そろそろ観光してえ!!
気合の入ったロッソたちは冒険者某ギルドへ。そこでエアリーズと合流し、キングロックタイタンについて聞いて、そのまま討伐に出るようだ。
そして俺は町を散策……ではなく!! 別荘に戻り、地下の魔道具開発部屋へ。
そこで、これから必要になるであろう魔道具を開発することにした。
「よし!! って……せっかくの温泉地なのに、マジで仕事漬けだな。相談だけと思ったけど、なんだかんだで俺のアイデア採用されそうだし……それに、俺のアイデア使うなら、どうしても必要な魔道具あるし、やるしかねぇ」
ため息……まあ、仕方ない。
それに、いつかやろうと思っていた魔導具でもあるし、実験的なモンだと思えばいいや。
さて、さっそくやるか。
「えーと、素材はそこそこあるな。サンドローネもいるし、試作はクオリティ低くてもいい。アレキサンドライト商会の魔道具開発部が高クオリティのモン作るだろうしな」
さて、俺が何を作るか……くくく、まだ内緒だぜ。
◇◇◇◇◇◇
数日後、ようやく納得のいく魔導具を作り、俺はコタツで一休みしていた。
『みー、みー』
「はあ……疲れた。お前は最高の癒しだな」
『……ごろろ』
まったりしていると、白玉が甘えてくるので撫でる。
大福は相変わらず眠そうにしているが、たまに喉を鳴らしたり、俺の前を横切ったりする。撫でまわすと嫌そうにするので、たまに頭を撫でるくらいにしていた。
白玉は、眼も開いて元気いっぱいだ。こいつも百年生きるのかな……だとしたら、いずれは大福みたいに、どっしり構えるボス猫みたいになるのだろうか。
白玉を撫でていると、ベルが鳴った。
俺は立ち上がり、入口へ。
「おーう。サンドローネ、リヒターに、エアリーズか」
「……これ、なに?」
サンドローネは、玄関にあるスイッチを指さす。
「インターホンだ。この家広いし、基本的に一人だから来客とかわかんねぇしな。スイッチを押すと魔力が導線を伝わって、居間や風呂場に繋がってるベルを『揺らす』んだ」
そう、魔石は『揺』と彫っている。魔力が伝わると揺れるだけだ。
それとベルを合わせ、さらにベルには『増幅』の魔石を組み込んであるので、音が増幅されてよく聞こえるのだ。
サンドローネは面白そうに言う。
「面白いわね。仕様書ある?」
「もちろん。とりあえず上がれよ」
三人を居間へ。
白玉がサンドローネの足元で甘えだし、サンドローネはニコニコしながら抱っこする。
「ふふ、かわいいわね」
「お前、猫好きなんだな」
「悪い? 可愛いじゃない」
三人は座り、俺はお茶を出す。
一息入れ、エアリーズは言った。
「ゲントク。キミのアイデアを採用することにした。王家も大層喜んでいたよ……スノウデーン王国の、新たな観光地となるだろうね」
「そりゃよかった。あ、魔獣は?」
「昨日、『
「まあ、ロッソたちなら問題ないな」
ちなみに、異世界あるあるな『俺が同行してチートで楽勝討伐!!』な展開はない。だって俺魔導具技師だし、戦いなんて無縁だしな!!
むしろ、俺の戦いはここからだ。
「さて、ゲントク。きみのアイデアを元に、我々で図面を起こしてみた。きみの意見を聞きたい」
エアリーズは、テーブルにバサッと図面を開く。
そこには、こう書かれていた。
「『スノウデーン・スーパー大銭湯』計画……いい名前じゃねぇか」
◇◇◇◇◇◇
俺はアイデアは、けっこうシンプルなものだった。
数日前、俺とエアリーズがした話はこんな感じ。
『あのさ、デカい温泉水脈見つかって、そこに町を作る……って計画なのか?』
『そうだが……』
『で、町に移住する人がいない。町として機能しない、ってことだよな』
『ああ』
『だったら、町じゃないくてもいいだろ?』
『……どういうことだ?』
『町じゃなくて、宿泊施設にするんだよ。レレドレの宿屋はどんなにデカくても二十室くらいで、最大でも百人くらいしか泊まれないだろ? それを超える、それこそ千人以上泊まれるデカい宿を作るんだよ』
『……や、宿?』
『ああ。温泉もめちゃくちゃデカくして、いろんな種類の温泉作って、メシ処も充実させて、宿泊だけじゃない休憩所も広くして』
『そ、そんな大施設を……?』
『ああ。その温泉水脈、エーデルシュタイン王国と、スノウデーン王国の中間地点なんだろ? だったら、その道もしっかり整備して、エーデルシュタイン王国から観光用の馬車とか出せばいい。エーデルシュタイン王国を出発して、温泉で一泊、スノウデーン王国で観光とか……そういう観光プランを作って売りに出せばいい。な、サンドローネ』
『……それ、いいわね。スノウデーン王国への観光馬車か……』
