おじさん特製ハンバーグ
スムージー開発の翌日……今日は大食い大会二日目だ。
行こうと思ったけどやめておく。昨日、スムージーで盛り上がりすぎて、ハンバーグのことすっかり忘れてしまったのだ。
食材とかそのままだし、ウングが買った肉は高級肉だったので、早い内に使ってしまいたい。
大食い大会は三日目もあるし、今日は職場のキッチンでハンバーグを作ることにした。
というわけで、俺はお昼前に職場へ行くと……そこにいたのは。
「にゃあ」「がるるー」「きゅうん」
「お、ユキちゃんたち。それに……なんか意外な組み合わせ」
「こんにちは、ゲントクさん」
「やっほー」
なんと、バレンにヴェルデ……高貴系の組み合わせ。
二人を交互に見ると、バレンが言う。
「ヴェルデに会ったのは偶然ですよ。昨日、ウングが楽しそうに『スムージー、最高だった』なんて言うんで……今日も何か作るのかと、見に来てしまいました」
「そ、そうか……で、ヴェルデは?」
「私はこの子たちの護衛みたいなものね。ロッソとアオは大食い大会、ブランシュは大食い大会からの依頼で食べ過ぎた人の治療に行っちゃったから」
「そうなのか……大変だな」
「ええ。ブランシュ、ここに来たがってたけどね。私は大食い大会に興味ないし、子供たちと一緒に来ただけ。スムージーだっけ? それ、美味しいの?」
「ボクも興味ありますね。ウングがあんなに喋るの、初めて聞きましたし……今日は用事で来れないですけど、用事がなかったらきっと来てますね」
そこまでかい。
まあ、今日はスムージーじゃない。材料は残ってるからあとで作るけど。
俺は子供たち、ウングたちを見て言う。
「ふっふっふ。今日はハンバーグを作ろうと思ってな。お昼も近いし、みんな食べていくか?」
「いいわね。ふふふ、すき焼きみたいに、レシピちょうだいね」
「ハンバーグ……聞いたことないですね」
「にゃあ、ごはん」
「がるる、おにく?」
「きゅうー、おなかへった」
さーて、ハンバーグ……異世界食材で作ってやるぜ!!
◇◇◇◇◇◇
さて、二階のキッチンへ移動し、俺はエプロンを装備。
せっかくなので、みんなにも手伝ってもらう。
「わ、私……料理なんてほとんどしたことないわ」
「ボクも。ははは……こればかりは苦手で」
「そういや、お前ら二人って貴族だっけ」
「私は違うけどね。もう除名されちゃったし」
「ボクは名前だけ。今は冒険者活動がメインかな」
エプロンがないので、三角巾だけ頭に巻いてもらう。
ユキちゃんたちも手伝ってもらおう。
「さて、これからハンバーグを作ります」
「にゃ」「がうー」「きゅるる」
子供たちが挙手……なんか可愛いな。
まず、冷凍庫にある肉……でっけえ、肉塊じゃねぇか……を出す。
「バレン、ヴェルデ、こいつを細かく切ってくれ」
「細かく?」
「ああ。荒くてもいい。最後はこいつで細かくするからな!!」
と、出したのはミキサー……ではない。
昨日、ミキサーで挽肉を作るのは厳しいと考え、ウングたちが帰った後に作った『フードプロセッサー』だ。刃の数を増やし、縦長ではなくや横長にサイズを変えた。
スイッチを入れると、ちゃんと高速で回転する。
「ユキちゃん、リーサちゃん、クロハちゃんは、この食パンをちぎってくれるかな?」
「にゃあう、おまかせ」
「ちぎるぞー」
「きゅうう、あじみしていい?」
子供たちに食パンを千切ってもらう間、俺は異世界玉ねぎを刻む。
軽くフライパンで炒めたあとボウルに移し、まずは千切ったパンをフードプロセッサーへ入れる。
そして、蓋を押さえてスイッチオン。いい音がしてパンが粉々に砕け、パン粉が完成した。
「目分量でいいか……玉ねぎに加える。よし、次は肉だ」
「肉、刻んだわよ」
「こんな感じでいいですか?」
「ああ、いい感じ」
バレンたちが半冷凍の肉をフードプロセッサーに入れ、再びスイッチオン。
いい感じに細かくなり、それをタネに混ぜる。
そして、卵を割って投入し、塩、コショウを少々加え……混ぜる!!
