エッセイ カラスの出勤

阿賀沢 周子

第1話

 早朝目が覚めた日は、本を読むかオンラインの新聞を読む。

 この日の目覚めは4時30分。まず初めに、少しでも明かりを取り込もうとカーテンを開けた。窓から、夜明け前の雲が、ほのかに赤く染まっているのが見える。

 カラスが2羽鳴きながら東の方へ飛んでいく。また数羽が同じ方向へ翔ける。こんなに早くから活動しているのかとしばし目で追う。


 数日後の暑い夜、カーテンを開け放しで寝た。明け方、薄明りに目覚める。今日も暑いのかと窓を見上げる。 雲は少なく空は明るい。カラスが何羽も続いて東へ飛んでいく。ペアだったり、数羽の集まりだったり。目にしてすぐ数え始めた。雲の茜色が濃くなる。  

 数えられたのは82羽。20分ばかりの間に同じ方角へ向かっていたが、急に姿が途絶えた。

 アイホンで時間を確認すると、日の出の数分前だ。

 ついでにカラスの生態を検索する。野鳥の研究団体は、ねぐらから餌場まで毎日往復するのだと述べていた。夜明けと日暮れ、10㎞も移動することがあるという。


 そのころの新聞の地元版に、住宅街の公園でカラスが7羽死んでいるのが見つかったとの記事が載った。

 鳥インフルエンザを疑ったが簡易検査では陰性で、死因は食中毒菌ではないかとあった。

 猛暑が影響しているのだと思ったが、後日同じ公園で、延べ25羽が死んだと報道された。原因は有機リン系農薬成分の摂取だった。


 今朝も、カラスは風にあおられ、鳴き交しながら餌場へ出勤している。受難が続かないことを願いながら見送る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エッセイ カラスの出勤 阿賀沢 周子 @asoh

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