第27話 もう終わりだよ
おじさんが手を翳すと、二つの水晶が宙に浮き上がって、黄金に輝き始めた。場所と相手のせいで、何かを暗示させられてる気がする。もう色々と最低すぎるっ。
「エロ犬、あれ何!」
「あれは珍宝殿の制御装置パコ、名前はもちろん金玉パコね」
煩いと毒づきそうになったところで、天井からホースが何本も落下してきた。そしてそこから、何か透明色の液体が噴出していた。水じゃない、なんかネットリしてるし……。
「一応聞くけど、あれは?」
「我慢汁、正式名称はカウパー氏腺液パコね」
「は?」
「こころ達を見て、我慢できなくなったパコよ」
「は?」
「あれでみんなをネトネトにして、完全にチン堕ちさせる準備を整える手なんだパコ」
「は?」
「来るパコよ!」
エロ犬の声に反応したように、ホースたちはウネウネとキモい動きをしながら、こちらへと謎に透明な液体を垂れ流しつつ接近を始めた。エロ犬の言う通り、あの液体を掛けるために。
「ふっざけんなよ!!」
キレそうになりながら、その場を散会する。あんなキショいの掛けられたくないし、掛かった人は発情させられるとか、そんなカスみたいな効果を持ち合わせてそうだったから。
「どうすればいいのっ」
「あのホースは、珍宝殿に魔力を注ぐ魔法使いたちの集合無意識の具現なんだパコ。触手用途の癖に、射精機能が搭載されてないなんて、そんなんだから
エロ犬の言葉にビクビクって反応したホースたちは、何故か鈴や光くんを差し置いて、全てのホースがこっちへと殺到してきた。ちょっと待ってよ!!
「このホース、なんか怒ってない!?」
「バカなやつらパコ。偉大な魔法使いになるために童貞でいたなんて言いつつ、その実はかなり気にしているんだパコよ。だから、パコの正論にブチギレるんだパコ」
やっぱりこれ、お前のせいなんだ。この戦いが終わったら、キチンとエロ犬は殺さないと。
……でも、鈴や光くんに向かうよりは、ずっとマシか。
「つまりは、こころはあのホースから逃げ回ればいいんだパコよ。その隙に、光くんにホースを握らせて、男の子宣言をさせるパコ」
「光くんがTS魔法少女だっていうことを知らしめて、男の子で興奮するなって嗜めるんだねっ」
「そういうことパコ!」
「了解っ!」
何が了解なのか分からないまま、僕は反射的に逃げ回っていた。魔力による性的肉体強化により、今の身体は感度が十倍だけど性能も十倍になってるから。絶対に捕まらないし、捕まるわけにはいかないっ!
「ククッ、TS魔法少女よ、貴様がいつまで持つか見ものだな。
……ところで知っているか、貴様は。カウパー氏腺液は性交と授精をスムーズに助ける効果があるらしいぞ?」
「なんなのお前!?」
黒ずくめのおじさん、ベーションはカスみたいな蘊蓄を不適な笑みで垂れ流していた。なんでよりに寄って、そんな顔で楽しげに語ってるだよっ、バカなんじゃないの!!
「何、余興だよ。貴様がこの液体を浴びたら最後──そこのパコリイヌが発情する」
「何故!?」
心の底から、本当に意味がわからなさ過ぎて絶叫するように叫んだ。僕があのふざけた汁まみれになると、エロ犬が突如として発情する。その理不尽すぎるギミックが、まるで分からなかったから。
そんな僕に、出来の悪い学生を見るようにしながら、クソバカ黒ずくめおじさんは話し続けた。多分、必死に逃げてる僕の集中力を落とすために。
「ふっ、知れたこと。そんなもの──それがこいつの性癖だからに決まっておろうが」
「ふざけてるの!?」
カスみたいな事実で、僕を錯乱させようとしている。そう思って僕の肩に乗っているエロ犬に目をやると……どうしてだか、目が泳いで遠くを見ていた。
「クッ、なんて恐ろしい策略なんだパコっ。ベーション、いや、流石はマスターベーションパコね。……こころ、もしもの時は、先っぽだけは許して欲しいパコ」
「殺すよっ」
今すぐこいつを投げ出したかったけど、ホース型の触手から逃げ切るにはこいつのナビがいる。困ったことに、コイツがいないと僕はあの変な汁まみれになってしまうから。
「待つんだパコ、こころ! これは淫姦の計、パコとこころのチ◯ポのように熱い絆を断つ、ベーションの淫棒なんだパコ! 載せられちゃダメパコよ!!」
「バカがよぉ!」
どっちもどっち。天秤に掛けたら、両方共もげてしまいそうなくらいに最悪だった。両方敵でいてくれた方が、むしろ救われる気もする。あのおじさんも、エロ犬と同じレベルで最悪すぎた。何なら、捨てるに捨てられないエロ犬の方が悪質度では上かもしれない。
「クソっ、全部終わったらお前を殺すっ」
そう言い捨てて、必死に変な液体を掛けてくるホースから逃げ回るしかなかった。エロ犬を直ぐに殺せない環境を、心の底から怨みながら。
