怖がりな魔王様は異世界に召喚されて溺愛されまくる~イケメンたちに囲まれて元の世界に帰れません~
のりのりの
序章 神様降臨!
ボクの魔王ちゃん
ワタシは魔王。
魔族たちの頂点にたち、『夜の世界』を統治する絶対者だ。
魔王はニンゲンにとっては恐怖の対象。
召喚された勇者によって倒される標的。
そして、時を経て復活する不滅の存在。
それは決して逃れることのできない宿命で、ワタシは今までに三十五回、延べ人数三十九人の勇者に倒され、三十六回の復活を果たしている。
いわゆる……泣く子も黙るベテラン魔王だ。
魔王は勇者に倒されるのがお仕事だが、お仕事はそれだけじゃない。
魔王は魔族の王様なので、平時はちゃんと王様のオシゴトを真面目にしている。
ま、ワタシは女性体なので、王様ではなく、女王様なのだけどね。
今は執務室で、地方からの報告書に目を通している真っ最中だ。
(う――ん。魔獣の被害報告が増えてきたかな……)
読み終わった書類の高さを目で確認しながら、ワタシはため息をつく。
(もう、そんな時期になったのね)
気のせいではなく、確実に被害届が増えてきた。
今はまだ件数が例年に比べて増えたな、という程度だけど、そのうち、被害の規模と内容も増していくだろう。
ワタシの管轄はまだそれほど問題視されていないけど、ニンゲンたちの国はかなり深刻な状況になっている、と斥候からの報告もある。
これは世界が滅ぶ予兆。
前回のときも、その前のときも、ずっと、ずっとこの繰り返し。
(ということは……そろそろかしら?)
ワタシは顎に手をやり考え込む。
眉間に皺が寄っているのが自分でもわかる。
「ヤッホ――。ボクの魔王ちゃん、元気してるかなぁ?」
突然、シャラシャラシャラリンとかいう、安っぽい効果音とともに、薄暗い部屋が眩い輝きに包まれる。
(でたな!)
ワタシの嫌な予感は的中した。
そいつはいつも、いつも、前触れもなく突然やってくる。
「ミスッターナか……」
「そうだよ――。大当たり! 聖なる善神ミスッターナ華麗に登場――っ!」
「……華麗になんだって? 人のお膝の上に登場して、この後どうするつもりなんだ?」
ワタシの膝上に、当然顔で座っている少年神を睨みつける。
神様だけあって、ニンゲンにはない美しさ……いや、可愛らしさがある。
「あれれ――? おかしいなぁ。降臨場所を間違っちゃったみたい」
向かい合わせの状態で座っている少年神は、にっこりと無邪気に微笑む。
神様が微笑むと「キラキラ――」っと、なにやらありがたい気配が魔王の執務室内に充満する。こんなのでも神様だからな。
魔王の部屋を神力で満たして、この神様はなにをやりたいのだ?
これで『聖なる善神』と名乗っているのだから、『善』とは一体なんなのか不安になる。
「魔王ちゃん、どうしたの? 浮かない顔をして?」
「変なモノが膝の上に載っているからな。気持ちも沈む」
「変なモノ? ひどいな――。ソレって神様に対する扱いじゃないよ。ボウトク! 神様も傷つくんだからね。もっと敬ってよっ」
と言いながら、ワタシに思いっきり抱きついてくる。
神様は遠慮という言葉を知らないみたいだ。
「おい、コラ、なにをしている! くっつくな!」
「いいじゃん。久しぶりだよ? 減るもんじゃないし、ケチケチしないの! こうして、ぎゅっとして、魔王ちゃん成分をガンガン補給しているところだから、邪魔しないでね。じゃないと、パワー不足でオウチに帰れないもん」
甘えた声でこの世界の神様――聖なる善神ミスッターナはワタシの胸に顔を埋める。
銀色の髪に金色の瞳は、光属性のためかキラキラしてちょっとばかり眩しい。
輝く銀色の髪は長くて、少し癖があるのか、ところどころでくるくると跳ね上がってカールしている。
美少女に見えるけど、小柄で無邪気な少年神だ。
神様だけあって、とても綺麗というか、可愛い顔をしている。
男の子なんだけど、どこからどう見ても美少女にしか見えない容貌と服装なので、ワタシもついついミスッターナの無礼を許してしまう。
「ったく……毎回、毎回、わざわざここに降臨しなくてもいいのに」
「え――。そんな悲しいこと言わないでよ。ボクと魔王ちゃんの仲なんだからさ。せっかく降臨できたんだから、もっと親睦を深めようよ。魔王ちゃんとイチャイチャしたい」
「……ミスッターナとの親睦は、もう十分すぎるくらいに深まっているから安心しろ」
「そうなの? そう思っていいの?」
「ワタシの膝の上に座って、胸にスリスリして生きていられるのだからな。それなりに深まっていないと殺してた」
「……魔王ちゃん怖い」
いや、ガチで怖がるな!
どっちかっていうと魔王のワタシにデレデレ甘えてくる神様の方が、怖いんだけど!
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