第11話 淫紋
「こころの魔法は、かなり強力だったパコ。パコは身を持って実感したパコし、もしパコの金玉がたぬき並みのサイズじゃなかったのなら、精子の狭間を漂う事になったと思うパコ」
「つまり、こころには魔法の才能が、ある?」
「こころにはエッチの才能があるパコ」
あれからずっと、気の狂いそうな話が続いていた。耳を塞いで蹲り、聞こえないふりをしても気になって少し聞いてしまう。
馬鹿すぎる内容でも、僕のことを話されてると思うと、どうしても気になってしまったから。僕は多分、愚か者なんだ。
「エッチの才能って?」
「引くくらい性欲が強いってことパコ」
「引くくらい……」
そんなことない、ありもしない誹謗中傷だ。なのに、二人ともそれを前提に話をしてる。本当になんで?
「……具体的に」
鈴も鈴だ、何でこんな話に興味津々なんだっ。もう少し、恥ずかしがって! こころがセクハラされて可哀想だとか、そう思ってよ!!
「パコが受けた魔法の魔力を測定すれば、こころは一度の射精で5回分もの量を出すパコ。それを複数回行える、中田氏した女子は必ず孕ませるチン◯ンだパコ」
「妊娠確定……」
鈴は赤くなって、ちょっと恥ずかしがっていた。……恥ずかしがるとこ、違くない?
「そうパコ。女の子換算にすると、通常の5倍の潮吹きをしながら達するパコ」
「……クジラさん」
「絶頂クジラのこころちゃんパコね」
「観光資源になれちゃう」
「幼馴染を見せ物にしようとするなっ!」
耐えきれずに、声を上げてしまった。エロ犬は元よりおかしいけど、鈴までなんか変だったから。
何で僕がクジラになって、みんなの前で潮吹きをしなきゃいけないのか。あと、クジラの潮吹きは絶頂して潮を吹いてる訳じゃないっ!
「こころ、やっと喋ってくれた」
「喋らないと、クジラにされそうだったからだよ!」
「潮吹きこころ、可愛いと思う」
「クジラのこころ辺りで勘弁してもらえない?」
「絶頂してるこころが可愛いなんて、パコは一目で見抜きしていたパコ」
「ほらっ!」
エロ犬を指さして、どうにかしてと目で訴える。こいつがいると、話の内容が全部シモの方へと寄ってってしまう。
クジラを見ても、"ほら、見るパコ。哺乳類の貴重な絶頂シーンパコよ! AVでしか見たことなかったパコが、まさかアニマルビデオでも見れるだなんて……感動のあまり目から潮吹きが止まらないパコ!"とか言い出すに違いないんだ! ふざけやがって!!
「パコリイヌ、見抜きってなに?」
「見ながら抜くことパコ」
「……居合い?」
「見抜き流抜刀術、性豪チンゲン斎が始祖というチン◯ン流のチン剣術パコよ。パコも若い時に、19級を獲得したことがあるパコ」
「おぉー」
パコリイヌって剣豪だったんだ、そんな目をしている鈴は、完全に妄言に丸め込まれてしまってた。そもそも、19級とかものの役に立ちそうにない級位だし。
大体、チンゲンサイって野菜だよ。剃髪したらチン毛になるってこと? 馬鹿なの?
「……で、この茶番はいつまで続くの?」
頭がおかしくなりそうな会話を打ち切るべく、かなり冷たい声を意識して出した。ずっと僕がエッチだという話を聞き続けてると、本当に脳が汚染されてそうなっちゃいそうだったから。
「こころ、絶倫な代わりに早漏パコか?」
「部屋、戻っていい?」
「分かったパコ、分かったパコ! 愛撫をしないタイプの魔法少女パコね、こころは」
「部屋で寝てるね」
「待って、こころ。今から本題に入るから、急かさないでってパコリイヌは言ってる」
「何でわかるの、そんなこと」
「将来、翻訳として食べてく」
いっそ部屋に戻ろうとしたところで、鈴に手を掴まれて説得された。でも、そんな役職に着いちゃったら、将来的にお賃金出せないからオチン◯ンで我慢してもらうパコとか言われて、酷い目にあってしまうかもしれない。絶対にやめておいた方がいい職業だった。
「それで、要件ってなに?」
これ以上、実ないカスを聞かされ続けたら蹴ろうと思いつつ、リビングのソファに座る。多分、蹴ることになると思いながら。ただ、エロ犬は思っていたよりも真面目な顔で。
「単刀直入に言うパコ──この世界を守るためにオナニーをして欲しいんだパコ!」
こいつの口から紡がれたのは、実のあるカスだった。理屈が分かっているため、蹴るに蹴れない。誠に遺憾でしかない。
「……オナニーをして、女の子の身体に慣れて自由自在に絶頂できる様にって?」
「オナニーをして、性的に様々な経験を積んで、エロ妄想を得意になるためだパコ」
本当におかしな話をされてるのに、ちゃんと魔法を発動するための理屈が通ってる。僕の憧れていた、ファンタジー系統の魔法を返して……。
「……でも、ムラムラしてる方が強いんじゃなかったっけ?」
「それは普通のチ◯コとマ◯コだけパコ。こころの性欲は、並みの変態を凌駕するパコからね」
「絶対にそんなことはないから、オナニーしたくないんだけど」
「こころ……自分の才能を信じるパコ」
「無いよ、そんなの」
まるで冤罪を掛けられた気分。エヴァに乗せられたシンジくんは、こんな気持ちだったのかな……。
「待って、パコリイヌ」
絶望しながら、どうしてもしなきゃダメなのかなって悩み始めようとした、その時。鈴が僕とパコリイヌの会話に、割って入ってきた。
「鈴、どうしたパコか?」
「私が妄想するから、こころはムラムラしたままでも大丈夫」
「ムラムラはしてないよ!」
一部誤解しつつも、鈴は僕の味方として介入したんだ。頼もしくて、ありがとうと視線を送るとダブルピースを返された。なんかノリノリだ!