──そうして。
「今パコ!」
「そこの触手さん、聞いてください。僕とそこのエッチなお姉さんはTS魔法少女、つまりは男の子なんです!」
壁際に追い詰められたところで、一束になって我慢汁を僕を掛けようとしていたホース群に光くんが飛びついた。そしてそのまま、僕たちの真実を伝えて……。
「ククッ、流石と言ったところか」
「おじさん……」
ホースは力を失ったように、ズルズルと奥へと収納されていった。まるで、男はマジで無理なんですというように。
……た、助かったぁ。
「光くん、ありがとう!」
「おねーさんのお役に立てたのは嬉しいです。……でも、今度からは自分一人だけ、危ない目に合おうとしないでください」
「この子の言う通り、心配だった」
二人に注意されて、僕は曖昧に頷いた。きっと、二人の貞操を天秤に掛けられたら、また繰り返しちゃうんだって自覚があったから。
「二人とも、ごめん。全部エロ犬のせいだから、これが片付いたらみんなで処刑しよ?」
「しょうがない」
「はい、本当にお姉さんはしょうがないですね」
僕の言葉に、二人は笑顔で頷いてくれた。心強い、これで僕は全力であのクソ変態真っ黒おじさんと戦える。この戦いが終わったら、遂にエロ犬を処刑できるから!!
「パコ?」
エロ犬は、何だかつぶらな瞳をしていた。世界の何も分かっていない、そんな風を装っている家飼いの犬みたいな瞳を。後で存分に処すから、今から楽しみにしてて欲しい。明日に保健所送りだ。
何が”もしもの時は先っちょだけでも”なんだよ。
許すわけないだろっ、カス野郎!!
「クク、クククッ。既に勝った気でいるのか、貴様たちは」
そうして、エロ犬を処分する算段を立ててる最中に、割って入った声があった。あの我慢汁の蘊蓄を語った時みたいに、まだ不敵な顔を浮かべたままだった。
こいつもこいつでおかしい、光くんは謎に懐いているけど明らかに不審者で間違いなかった。防犯ブザーで撃退出来たらよかったのに、早く逮捕されろよ。
「あの無能触手以外に、何かあるっていうの?」
「その気の強いところも、実にパコリイヌ好みなことだろう。……パコリイヌの愛人でいることが、実に惜しい」
「なんでアイツにパコられていること前提なんだよ!? 僕はちゃんと、女の子が好きだよ!!」
「……何?」
おじさんは眼を丸くして、何か誤算があったみたいな顔をしていた。この世界に公害を発生させに来たことが既に過ちなんだから、潔く腹を切ればいいのに。
「貴様は……パコリイヌに凌辱され、身も心も奴の一物に屈服した上にダブルピースNTRビデオレターを幼馴染に送付したわけではないのか?」
「非人道的すぎるだろっ。そんなのする訳ないし、僕が好きなのは……その幼馴染の女の子だよ!!」
僕の言葉に、ダークネス変態おじさんは絶句して……。
「──こころは、私の恋人」
鈴が隣に来て、ギュッと僕の腕に抱きついてから、おじさんを睨みつけた。渡さないし、酷い事はさせないっていうみたいに。……なんか嬉しい、ありがとう鈴。
「…………なるほど、そういうことか」
そんな僕らに、おじさんは察したように溜息を吐いた。それから、エロ犬にゴミを見る様な目を向けて。
「当てつけとでもいうのか」
「何のことパコ?」
一方のエロ犬は、まるで見当もつかないと言わんばかりに、首を傾げていた。……多分、昔からこうして、ダークネスおじさんを煽り続けて闇堕ちさせてきたんだ。あっちのおじさんも早く死んでほしいけど、ちょっとだけ可哀そうだと感じてしまった。
「おじさんが、一体何に苦しんでいるのか……多分、僕はちょっとしか分かってあげられません」
暗黒に染まっているおじさんから、少しの哀愁を感じて。光くんは、そんなおじさんに悲しげな顔で話し掛けていた。あんなにクソな敵なのに、光くんはまだあのおじさんを見捨ててなかった。それはきっと、このおじさんが光くんと一緒で……。
「でも、おじさんは僕が一番苦しかった時に声を掛けてくれました! どんな理由があっても、僕はそれが嬉しくて、救われたって思ったんです!! だからっ」
光くんは、爛々と目を輝かせていた。心に宿っていた勇気が、光くんを後押ししてる。その輝きの正体は、誰かを思いやるって気持ち。僕に対しては間違えちゃっていたけど、今はそうじゃない。いつも胸に抱えていたそれを、いま光くんは正しい形で発露していた。
それを向けられたおじさんは──無表情を装っていた。
ピクって眉が動いてたから、何も思ってないわけじゃない。感情を剥き出しにしてたおじさんが、それを隠したってことは……。
「ベーション、正直になるパコ。身体は堕ちてなくても、心は堕ちてるパコよね? それなら、素直になって光くんのオマ◯コを舐めるべきパコよ!!」
「黙れゴミがっ!
