前世の底からこんにちは ~もしかして転生失敗してね?~

天窓際

プロローグ~回想


「痛ったあ。マジこんな痛いなんて聞いてないし便秘の100倍は辛かったんだけど

マジマジ勘弁」

人をクソになぞらえるな。あとマジがマジ多い。


・・・


いつかの冬。

辞表を投げる様に出した。いや実際に紙ヒコーキ型に折って投げたっけ。

呆気に取られた奴らの顔がとっても面白かったな。

もうどうでも良くなったのだ。


数字に表れる成果だけを重視して今日まで生きてきたが、意味を成さなかった。

難関と言われる高校、大学と進み...世界的な大企業に就職出来た訳だが

そこは理想なんて程遠く、そもそもそんなものなかった。


取引先には尻を叩かれ、上司からは頭を叩かれる毎日。俺どこで間違えたんだっけ。




あっはは無職バンザイ。我がワンルームは警備員完備だぜ。

さて無職一か月記念に出掛けてみる。夜も明けるし。


幼少期にあれだけおちょっくって笑ってた公園に居るカップ酒片手のホームレスと今、何ら変わりない。

謝れば今からでも仲間に入れてくれるのかな。


どんな裕福な家庭で生まれ育っても、その先で失敗したら同じだ。

親ガチャは成功でも、人生ガチャは失敗だ。




街を歩こう。死んだ顔の社会人達が歩いて行く方角の反対側へ。


君達はこれから出勤か、俺はこの後帰って寝るだけだぜ。羨ましいだろうよ。

一人で悦に浸ってみる。部屋のガスが止まってお湯に浸かれない以上、

これぐらいしか浸かれるものも無いのだ。


必要以上に痛い、集めてしまっている気がする視線。そんな睨むな。

このカップ酒が目に入らぬか。


遠くに行く体力も無いし飽きたので帰る。ガスや電気が止まっていようが家は家だ。

いっそ土に帰ってみたいが、不思議なもんで勇気が無い。出ない。




「酒が無えわ。」

思い出した。さっきお弁当代わりに持ってきたアレが最後だっけ。

買って帰るか金ねえけど。


コンビニは逆方向だったっけ。

振り返れば朝焼け。なんだか朝日がいつもより眩しい。昔の俺ぐらいには眩しいぞ。

いっそ太陽に向かって走ってみますか酒も買うんだし。うおおーー。




気持ちいいな、俺ってまだ生きてる。生を実感したよ。

広い道路の真ん中、忙しなくぶっ飛ばして行く車達、いやあ現代に生きてるわ。

酒と一緒に求人誌も買って帰ろうかな。


・・・遠くから車のエンジンの唸りが聞こえる。

急いでるのかな、飛ばすのは勝手だけど街汚すなよ。

どんどん近付いて来る。随分荒い運転だな。



そんでああ俺が見えてないのね。直前で気付くだろうけど急ハンドルは危ないよー。

きっとあの車のドライバーも疲れてるんだろうな、俺みたいに走って生を実感したら気分も晴れるぞ。



あれもう目の前なのに気付かないのね、減速もしないのか。ああ俺って不憫な―――


ゴッ。





痛えなあ。痛かったっけ。ところで真っ暗だし音も無い。 これがあの世って奴?

せっかくちょっと前向きになれてたってのに。俺の人生らしい終わり方だわマジで。


もう一回やり直したい・・・いやいや。

正直、リスタートした所で人生の悪い分岐点は分かっていても、正解が分からない以上どうせ同じ轍を踏むよ。

もういいよ、次は貝にでも転生させてくれ。 目立たないシジミで頼むよ。

さて反省したしそろそろお迎えの時間だろう、はよ。



ところでいや待てなんか狭くないか。暗闇の空間というか、まるで地中に居る感覚。

てか動けない。手足の感覚はあるのに。俺轢かれたんじゃなかったっけ?くそうあのミニバンめ。


なんて事を考えてたら揺れる。空間っつーか世界が揺れてる。

おおヤバイヤバイ、何か流されてるぞ。人間ベルトコンベアってやつか。

ついでに光も感じる気がする、成果の現れないつまらねえ世界にいざさよならだぜ、あばよ両親、何とかクソ商事め――



いや眩し。光度調整も出来ないとは怠惰なやつらめ。あの世ってそんなもん?

何も見えない、そもそも目が開かない。このボケg

「・・・無事生まれました、~グラムの元気な...」


なんか聞こえる。それドラマのアレじゃない。

なに、あの世入りも出生って形から入るやつなのか。

にしては妙に人間味があるというか、つーか人間そのまんまの様な。

リアリティに富んだ演出なn

『うわほんとに生まれた!人間じゃん!わたしの子ってやつ!!?そうだよね!』


どうやらおれ人間らしい。また人間だったわ。

罰ゲーム、もとい人生二週目スタート。

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