地球はゆとりをやめたそうです
@doranekos
第1話
は? 嘘でしょ?
ゴミを出そうとゴミ捨て場に行った私が見たものはカラスを貪り食っているゴブリンだった。
黒い羽とおびただしく地面を濡らす赤い血はリアルで嘘っぽく感じるほどだ。
え? ドッキリ? 今どき?
令和に一般人巻き込むドッキリとか無いっしょ? コンプラ忘れたどこぞの局のやらかし?
ぐるぐると思考は回るが、余りな状況に固まってしまったのはチキンというかハムスター過ぎるが結果として私の命を救った。
「え? なにあの緑の?」
後からゴミ出しに来た女性の呟きにゴブリンが顔を上げ女性を見る。
血で塗れた口を大きくあけ「ギャギャ」と笑うかのように声をあげた。
女性と反対側に立つ私には気づいてない様子だ。人間よりも視野角が狭いのかもしれない。ふとそんなことまで考え、いや現実逃避してる場合じゃ、
逃げなきゃ、
あ、
女性が、
あ、あ、あ、
ガチャリ
震える手で玄関の扉を締める。
居間に入るとそこは日常だ。
夫と息子が朝食を食べつつ、行儀悪くもスマホをいじっていた。
じっと立つ私に異変を感じたのか夫が顔を上げ耳からイヤホンを抜く。
「どうしたんだ? えらく青い顔して」
「ほんとだ。貧血? 寝た方がよくない?」
夫と息子の心配そうな声に安堵と同時に恐怖と怒りが込み上げてくる。
夫の手からイヤホンを奪うと足で踏みつけた。
「おい! やめろ! 壊れたらどうする!」
「し しょ 食事 時 やめてって 言った 言ったよねえ!?」
「わかったわかった。悪かったって。だから踏むのはやめてくれ」
「母さん、いきなりキレて、え?泣いてんの?」
息子がしょっぱいもの食べた時のようにうえっとした顔をする。
昔は母さん大好きっ子だったのにと考え、また現実逃避しそうになるのを頭を振って落ち着かせる。
夫と息子の目にはさぞ奇異に映ったのだろう。
「母さん、まじでやばくない? 救急車呼んだ方が良いレベルなの?」
「いや駄目だろう。タクシーで行くレベルだな」
なんて失礼なんだろう!
だけど怒りが込み上げてくるのはありがたい。その分だけ恐怖がおさまるから。
「あんた達は! あの悲鳴がきこえないの!?」
「え」
そうゴブリンは一体では無く、外は瞬く間に阿鼻叫喚の世界になっていたのだった。
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