八つ裂きにされたいかっ、下種!!」
「引っ込んでろカス犬! お前が出てくると、余計に意固地になるだろ!」
「パコリイヌ、おすわり」
「マスコットさん、邪魔しないでください!」
フルボッコだった。でも、それも残念ながら当然のこと。少し芽生えかけていた和解の空気感は、エロ犬の茶々のせいで見事に吹き飛んでいたから。あのおじさんも、学生時代にエロ犬と話をしすぎて、最早殺すという対象になってるんだと思う。そう考えると、少しだけ親近感も湧いてきそうだ。ホース型の触手といい、趣味はド底辺で最低だけど。
「ぱ、パコの思い遣りは、百合の間に挟まるチ◯ポ扱いパコか!?」
「うるさい」
「モゴモゴ」
いつもエロ犬に寛大だった鈴も、今だけは辛辣だった。エロ犬の口を塞ぎ、喋れなくする。股間よりも先に、エロ犬は舌の根から去勢しなきゃいけない生き物なのかもしれない。……もし舌を去勢したあとに、オチ◯チンが生えてきたらどうしよう。やっぱり、殺すのが正解なのかな?
「おじさん、話が逸れちゃってごめんなさい。でも、僕は──」
「もう、よい」
説得を続けたかった光くんを、おじさんは制した。もう、闘うのは辞めるってことではない。だって、まだおじさんは、あのふざけた金玉水晶を作動させたままだから。もう良いと言ったのは、これ以上話し合う気はないから。
──おじさんは、決着をつけようって思ってるんだ。
「な、なんでですか!?」
「詮無きことだが、その思い遣りを十年前に差し出されていれば……また、変わっていただろうよ」
それは……光くんみたいな優しい子が、このおじさんの周りには居なかったってことなんだろう。だから、こうして何かを拗らせちゃって、頭のおかしいことをしている。そう考えると、このおじさんも可哀想な人なのかもしれない。だからといって、世界にエロをばら撒くカスみたいな行為を許すわけにはいかないけど。
「光くん、戦おう」
「お姉さん、でも……」
「ん、分かってくれないなら、乱暴するしかない」
「鈴、言い方」
悩む光くんへの鈴からの言葉。確かにそうなるんだけど、光くんは凄くやりづらそうに感じてしまいそうな言葉で。嗜めそうになったところで、鈴は大丈夫だから、と目で訴えかけてきていた。いつもの通り無表情だけど、信じてって訴えてきている瞳。……今までも、鈴を信じて裏切られたことなんて一度もない。
「お願い」
だから、信じることにした。言い方が怪しくても、それでも光くんを納得させられる自信があるってことだと思ったから。僕の頼みに、鈴は確かに頷いて。
「乱暴、なんて……そんなの」
「でも、ただの乱暴じゃない」
「え?」
困惑する光くんに、鈴は無表情のまま、目だけがドヤりながら口を開いた。……本当に、無駄に器用になったね、鈴。
「何度でも相手の心をへし折って、分からせる」
「わからせる……」
「そう、ド級の乱暴──ド乱暴だよ」
「ど、ランボー……」
全然上手いこと言えてないっ。
ここにきて初めて、今日はダメな鈴かもしれなかった。
「あのね、光くん! 鈴が言いたかったのは──」
「分かりました!!」
「……んん?」
光くん、今の会話で一体何がわかったって言うの? 乱暴しても、得られるのは恨みだけなんだが?
「僕があなたにされたみたいに、勝てないって……心の底から敵わないって、分からせるってことですよね!」
「ん」
そっち? 乱暴じゃなくて、分からせが重要ってことなの?