「パコも、最初はそれでいいと思っていたパコ」
「……この前、私がいなかったから、こころ一人でどうにかできる様にってこと?」
「悪いけど、そういうことパコね」
けど、直ぐに口籠らされていた。この前、鈴がいなかったのは間違いない事実だったから。
「……でも、今度は絶対に一緒にいる」
「その気持ちは汲むパコが、もしもがあるかもしれないパコから、保険はあった方がいいパコ」
エロ犬のくせに、妙に理屈が通っていることを言ってる。いつもの通りに、ふざけ倒してくれればいいのに。妙に理屈立ってて、論破しにくい。
「でも、こころ、メス堕ちしたら戻れない」
「女の子の快楽に耐え切れずに、堕ちる心配をしてるパコね」
「うん」
「……女の子のこころじゃダメパコか? 鈴が両刀使いになれば済む話パコ」
「できれば、男の子の方が」
「パココォ」
そういえば、そんなふざけた問題もあった。快楽落ちなんて絶対にしないけど、何かの手違いがあるのも怖い。それに、幾ら自分の身体だっていっても、女の子の身体だから……。
「こころ、これから女の子として暮らし、イきてイク決意とかできないパコか?」
「お前を吊るして、去勢する決意ならできそう」
「こころ、極度のサドアピールはマゾを隠蔽するためだとドスケベ学会で結論がでてるパコよ」
「サドでもマゾでもないし、おかしな論拠で適当なこと言うな!」
「犯しな論拠の何が悪いのか、まるで分からないパコ」
「早く死んで?」
とにかく、こいつも僕がオナニーすることに、相応にリスクがあるって認識している。それを踏まえると、やっぱり男に戻れなくなる可能性があるから出来るわけがなかった。
「ダメパコか?」
「良いわけがないよ」
「潮吹きし放題の、ガバガバキャンペーン推進中パコでも?」
「自分がすれば?」
「愛する妻が、パコの中で一番愛しているのはパコの肉棒パコから、失うわけにはいかないんだパコ」
「そうだね、それで奥さんをメス堕ちさせたもんね」
「幸せな家庭を、間男みたいに壊そうとしないで欲しいパコ」
間男みたいに、僕の日常を破壊してきた奴のセリフとは思えない言葉を吐いて、エロ犬はため息を吐いた。多分、諦めたんだと思う。二度と思いつかないでほしい。
「わかったパコ、そこまで嫌がられたら性癖の自由の侵害パコから、諦めるパコよ」
「そうして」
「ただ、それだと心許ないパコから、こころと鈴を結びつける魔法を使いたいパコ」
「結びつける魔法?」
エロ犬のカスみたいな企みを頓挫させると、代わりを求めてまたなんか言い出していた。こいつのことだから、繋がりとか言ってエッチなことを言い出すに違いない。問題は、何を言い出すかってことだけど。
「お互いの間に印を付けて、離れると反応する様にするパコ。通称、赤い糸、恋人に大人気の魔法パコよ?」
「反応って?」
「光るパコ」
さっきまで真面目にふざけ倒してることを口にしてたけど、その反動が少しマシな魔法の提案。多分、離れる度にペカーって光るとかそんな魔法っぽい。それで、離れすぎてるって気がつける様になってるみたい。見た目が最悪だし嫌だけど、まだマシな魔法だ。
「赤い、糸」
鈴が転がす様に、エロ犬が伝えた魔法の通称を口にする。そんなにいいモノでもない気はするけど、アニメ好きな鈴からするとくすぐられるものがあるんだと思う。
「どうパコ?」
「うん、良いと思う」
鈴はコクコクと何度も頷いてる。この魔法なら、そんなに危険じゃないのは確かだし、安心できるっていうのはわかる。
「こころも、これでいいパコ?」
「……まぁ、さっきのよりかは」
「同意を得たパコから、性交渉は性交パコね!」
相変わらず最悪な言い方だったけど、僕と鈴はとりあえず頷きあった。今度は、二人で戦いに向かうために。……情けない話だけど、鈴が隣にいてくれるって考えると、やっぱり心強く感じられた。
「そういう訳で、二人とも小指をまぐわせて欲しいパコ」
「絡ませてでいいじゃん」
「こころはナンセンスパコ」
「お前に言われたら、もうおしまいだよ」
