裁き人

命名命

第1話 プロローグ

薄暗い窓のない部屋に1人の男が椅子に腰掛けている。

俯き、ピクリとも動かず良くみると椅子に手枷と足枷で拘束されている。

息はしており、生きてはいるようだ。


その部屋に1人の人物が入室してきた。

全身黒ずくめで、顔には白い仮面をつけており、男か女かもわからない。

その人物は真っ直ぐに椅子に拘束された男に近寄り懐から取り出したアイスピックを握り躊躇せず、男の太ももに突き刺した。


「ぐぁぁぁあああ」


突然の痛みに意識を失っていた男は悲鳴をあげ目を覚ます。


「な、何が・・・、ぐっっ、な、なんなんだ」


目を覚ましたが、まだ意識が完全に覚醒せず現在の状況がわからず混乱した男に、ボイスチェンジャーを通した声がかけられた。


『お目覚めかな、何故いま拘束されているかわかるかい?』


ボイスチェンジャーにより性別不明な声の問いかけに、痛みに喘ぐ男は必死になり答える。


「突然なんだ!! 何が目的だ! ふざけた事ぬかしてないで早く俺を帰せ。 こんな事しておいてただじゃすまさねぇからな!」


『ふふふ、ずいぶんおかしな事をおっしゃるんですね。 ただじゃすまないですか・・・、いったいどうするつもりでしょうかね。』


「訴えてやるに決まってるだろ、覚悟しておけよ。」


『訴えるですか・・・、殺人者のくせに?』


正体不明の人物は、非常におかしかったのかバカにしたように笑いながら問いかけた。


「さ、殺人だと? お、お前は裁判の結果を知らないのか、俺は無罪だ! 判決で証明されている!!」


どもりつつも男は問いかけを否定する。


『無罪ですか、確かに判決は無罪でしたね。 でもあなた殺しましたよね。 あ、反論は必要ないですよ。ちゃんとわかっているんで。』


「ちっ、だからなんなんだよ、俺が殺人をしていようがお前に関係あるのかよ。」


痛みなのか図星なのか冷汗を流しながら男は答える。


『関係ですか、関係はまぁあると言えばありますね

・・・、ところでー貴方は死刑制度ってどう思われますか?』


「死刑だと? 突然なんなんだ。」


『人を殺した重犯罪者は死刑になる。 んー、死んで終わり、また死刑判決後は執行まで税金で生かされて、懲役刑より楽な立場、法務大臣は自分が判子を押し死刑を実行する責任逃れでなかなか決断せず無駄に長生きする・・そのような事で被害者遺族は納得できると思いますか?』


「だからなんだって言うんだ、俺は死刑ではなく無罪判決がでたんだ、関係ないだろうが」


現状から嫌な予感を覚えつつ不安に押しつぶされないよう去勢をはる。


『実は私も死刑制度には反対なんですよ。だって・・・』









『もったいないでしょ?』

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