「やってみます! ──おじさん、例え十年遅くても、手遅れじゃないってことを分かってもらいます!」
「クク、クククッ。よもや、小僧がその様な生イキなことを口にするとは」
……まぁいいや! なんか、良い感じになってるし! 理屈じゃなくて、フィーリングも大事な時とかあるし!! 付いてけない僕は、また狂ってないって証拠だし!!!
「──よい、相手をしてやろう」
おじさんが水晶に魔力を込める。すると、おじさんの背後から沢山の銃……ぽい形のオチ◯チンが現れた。
「何なの、それ!?」
「ゲートオブ、バビロン?」
「怒られるし、そんなわけないでしょ!!!」
鈴の口走った言葉を揉み消して、僕はおじさんを睨みつける。カスのパロディじゃないと言え、さもなくば殺すと意志を込めて。
「ほぅ、
「黙れ!!!」
ドヤ顔のおじさんを切り捨てて、僕は詠唱を始めた。哀れなおじさんだけど、根っこの部分はエロ犬と大差ないって分かっちゃったから。
「"ば、ババア何勝手に部屋に入ってきてんだよ!"」
あいつは明言していた、後ろに浮かんでいるのは女の子のアソコじゃなくて、オチ◯チンだって。だったら、この魔法がちゃんと効くはずだから!
「"思春期の息子が部屋を閉め切ってたら、シコってる最中なんだよそれは!! 見ろよっ、この無惨に萎えたチ◯コの姿をよぉ!"」
魔法が起動する、おじさん背後のオチ◯チン群へと魔力が走る。勝った、これであのふざけたたくさんのオチ◯チンは──。
「なんで!?」
「クク、クククッ」
僕の魔法は、ちゃんと発動した。だから、理屈の上でオチ◯チンは萎れて勃たなくなる筈なのに……何故か、まだ背後のオチ◯チン達は元気いっぱい。意味が分からなかった。
「浅はかなり、TS魔法少女! これらペニシリンダーもまた、我らが集合無意識である。その中には当然お母さん萌えの者も存在するのだ。我らを舐めるなよ、未開発人!」
「何だよそれ!!」
あまりに理不尽な無敵バリア、酷すぎる性癖にキレ散らかしそうだった。何だよ、お母さんにオナニー見られても大丈夫で、むしろ興奮するって。絶対に異常者だろ、ふざけるなよ!
「まずは貴様からだ、TS魔法少女! 貴様を挿入し、破瓜させ、メス堕ちさせた上で小僧に送りつけてやるわ!!」
「光くんに対して、微妙に忖度するなっ!!」
僕の叫びに対して、知らないと言わんばかりに後ろのオチ◯チン達が射出された。真っ直ぐに僕は向かって殺到してくるそれは、かなりの面制圧を誇る沢山のオチ◯チンで。逃げようにも、避ければ鈴や光くんに流れオチ◯チンが行ってしまう。
ど、どうすれば良いの、これ!?
「こころ、任せて」
「鈴!?」
そんな沢山のオチ◯チンの中で、颯爽と僕の前に立ってくれたのは鈴だった。打つ手がない僕の代わりに、盾になってくれるつもりなんだ!
でも、待って。そんなことしたら、鈴が沢山のオチ◯チンに殴打された挙句、もしかすると処女膜まで破けちゃうかもしれない。そんな、イヤだよっ!
「す、鈴!」
「私は大丈夫、パコリイヌが居るから」
「え?」
鈴の肩には、何故か勃起しているエロ犬が二本の足で立っていた。……人の彼女の上で、なんて物を晒してるんだっ。殺すっ!!