バカな会話をしながら、僕と鈴は小指を伸ばしあった。ゆっくりと小指同士が触れると、ちょっとこそばゆく感じる。鈴は今も無表情だけど、目はちゃんと物語ってくれている。
──ちょっと照れるねって。
正直、可愛いって思ってしまった。泊めてもらってる立場で下心なんて抱いちゃダメだし、要反省しなくちゃだけど。
「じゃあ、離しちゃダメパコよ。まぐわせてる小指を離したら、その二人はEDになるパコから」
「何でそんな制約、この魔法についてるんだよ……」
「一種の契約魔法パコからね」
何か間違ってるけど、つべこべ言っても始まらない。鈴に目配せすると、さっきよりも強く指を絡め合わせてきた。絶対に離さないから、安心してって風に。
「それでは、始めるパコ。目を瞑って、お互いを感じ合うパコよ」
エロ犬の指示に従って、目を瞑って鈴のことを考える。
指先に感じる鈴の暖かさ。目を瞑ったら感じてしまう自分の鼓動。鼓動の中で、鈴の胸の音を聞いた気がした。ちょっと早めな、慌ててる心音。もしかすると気のせいかもしれないけど、自分だけじゃないって感じられて嬉しい。鈴、僕で照れてくれてるんだったら……ありがと。
「今パコね、"いまどき正の字なんて古いっ、時代はやっぱり淫らな印なんだよ、きょうび! 淫紋!!"」
エロ犬の言葉と共に、僕たちはぺかーっと毎度の如く光って。そうして……。
「性交したパコ。こころと鈴に、無事に淫紋を刻むことができたパコよ!」
は?
「これで、二人が離れ離れになりそうになったら、淫紋が光だして二人とも発情するパコ!」
……は?
「半径1kmも離れたら、何回イッてもムラムラが収まらなくなるパコから、エッチなプレイの時以外は離れるのはお勧めしないパコね」
…………は?
地方都市の地下深くにある建物、珍宝殿。NTR推進委員会の本拠地であるそこの監視室で、今日もモニター越しに野太い声が響いていた。
『だ、ダメだ! 女学生がのびのび潮吹きする所でチ◯コが弛緩して、こいつもお漏らししようとしてるっ!! くそッ、射精るぞ!? うおぉぉーーーーーーーっ!!!』
モニター越しに、一人の中年が一物を暴発させる。その様子に、モニター越しに見ていた男は舌打ちをした。愚かな、と呟きながら。
「己の射精もコントロールできぬ、愚物な一物め。バベルの党公認サポーターであるNTR推進委員会の名が穢れるわっ」
これで延べ人数で、85回目の射精。大の大人の殆どが、射精管理に失敗している。まるで男に顔射をされた時の様に、リーダーである彼はオチ◯チンが感じる様な苛立ちを隠せずにいた。
「やはり、射精管理するメスガキが、我々には必要なのだろうか……」
ただ、情けないことだが、事実として射精を繰り返して管理に失敗している。もしかすると、このままでは何もしないままに年老いてしまうかもしれない。
そうなれば、ここで行く度も繰り返された射精などは意味を成さず、EDの如く何も残せない。それだけは、彼としては避けなければいけなかった。
「パコリイヌめ」
苛立ち混じりに、怨敵の名を呼び捨てる。特に射精管理の失敗に彼は関係ないが、とりあえず罵倒することで精神を落ち着ける働きがパコリイヌの名前にはあった。
「しかしポルノめ、むざむざ不能になって帰ってきおるとはな……」
パコリイヌ関連で、彼が派遣した魔法使い(42)のことも、彼は思い出した。新米のTS魔法少女に遅れをとって、チン◯ンが勃たなくなった彼のことを。既に異世界に帰還し、泌尿器科を受診している。
「パコリイヌめ、意趣返しのつもりかっ」
ポルノが盗撮してきたこころの写真を睨み付けつつ、それを引き出しの膣内に乱暴に仕舞い込んだ。いずれ、倒さなくてはならない敵として、記憶しながら。
「やはり捨ておけぬ、奴らの邪魔をしなければ」
苛立ちが収まらないまま、彼は思考を巡らせ続けた。パコリイヌのこと、皆が早漏なこと、TS魔法少女のこと。その一つ一つに、対処法を考える。
彼は方法を探すべく、Yahoo知恵袋と掲示板にアクセスする。
全ては彼ら、NTR推進委員会の悲願成就のために。
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