「混ぜる、混ぜる、混ぜる!!」
素材をとにかく混ぜ、ハンバーグのタネが完成。
俺は子供たち、バレンとヴェルデに言う。
「さあ、ハンバーグを作るぞ。このタネを手に取って、こうやってぺったん、ぺったんと空気を抜いて……楕円形にして、真ん中をへこませる。これを作るぞ」
「にゃあ、やりたい」
「がるるる、つくる」
「きゅうー」
「ははは。じゃあ、みんなでやろうか」
俺は子供たちにタネを作らせる。
お団子みたいにしたり、ぺったんぺったんと叩いて空気を抜くときに落としそうになったり、子供たちは楽しくやっていた。
そして、意外にも。
「ど、どうかな……? ヴェルデ、こうだったかな?」
「そ、それでいいと思う。ぺったん、ぺったん……これ、何か意味あるの?」
料理初挑戦!! って手つきの二人。おっかなびっくりハンバーグのタネを触るのが新鮮だった。
そして、バラバラの大きさのタネが完成。
「さあ、焼くぞ」
俺はフライパンにハンバーグを入れ、表面が軽く焦げ付くまで焼き、水を入れて蓋をする。
蒸し焼きにし、竹ぐしを差して焼き加減をチェック……よし、いい感じ。
焼きたてのハンバーグを皿に乗せ、適当に茹でた野菜を付け合わせにし、異世界トマトと魚醤などを合わせた特製ソースをかけた。
みんなの作ったハンバーグ、ここに完成!!
「完成!! さあ、これがハンバーグだ!!」
◇◇◇◇◇◇
宿泊部屋に移動し、みんなで座る。
しまったな……パンとか買ってくればよかった。ハンバーグしかないぞ。
一応、スムージーも余った材料で作ったけど。
まあいいや。とりあえず、今日はハンバーグオンリーで。
「じゃあ、いただきます……ん、うまい!!」
ハンバーグ、異世界トマトと魚醤のソースがよく合う。
ソース……トマトケチャップなんてないし、潰したトマトと魚醬を少し合わせたソースだけど、まあまあ美味い。もっと美味いソース、研究しないとなあ。
でも、ハンバーグは美味い。濃厚な肉汁がジュワッと溢れ、食感も俺の知るハンバーグのままだ。
フードプロセッサー……これ、作って正解だった。ミキサーと似たようなモンかなあと思ったけど、ミキサーはミキサー、フードプロセッサーはフードプロセッサーと違いがある。
「おいしい……!! ただ肉を焼いただけじゃない味ね!!」
「確かに、濃厚な肉汁と、この食感……ソースもよく合う!!」
「にゃうう、おいしい!!」
「おかわりー!! がうう!!」
「きゅるる、おいしい」
みんなからも好評価だ。ちなみにおかわりもあるぞ!!
ヴェルデはスムージーを飲んで「おいしい!!」と言い、バレンは上品にナイフとフォークでハンバーグを食べる。
子供たち……あらあら、口の周りベタベタにして、仕方ないな。
「ゲントク、これのレシピちょうだい!!」
「いいけど、パン粉とか挽肉とか面倒くさいし、フードプロセッサー作ってやるよ。マイルズさんならうまく使うだろ」
「……ゲントクさん。ボクのところでも食べたいです。その魔道具、お願いしていいですか?」
「はっはっは。もちろん……ふむ、これサンドローネのところに持ち込めば、商品になるかもな」
と、言った時だった。
「また面白い魔道具、作ったのかしら?」
「……今日、定休日なんだが」
サンドローネが休憩室に入って来た……なんかこういうの久しぶりだな。
バレン、ヴェルデは気付いていたようだが、サンドローネの足音だったので特に言わなかったとか。
リヒターが「すみません」みたいな感じで苦笑している。
「それで、何を作ったの?」
「ハンバーグとスムージー」
「……それ、何?」
というわけで、ハンバーグとスムージーを実食するサンドローネ……スムージーに感動し、手軽に野菜や果物を美味しい飲み物として接種できると知るなり、物凄い剣幕で「そのミキサー、試作機渡しなさい!!」と言うので渡した……マジ怖い。
仕様書も渡したし、まあそのうち商品として発売されるだろうな。
みんなが帰り、俺は洗い物をしながら言う。
「よし、明日こそは大食い大会に行くぞ」
明日、大食い大会を見て、明後日から仕事を再開するか。
ハンバーグ、そしてスムージーは大成功。暇なときまたやるか。
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