「パコだって、ベーションには敵わなくても、カチンコチンコ大学でオ◯ンポ生理学を学んだ魔法使いなんだパコ! それに、勃起感知魔法に使っていた魔力は、今この陰茎に充電されているんだパコ!!」
「貴様の穢らわしき一物などに、我らが宿願を砕けると思うてかっ!」
「穢らわしいのは、何も罪のないオチ◯チンランドの住人に、アナルセックス社会問題の責任を取らせようとしているお前たちなんだパコ!!」
「き、貴様がぁ、そのような戯言をっ!!!」
信じられないことに、エロ犬が正論を口走っている。正論を振りかざして、向かってくる銃型のオチ◯チンの方へと飛翔した。その姿は、まるで鈴を守ってあげるかのような、そんな勇敢ささえ感じて。
「鈴、援護するパコ!」
「"こころがずっと、心にいたの。こころがいないと、胸にポッカリ穴が空いたみたいになる。つまり、こころに心の処女膜を破られちゃったってこと。常に私は、こころに心へ挿入されてる。こころ専用の女の子だよっ"」
鈴の詠唱に伴って、オチ◯チンの群れは突如として爆発した。爆発したオチ◯チンから、辺りに白い液体がばら撒かれる。全てにおいて最悪で、醜悪すぎる絵面過ぎた。
けど、それでも、全てのオチ◯チンが爆散した訳ではない。一割くらいのオチ◯チンが、鮭が川を上るようにして向かってくる。それに、エロ犬は……。
「パコのイキ様、とくと見るが良いパコ! "パコのイき顔百選! アヘアヘ極意のアヘパコ!"」
「え、キモッ」
許されざる呪文を唱えたエロ犬は、何故かアヘリイヌと化してイキ顔を晒していた。……けど、キモい呪文だからこそ、効果は抜群だったみたい。ヘナヘナと、絶望したように残りのオチ◯チン群は萎びて、床へと還っていく。許されないけど、今だけは頼もしすぎる呪文だった。
そうして、おじさんの二の矢(どころか沢山の矢)は潰えた。エロ犬、格好つけてたけど、実際に大部分を掃討したのは鈴だった。……役に立たなかった訳じゃ、ないけど。
「ふぅ、嫁ならば喜びのあまり絶頂するパコが、その他のチ◯ポは絶望のあまりオチ◯コ骨折する。これこそ、本当に一人だけのための、愛液溢れる魔法なんだパコ!」
「そんな下種なもので、あやつが絶頂するわけがなかろうがっ!?」
「ちゃんとイけるように、二人で時と身体を重ねてきたパコ! あと、上の種はパコ、待ち合わせてなかったから下の種で孕ませたパコよ!」
「貴様ぁ!!!」
おじさんの怒りは止まるところを知らず、そのせいか地震まで起こり始めていた。エロ犬の下種さと無神経さは、天変地異すらも起こし得るのか。もしそうだと最悪すぎる、こいつこそがイける地象兵器だったのかもしれない。
「これはもしかして──射精しようとしてるパコか!?」
「おじさんが!?」
「珍宝殿がパコ!!」
は?
「クク、貴様らはよくやったが、よもやこれまでよ」
おじさんの言葉と共に、おじさんが操っていた水晶が二つとも今まで以上に輝き始めた。……まるで、何かを増産しているみたいに。
「ど、どういうことですか!」
光くんの問い掛けに、おじさんは竿役ばりの最悪笑顔を浮かべて。
「珍宝殿が宙へ向かって射精し、オゾン層を破瓜させ、オゾン層に取って代わろうとしているのだ」
「オゾン層を!?」
意味は全く分からない、分からないけど……。でも、このおじさんが、とんでもないことを言ったってのは理解できた。だって、オゾン層を破壊するって意味だけは、何とか汲み取れたから。
「何でそんなことを!?」
「オゾン層に変わって我らが魔力が地球を覆い、地球へと降り注ぐ紫外線を発情電波へと痴漢する。これこそが、我らが魔法の全容だ!」
さ、最悪すぎる。エロ電波抜きにしても、とんでもない環境破壊兵器だ。事態は、僕らが考えていたよりも、ずっとずっと最悪な方向に向かってたのかもしれない。
「許されるわけないだろ、そんなのっ! バカじゃないのか!!」
「馬鹿になるのは、貴様らのチ◯コとマ◯コよ。ククッ、せっかく紡いできた絆が、情が、純愛が散らされるとどうなるか──パコリイヌよ、特等席で観戦しているが良い」
全員、顔の色が無くなる。今まで頑張ってきたのに、間に合わなかった。その事実が、あまりにも残酷だったから。
「小僧も、よく説得などと無駄なことをして、時間を稼いでくれた。褒美に、そこなTS魔法少女とセッ◯スしないと出られない部屋に閉じ込めてやろう」
「そんな……おじさんっ!」
トドメと言わんばかりに、おじさんは最低なことを光くんに言って。涙が溢れた光くんから目を背けて、悪党らしく笑みを浮かべた。……わざとらしい、悪ぶってる笑みを。
「まっ──」
待って、その言葉が出る前に、全てが臨界点を迎えた。オゾン層を焼却する射精が遂に──。
遂に……?
「…………なに?」
──発射されず、唐突に塔全体にアラートが鳴り響いた。そうして、真っ赤になりながら、空中にディスプレイが映し出された。そこには……。
『な、なにしてるんすか先輩!?』
『お前のことが好きだったんだよ!』
『ンアーッ』
『いいよ、来いよ! 胸に掛けて胸に!』
『ファ!?』
あまりにもド汚い、ホモビデオの映像。二人の男性が性交している、真夏の夜の淫夢本編ビデオそのものだった。
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