。

 自然がいっぱいの環境っていいよね、ということです。


 とは言っても、あまりそこへ行く人は少なくて、いるとしたら……それこそ、お爺さんやお婆さんくらいかなぁ。

 僕くらいの年代や、20代~40代くらいの人でも、行こうと思わない限りは行くことのない、そんな場所。

 何を祀っているのかはよく知らないけど、それでもなんとなく、僕はそこが好き。


「んん~~~っ! 久しぶりに来たなぁ……」


 山を登る事、十分。

 目的地の神社に到着。


「むむっ、またゴミが……ふふふー、こんなこともあろうかと、お掃除道具を置いておいてよかった!」


 この神社、かなり好きな場所なんだけど、たまにごみを捨てる人たちがいて、汚くなっている時があります。

 それが嫌で、僕はここにお掃除道具を置いておくことにしていました。


 ただ……最近は色々あってすっかり頭の中から抜け落ちてたから忘れちゃってたから、僕も似たようなことになってるけど……うぅ、ごめんなさい、神様……。


 その代わり、今日は綺麗にしますからね!

 そう意気込んだ僕は、せっせとお掃除を始めました。


 まずはごみをごみ袋に入れる。

 缶やペットボトルのごみ、他にもコンビニのパンやおにぎりのごみもあったりして、かなり酷い。

 神社にごみを捨てるなんて酷いよね。


 これは許せませんっ!


 と、そうしてお掃除をすること二時間ほどで、なんとか綺麗になりました。


「ふぅ……やっぱり、綺麗な神社はいいなぁ」


 綺麗なった神社を見ながら、お茶を一口。

 冷たいお茶がすごく美味しいです。


「お参りをしてから帰ろうかなぁ……」


 なんて思っていると、


『くぅん……』


 と何かの鳴き声が聞こえてきました。


 今のは……?


 気になって、鳴き声が聞こえてきた場所を探してみることに。

 その途中も鳴き声が聞こえていて、なんとなく急がないといけない、なんて思って急ぎ足で探してみる。

 がさがさ、と草をかき分けたり、けもの道を進んで行くと……。


「くぅん……」

「狐さん……?」


 そこには、怪我をした真っ白な毛並みの狐さんがいました。

 この辺りって狐さんいたんだ。

 って、そうじゃなくて!


「大丈夫!?」


 僕は慌てて白い狐さん駆け寄る。

 怪我とかには詳しいわけじゃないけど……かなり痛そう……。


「と、とりあえず消毒! じゃなくて、まずは境内の方に行かないと!」


 僕はそっと狐さんを抱きかかえると、境内の方へ戻りました。

 それから、別のタオルを地面に敷いて、そこに狐さんを寝かせる。


「はっ、はっ……」


 狐さんの呼吸は荒くて、なんだか苦しそう……。

 ともあれ、軽い手当だけでもしてあげないと!


 僕はすぐにお水を怪我をしている個所にかけて、汚れを取りました。

 幸いと言うか、そこまで出血がひどいわけじゃないけど、それでも傷があることに変わらない。

 すぐさま綺麗なタオルを取り出して、狐さんの怪我しているところに巻いて行きました。


「うぅ、知識もないし、ば、ばい菌が入っちゃってたらどうしよう……!?」


 もちろん、野生の動物さんだとは思うから、その、僕がこうして必死になる意味はないって言われるかもしれないけど、それでもこう言うのを見ちゃうと放っておけないんです。


「一度、お家に連れ帰った方がいい……? で、でも、お姉ちゃんになんて言えば……」


 おろおろ、とどうすればいいか迷っている僕でしたが……。

 くぅ~~~……という音が鳴りました。

 え、と思って音のした方を見ると、そこには狐さん。


「も、もしかして、お腹空いてる……?」


 わかるわけないとは思うけど、なんとなく尋ねてみると、狐さんはこくり、と頷きました。

 え、言葉わかるの……?

 けど、食べ物……。


「……うん、ちょっと待ってて! すぐに戻るから!」


 少しだけ悩んだ僕は、することを決めて一度山を下りました。

 急がないと思った僕は、周りに人がいないということもあって、身体能力を向上させて走りました。

 そうして、一度お家に帰った僕は買っておいた果物と塩分少なめのおにぎりを持って、さっきの狐さんの所に戻りました。


「お待たせっ! ……って、あれ?」


 狐さんがいたところに戻った僕は、思わずこてんと首を傾げました。

 狐さんの傷……ちょっと治ってる?

 気のせい、かな?


