第二十二幕:赤備えの閃光と裏切りの罠

檀石槐こと武田信玄は、鮮卑軍を指揮し、戦国時代の戦術をこの戦場で再現していた。彼が用いたのは、かつて恐れられた「赤備え」だ。赤い鎧兜で統一された精鋭騎馬兵部隊が、敵軍に圧倒的な威圧感を与え、戦場を支配し始めていた。


「赤備えを今一度、この地で見せる時が来た…」信玄は低く呟き、騎馬兵たちを前に進ませた。


だが、ただの突撃ではない。信玄は片翼包囲という戦術を計画していた。側面から別動隊を送り込み、敵の背後を叩くこの戦術は、かつて川中島や三増峠で成功を収めたものだ。漢軍の指揮官である劉虞と公孫瓚が互いに牽制し合い、まとまりを欠いている今こそ、信玄はその戦術を完璧に機能させようとしていた。


「赤備え、側面を回り、片翼包囲で敵を崩せ!」信玄の命を受け、赤備えの騎馬兵たちは戦場の側面へと移動を開始した。


その頃、信玄の側近である賢生が、新たな策を信玄に提案した。


「檀石槐様、南匈奴の援軍を寝返らせ、漢軍を内側から崩壊させましょう。表向き彼らは漢の援軍として動いていますが、我々と密かに同盟しています。『南匈奴謀反』の流言を流せば、それが合図となり、彼らは漢軍内で暴れ始めます。それと同時に我々が外側から攻撃を仕掛ければ、漢軍は大混乱に陥るでしょう。」


信玄は賢生の策に満足げに頷いた。


「良い策だ。漢軍は既に疑心暗鬼だ。その上に、この動揺を加えれば、完全に瓦解するだろう。」


信玄は南匈奴の密偵を通じて、漢軍に「南匈奴が謀反を起こす」という流言を流させた。すると、この流言は瞬く間に漢軍内部に広まり、戦場は混乱に包まれた。


「南匈奴が寝返るだと!?裏切るつもりか!」公孫瓚は激高し、部下たちに怒鳴り散らした。


「我々に援軍を送りながら、謀反を企むとは…」劉虞も顔を青ざめ、完全に動揺していた。


その時だった。南匈奴の部隊が謀反の合図を受け取り、本当に漢軍内部で暴れ出した。内部で突如暴れ出す南匈奴の兵士たちにより、漢軍は崩壊寸前に陥った。


その瞬間、信玄が送り込んだ赤備えの別動隊が、片翼包囲の要として漢軍の側面から猛然と攻撃を開始した。


「今だ!突撃せよ!」信玄の号令が響き渡る。


赤備えの精鋭騎馬兵たちは、漢軍内部の混乱を利用し、圧倒的な力で次々と敵を倒していった。騎馬兵の馬蹄が大地を震わせる中、南匈奴の謀反とさらに啄木鳥の先方による背後からの鮮卑の猛攻が同時に襲いかかり、漢軍は全く抵抗できず、崩壊し始めた。


劉虞と公孫瓚の軍は、互いを信用できない状況に加え、内部で裏切りが発生し、もはや統制を取ることができなくなった。彼らの部隊は次々に瓦解していき、戦場は鮮卑軍の圧倒的優位に傾いていた。


その時、劉備三兄弟が戦場を冷静に見渡していた。劉備は状況の厳しさを察し、仲間に向かって叫んだ。


「もう保たない!ここから退くんだ!」


関羽は剣を鞘に収め、冷静に頷いた。「正義の戦いはまだ終わっていない。だが、今は無駄に命を投げる時ではない。」


張飛は豪快に笑いながら槍を掲げ、「兄貴に従うぜ!ここで死ぬわけにはいかねぇ!」と叫んだ。


三兄弟は劉備の指示に従い、素早く戦場を離脱し次なる機会を伺うために撤退した。


信玄は彼らの退却を見届けながら冷静に戦況を眺めていた。彼は劉備たちの存在を潜在的な脅威として認識しつつも、今はその追撃に時間を割くことなく、戦場全体の勝利を優先した。


「風林火山の旗の下、我々の勝利は既に決定的だ。この地を制し、新たな時代を切り開く。」信玄は静かに呟き、戦場に風林火山の旗が高々と掲げられた。


赤備えの閃光が戦場を支配し、鮮卑軍は圧倒的な勝利を収めた。漢軍は、南匈奴の裏切りと鮮卑軍の巧妙な戦術によって完全に崩壊し、戦場は夕陽に染まりながらも静まり返っていた。


こうして、檀石槐の勢力はさらなる広がりを見せ、中原への進出は目前に迫っていた。信玄の戦術と計略が見事に機能し、彼の支配下にある鮮卑軍は圧倒的な力を誇示していた。しかし、その先に待つ新たな脅威、そして劉備三兄弟との再戦の予感が、彼の心の中に静かに渦巻いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る