と、俺の提案したのは『観光用の大温泉施設』だ。
町や村を作るんじゃなく、一つのデカい施設を作る。
温泉を小分けにして、いくつもの宿泊地を作るのではなく、一つの施設で全ての温泉水脈を使い、大温泉を作る。
これが俺のアイデア。スーパー銭湯計画である。
◇◇◇◇◇◇
俺は図面を見てサンドローネに言う。
「温泉は少なくても、百人以上入れる大きさの大浴槽が一つ、薬草を入れた薬草湯、デカいサウナに水風呂、打たせ湯とかあればいいな。ああサンドローネ、以前言った床暖房、ここの温泉でやってみるのもいいかもしれん」
「そ、そんな大規模なの?」
「おう。でかけりゃデカいほどいい。話題になる……それと、泡風呂もだ」
「あわ、ぶろ?」
「おう。湯舟に気泡を発生させる魔道具を設置して、湯舟を泡立てるんだ。ボコボコして気持ちいいんだよ」
「……?」
サンドローネはピンと来ていない。
エアリーズも、リヒターも同じだった。
「まあ、魔道具は用意したから、そのうち実験するか」
「あるの?」
「ああ。試作で作った」
「……興味あるわね」
「埋め込み式だから、うちじゃできないぞ」
「……残念」
サンドローネは残念そうにそっぽ向く。
すると、リヒターが言う。
「ですがゲントクさん。その施設を作るのはいいんですが、従業員などは? それに、移住ではなくても、住むことに変わりないのでは?」
「確かにな。敷地内に従業員用の住まいとかも必要になる。スノウデーン王国、エーデルシュタイン王国で募集すれば集まるとは思う。衣食住が保証されて金も稼げる職場はそうないだろうしな。いるだろ? スノウデーン王国にも、仕事がなくて困ってる人とか」
「……まあ、確かに」
「サンドローネ。獣人たちは開拓手伝いをしてくれるのか?」
「ええ。アメジスト清掃に開拓の依頼を出したら、二百名の獣人を手配してくれることになったわ。皆、寒さに強い長毛種の獣人たちばかりね」
「に、二百? アメジスト清掃って、七十人くらいじゃなかったか?」
「……清掃がメインだけど、バリオンが業務を広げてね、農作業手伝い、大工仕事の手伝い、それに警備の仕事も増やしたら、獣人の商会たちがこぞって協力を申し出てね。今では二千人を超える獣人たちの大商会となっているわ」
「すげえな……いつの間に」
「バリオンの手腕よ。ああ、安心して。あなたのアドバイス通り、週一の休日、有給制度も取り入れているから。予想だけど……アメジスト清掃はアレキサンドライト商会と並ぶ規模になるまで、一年もかからないかも。獣人たちにとって、非情に魅力的な会社になりつつあるわ」
「今のバリオンなら、あくどいこともしないだろ」
「ええ。優秀な秘書を二名付けたから、ちゃんと休ませてるわ」
バリオン、すげえな……今度、酒にでも誘ってみるか。
エアリーズはウンウン頷く。
「ではゲントク。キミのアドバイス通り、『スノウデーン・スーパー銭湯』計画を始めることにする。王家からたんまりと予算をもらったから、期待以上のものができるだろう」
「ああ、と……泡風呂の仕様書と、これも持っていけ」
俺はテーブルに二つの仕様書を置く。
一つは泡風呂。もう一つは。
「……なにこれ? 『マッサージチェア』?」
「スーパー銭湯の必需品だ。試作機あるけど使ってみるか?」
「面白そうね、どこ?」
俺は三人を地下の魔道具開発室へ。
部屋には、ゆったりできるマッサージチェアが置いてある。
「……椅子?」
「座ってみろ」
俺はサンドローネを座らせ、椅子にくっついているリモコンを手に取る。
「じゃ、いくぞ」
「え、え、ちょ、何を」
「いいから、楽にしろって」
俺はスイッチを押す。
すると、椅子に内蔵された球体がゴロゴロ動き、サンドローネの背中を刺激する。
「あっあっ、あぁ……っ」
「「…………」」
「ほほう、背中を刺激する魔道具か」
俺、リヒターは無言、エアリーズは興味深そうに見た。
まあ見ちゃうよな。喘ぐサンドローネに、身体を動かすたびにプルンプルン揺れる巨乳。気持ちいいのか顔を赤らめ、どこか切なそうな顔とか……正直、エロい。
リヒターは退室。俺はエアリーズに言う。
「これを大量生産して、スーパー銭湯に設置するんだ。きっと気持ちいいぞ」
「ふむ、私も試したいな」
「サンドローネが終わったらな。おい、どうだ?」
「き、気持ち、いいっ……っぁぁ」
えっろ……なんだこいつ。
ちなみに、エロい目で見ていたことがバレて、俺はサンドローネに肘打ちを喰らうことになるのだった……とりあえず、俺の仕事はここまでかな。
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