「ともあれ、はい、ご飯だよっ!」


 果物とおにぎりを横たわる狐さんの前に置くと、狐さんはどこか嬉しそうな雰囲気を出しながら、ぱくぱくと食べ始めました。


 本当は野生の動物に餌を上げるのはダメなんだけど、さすがにこのままじゃ死んじゃうかもしれないし……。

 もし街に降りて来たら、その時は僕が責任もって飼うということで……。


 そんなことを考えている内に、狐さんは満足げな様子に。

 もう食べちゃった。


「あれ? やっぱり傷が減ってるような……」


 ご飯を食べ終え、ちょこんとタオルの上に座った狐さんの体には、傷がなぜかほとんどありませんでした。

 さっきまでボロボロだったような……?


「まあでも、いっか。狐さん、もう大丈夫?」


 と、僕が尋ねると、狐さんはこくりと頷き、僕に頭を下げると、どこかへ去っていきました。


「ばいばーい!」


 その後ろ姿を見送りながら、僕は笑顔で手を振った。

 ……あ! せっかくならもふもふさせてもらいたかったっ!


「はぁ……仕方ないよね。とりあえず、お参りして帰ろう」


 もふもふできなかったことを残念に思いながら、僕は神社でお参りをして、荷物をまとめるとお家に帰りました。



「たっだいまー! 椎菜ちゃーん!」


 お家に帰ってからお風呂に入ってのんびりしていると、お姉ちゃんが帰ってきました。

 随分遅かった気がするけど。


「お帰り、お姉ちゃん!」

「わーい、椎菜ちゃーん!」

「わぷっ」


 とたた、とお姉ちゃんを出迎えると、僕を見るなりいつものように抱き着いて来ました。

 昔からされ続けて慣れてるけど、身長が縮んでいる影響で、いつもお姉ちゃんの胸元に顔が行っちゃうのは恥ずかしい……。


「椎菜ちゃんもう、天才! 私、みたまちゃんのASMRでつい昇天しちゃったよ!」

「お姉ちゃん、それ大丈夫なの……?」


 そもそも、僕と千鶴お姉ちゃんのASMRを聴いただけで昇天するって、お姉ちゃんの魂って体から離れやすいのかな……?


「まあでも、お泊まり配信が見れなかったのが憎いっ……! なんであそこで気絶しちゃったの、私ぃ!」

「あ、あははは……」


 お姉ちゃんが現れたのって、朝のコメント欄だったもんね……。

 けど、そんなに見たかったんだ。

 前にも見逃しちゃって悔しそうにしてたけど。


「あ、そうだ。椎菜ちゃん、はいこれ」


 と、僕を離したお姉ちゃんは、右手に持っていた物を僕に差し出してきました。

 封筒?


「どうしたの、これ?」

「んー、なんか椎菜ちゃん宛にポストに入ってた封筒。心当たりは?」

「ないかなぁ……らいばーほーむ関係じゃないの?」

「いや、らいばーほーむならちゃんと会社名が書かれてるから違うよ?」

「そっか……でもこれ、何が入ってるんだろう?」


 少なくとも、ちょっと膨らんでるというか……何か硬いものが入ってるよね?

 けど、大きさは……結構小さい?

 まあでも、開けてみようかな。

 少なくとも僕宛みたいだし、確認はしないと、だよね。

 早速封筒を開けて、中の物を取り出してみる。

 すると、一枚のお手紙と、これは……えーっと、髪飾り……?


「わ、何それ? 綺麗だね?」


 お姉ちゃんが興味を示した髪飾りは、透き通った鈴のようなものが付いた組紐のようなものでした。

 硬いと思った物は鈴だったみたいです。


 けど、なんでこんなものが入ってるんだろう?

 貰うにしては心当たりがないし……。


 とりあえず、お手紙を読んでみよう。


「えーっと……」


『初めまして……いや、私は其方を知っておる故、初めて、というわけではないが、其方からすれば初めてであるため、初めてと言わせてもらう。突然の文と贈り物に戸惑っている事だろう。それについては警戒する必要はないと言わせてもらおう』


 え、えーっと、いきなりついていけないけど……なんだろう、これ。

 と、ともあれ続き……。


『つい先ほど知ったが、其方はかなり特殊な状況と見受ける。この世の物ではない特殊な力に晒されているようだが、そこはいいとしよう。一つ、其方には礼をせねば礼をせねばと常々思っていた。そして、何がいいかと考えていたのだが……ふと、其方のやってみたいこと、と言うのが視えた故、その一助になればと思い、組紐を贈らせてもらった。少々特殊なことになるが、気にする必要はない。もとより、其方には既に特殊な力が身に付いている。何かと便利にはなると思うので、上手く活用してほしい。我が神子よ』


 ……えぇ? いや、えぇぇぇぇ……?

 あの、まっっっっっったく! 意味がわからないです!!

 なにこれ、いたずら?

 だ、だけど、いたずらだけ贈り物なんてしないと思うし……。

 本当になにこれ……?


「なんだろうねぇ、この手紙」

「うん……」


 横から覗き込むような形で一緒に見ていたお姉ちゃんもどこか困惑していました。

 むしろ、送られてきた僕の方が困るんだけど。


「というか、神子って。椎菜ちゃん、いつから巫女さんみたいになったの?」

「なった覚えはないけど……というより、僕関りはないよ? そう言う人たちと」


 そもそも、神職関係の人にお知り合いはいないし……。

 な、謎すぎる……!


「まあでも、TS病っていうファンタジーな病気がある世の中だしねぇ。案外これ、神様からの手紙だったりして」

「あ、あははは……さ、さすがにない……んじゃないかなぁ?」


 け、けど、たしかに否定はしきれないような……。

 今更神様が実は存在しているんです! なんて言われても、不思議じゃない気がするし……第一、身体能力がずば抜けて高くなっちゃってるもん。魔法があるんだ! とか、実は妖怪がいる! とか言われても、その……案外納得しちゃいそうな気がします。

 幽霊だけは認めないけどね……!


「とりあえず、付けてみれば? 何か特別な力を持った何か! って可能性もあるし」

「さ、さすがにない……とは思う、けど…………うん、付けてみる」


 あれ? けどこれ、どうやって付ければ……と、とりあえず、乗せたらくっつくかな?

 なんて考えながらこめかみの少し上くらいに付けてみました。

 すると、何もしてないはずなのに、そこにくっついた。

 え、なにこれすごい!?


「それ、どうやって止まってるの?」

「わ、わからないです……」

「へぇ~、本当に不思議だねぇ。でも、特に何も起こらないね?」

「そう、だね?」


 特殊なことになる、って書いてあったけど、何も起こらない……?

 うーん、やっぱりいたずらなのかなぁ。

 なんて、そう思いながらもう一度お手紙を見てみると、下の方に短い言葉が書かれていました。

 えーっと……?


「『転神』……? って、ふぇ? ふえぇぇぇぇぇ~~~~~!?」

「椎菜ちゃん!?」


 お手紙に書かれていた文字を読み上げた瞬間、組み紐が突然光り出して、直後に僕の体も光り出しました。

 え、何!? 突然なにぃ~~~!?

 あまりにも突然すぎる出来事に混乱しだす僕。

 そうして、奇妙な感覚が体に現れるのを感じた数秒後、光が収まり、何事もなかったかのような状態に。


「はぁ~~~~~……び、びっくりしたぁ~……」


 いきなり光り出すという、すごくおかしな状況に見舞われたものの、特にこれといっておかしなところもなかったので、僕は大きく息を吐きながら、そう呟きました。


「お、お姉ちゃんは大丈夫だった? その、かなり光ってたし……って、お姉ちゃん? どうしたの?」

「……し、椎菜、ちゃん?」


 口をあんぐりと開けるお姉ちゃんが気になって、こてんと首を傾げると、お姉ちゃんがぷるぷると僕のことを指さしていました。


「あ、頭……それから、その、お、お尻……」

「頭? お尻……? …………え」


 お姉ちゃんに指摘されて、一体何だろうと右手で頭を、左手でお尻の辺りを触ってみると……何か温かくて、もふもふした何かがありました。

 こう、絹のような手触りと言うか、なんというか……ただ、その、すっごく温かくて、もふもふした物、という事だけはわかるんだけど……。


 ……そう言えば、持ち上げた腕にある袖もおかしい……なんで、振袖みたいになってるの……?

 それに、肩から二の腕の中くらいがスースーするというか……涼しい。

 あと、すっごく気になるのはそこだけじゃなくて…………僕の髪の毛、銀色、だったっけ……?


「え? え……?」

「し、しし、椎菜ちゃん、あの、と、とりあえずこれ見てこれ」


 困惑する僕を見てか、お姉ちゃんが下駄箱の扉に設置されている姿見を、扉を開けることで僕に見せてきました。

 そこに映っていたのは……神薙みたまでした。


「???????」


 宇宙ネコ、というものがインターネット上にはあるけど、僕はこの日、初めてあのネコさんの気持ちがわかった気がします……。


 ……異常事態が起こると、人ってあんな顔になるんだね……。


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 突然ファンタジーになった本作です。

 おそらく、大多数の人は思ったでしょう。早くね? と。いや私も思いましたが、私が自制できなかった。なんかもう、みたまちゃんモードが書きたかったんや……なので、出番自体はそこまで多くないですが、今後たまーにみたまちゃんモードになります。タグに魔法少女、増やすべきか……。

 ちなみにですが、今回の話に関して、この神社設定は私がなんとなくで以前書いたTS小説の設定を流用しております。まあ、一度も出してないし、いいかなと。考えるのが面倒だったわけではないです。ないったらない。

 それから、完全にストックがありません。なので、次の投稿は来週の土曜日~月曜日の三日間になります。お待ちください!

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